スペインで電気・ガスの契約を開始する方法

スペインで電気とガスの開通手続きをするためには電力会社・都市ガス会社と契約を結び、その供給を開始させなければなりません。ではその為に必要なことは何があるでしょうか。ここでは手続きの一連の流れをご紹介いたします。
スペインではEndesaという元国営電力会が発電、配電、小売のすべての電力に関する事業を担ってきましたが、2003年に電力小売自由化が開始され今では様々な電力会社との契約が可能です。(発電、配電事業ではEndesaは依然として元国営の立場を生かし、スペイン内での地位を築いています。)
電気とガスの申し込みはいつ必要?
新しい家に引っ越ししてきた際にまず考えなければならないこととは、電気、水道、ガス(プロパン、ブタン、都市ガス等)、そしてインターネットの接続といった基本的な生活インフラの手続きと言えます。そのうち、電気とガスについては、以下のような手順で申し込みが可能です。
新居でまだインフラ供給がなされていない場合
新たな家が建築される際には法律により電気設備の設置が建築業者に義務付けられています。つまり、新居には電気設備は整っていることになります。一方、電気の供給に関して、各自申し込みが必要と言うことです。したがってCUPS(Código Universal del Punto de Suministro:各住居当てに割り当てられる電気供給のユニバーサルコード)の割り当てと電気事業者への申請が必要となってきます。
自己保有の建築住居自分自身で新居の建築を行ったり、建築請負業者が当初の計画に含めなかったといったことにより電気設備を設けていない住居については、その設置をし、供給事業者はCUPSの割り当てを工事完了時に行います。この時に初めて供給の申請が可能となります。
ガスの場合、スペインでは普及率の高いエネルギーであるものの、その設置は義務付けられてはいません。とはいえ、ガス供給事業者の事業網はますます広がってきており、都市ガスはより身近なものとなっております。そして、大きな居住域を抱える街のほとんどが、すでに初めからガスの設置を済ませ、単にガス事業者との契約を行えばよいという状態になっております。
一方、購入や賃貸の開始をし始めたばかりの新居でガス設備がない場合には認可されている業者に申請をするか、もしくはその地域の供給事業者に直接話をしなければなりません。都市ガスの設置の際にはとても高額な投資になるため最大限に節約できるよう様々な合見積を取ることを推奨しています。
電気もしくは都市ガスが以前には供給されていたが、今は止められている住居の場合
今まで電気もしくは都市ガスが供給されていたにも関わらず、その契約が満了となり止まっている状態の住居もなかにはあります。この場合、新たな居住者もしくは不動産事業者は電気とガスの供給の契約をし直す必要があります。
支払う料金と提出書類は一部異なりますが、手続きの手順は新居の場合と同様です。
料金の未払いが理由で供給が止められている場合
料金が未払いという理由により、電気やガスの供給が止められてしまっているという場合もあるでしょう。料金の滞納があった場合、電力会社・ガス会社によって供給が止められてしまいます。
この場合には今まで見てきたケースに比べ少し複雑な状況であると言えます。未払いの状況が契約名義人によるものか、もしくは元の賃貸先の大家によるものかで大きく変わってきます。契約名義人による場合には心配する必要はありませんが、元の賃貸先の大家による場合には特別な書類の提出が求められます。
まず、その大家に関連する負債の類は存在しないことを保証し、次に配給元の事業者への連絡をしなければなりません。その事業者は電気とガスの供給を可能にするために一連の裁判を開きます。
そこから、その家の購入を保証する書類や賃貸契約書を示し、新たな住人や不動産事業者の立場として、今までの大家と関係ないことを示します。すべてを証明した時にこの裁判は完了となり電気とガスの供給を受けることができます。
電気供給がすでに行われている家と契約をする場合
スペインでゼロから家を建てたりすることはまれだと思われるので、このケースが恐らく一番可能性が高いと思います。すでに電気および都市ガスの供給すでにある家に引っ越す場合には、名義変更の連絡を電力会社・都市ガス会社に対して行います。この連絡だけで供給が開始されます。
電気とガスの契約にあたり必要なことはなにか
電気とガスの契約を自分の住居で行う際にしなければならない最初の手順としては、まずは使用用途を把握することです。しかしながら、契約時の価格や契約プラン内容といった他の点にも注意を払わなければなりません。以下は申し込みをする前に考慮しておくべき点となります。
- 使用する電化製品をもとに最大どれだけの電力(kW)が必要になるか理解しておく
- 引くことになるガスの開通料金、料金体系を知っておく
- 各事業者から出される料金を比較サイトを用いて比較しておく
どの程度の電力が必要であるか
"どれだけの容量が必要になるかによって、電気料金は異なります。必要な電気の容量を「同時」にどれだけの電化製品を使うかを考えて計算しておきましょう。"
スペインで電気料金プランを決める際の基準となるのはkW(消費電力容量)であり(日本ではA:アンペアもしくはkVA:キロボルトアンペアが使われます。)、一つの住居内で様々な電化製品を同時に使用できる総量(容量)を契約時に決めることとなります。電気やガスの固定料金が変わってくるので、その計算をあらかじめしておくのは非常に重要です。
もし初めて住居での電気供給の届け出を行う際にはどの程度の電力が必要となるのかを知るのはなかなか難しいでしょう。こうした場合には電気料金比較サイトを使うことを推奨します。もしくは、電力会社のサービスの一つに、自分にとって必要な電力容量を教えてくれるサービスもありますが、有料である場合も多く、その費用を考慮しなければなりません。
Selectraスペイン語ページ(https://comparador.selectra.es/comparacion-electricidad)では、まず「¿Conoce su consumo?」でNOを選択し、「¿Cuál es la superficie de su vivienda?(住居タイプ)」と「Número de personas en la vivienda(居住人数)」に質問に答えれば、必要な電力容量を示します。
スペインの都市ガス料金のしくみ
ガスの契約を行う際には、その種類により料金は変わってくるため、必ずその料金体系を知っておく必要があります。そしてこれはガスの使用用途ともかかわってきます。次の表では料金体系と使用用途の関係を示しています。
料金体系 | 消費量 | 用途 | 消費種類 |
---|---|---|---|
3.1 | 5.000 kWh以下/年 | 調理、給湯 | 家庭用消費 |
3.2 | 5.000~50.000 kWh/年 | 給湯、暖房 |
この表を見てお分かりのように、ガスの使用用途により料金体系は異なり、結果的にガス料金にも影響してきます。
料金体系の変更はできるのか?自主的に行うことはできません。年間のガス使用量に依存することから年の終わりにガス事業者は年間の使用量を確認し、使用範囲を調整した上で翌年の料金体系を変更します。
電気とガス料金を比較する
電気・都市ガスを申し込みにあたりやはり気になるのは、料金でしょう。なるべく安いプランをできれば申し込みたいものです。しかしながら、一社ずつサイトを見て料金を比較するには、時間も労力も必要です。また、料金のしくみなどがよくわからないと、比較も正確にできないかもしれませんね。
なるべく早く分かりやすく料金を比較したいならば、電気料金・都市ガス料金の比較サイトが便利です。毎月の電気の使用量(kWh)がどのくらいか分かっている場合はもちろん、分からない場合も居住人数や使用する家電などの情報をもとに最安プランをシュミレーションしてくれます。
比較サイトでは、簡単に電気とガスの最適なプラン・料金を表示してくれますが、実際に申し込みを行うにあたりよく確認しておきたいポイントもあります。以下に一例を紹介します。
- 料金が恒久的に変わらないかどうかを確認する(キャンペーン期間だけではないか)
- その値引きは期間に際限のないものであったり、失効までに長い期間があるかどうか
- 維持のためのサービスが加えられているかを確認する
- 市場で最安値の料金となっているかを再確認する
以上の注意点も考慮した上で、自分にとって最適な会社、プランを明確にし契約を行います。
電気・ガスの届けに必要な書類
必要となる電力量であったり、ガスの料金体系またその契約したい事業者の料金が明確になったのであれば、その事業者と連絡を取るだけです。必要となる書類は以下となります。
- 契約名義人情報(名前、DNI、銀行口座)
- 契約をする電力容量(kW)
- 契約をするガス料金プラン
- CUPS
- 電気(CIE)およびガスの設備証明書
電気やガスの届け出に必要となる書類というのは大抵同じものですが、電気・ガスの供給が初めてとなる新居といった場合には異なります。その際には⑤電気(CIE)およびガスの設備証明書の提出が不可欠となります。
契約時における費用
スペインで電気とガスの契約を行う際には必ずその開通のために代金を支払う必要があります。この費用はガスも電気も同じ程度で、その地域の事業者が回収しますが送られてくる請求書を通じて支払います。そのため、一番最初に支払う料金は、その期間に使用した料金やそれに応じた税金だけでなく、開通分の費用が含まれることから最も高額となります。
契約することによる費用が発生することは知っておかなければならなく、それらは電気とガスでも異なります。また、同じ事業者を通じた契約であってもそれぞれでの代金は必要となり、同じ請求書で送られてきます。
電気の届け出の費用は?
電気の供給してもらうにあたり、消費者はその地域の事業者が持つ権利に対して費用を支払う必要があります。主にそれは電気設備を供給網に開通させるという名目であり、その料金は契約する電力量や次に示す権利の内容に依存します。
- 拡張権 これは配給者の電気インフラを使用するためという名目であり、その費用は17.37€/kW+IVAとなります。知っておくべき大事なこととして、この代金は供給を取りやめしてから3年間は持続するということです。
- 開通権 これは供給点が新たに増えることからそれを供給網に加えるという名目であり、その費用は19,40€/kW + IVAとなります。
- 接続権 これはメーターが設置された際に供給網に電気が流れ始める接続に対する費用となり、9,04€ + IVAとなります。
もしそれまでに電気供給やこうした名目での費用支払いをしたことが一度もなければ、電力量(kW数)によって変わる料金についてトータルでいくらの支払いが必要であるのかを理解するのは難しいかもしれません。そのため、次の表では電気の開通費用をIVA有、無で示しています。
電力 | IVA無の電気届け出料金 | IVA有の電気届け出料金 |
---|---|---|
3,45 kW | 136,93 € | 165,68 € |
4,6 kW | 179,56 € | 217,27 € |
5,75 kW | 222,19 € | 268,85 € |
6,9 kW | 264,82 € | 320,43 € |
8,05 kW | 307,45 € | 372,02 € |
9,2 kW | 350,08 € | 423,60 € |
ガスの接続費用は?
今までに述べてきたように、ガスの開通の届け出に際しても手数料はかかり、電気に対して支払うものとは異なります。しかしながら、その支払いは電気と同時に行われることが多いです。ただし、費用は事業者ごとに異なるものではありません。
引込導管の権利 これは新たな供給点に接続する際に配給者が持ってこなければならない引込ガス導管の運用に対しての費用です。これは契約する料金体系により料金は異なり、次の表のように示されます。
体系 | 料金 | 年間消費量 |
---|---|---|
3.1 | 128.82€ | 5.000 kWh以下 |
3.2 | 128.82€ | 5.000 kWh - 15.000 kWh |
296.09€ | 15.000 kWh - 50.000 kWh | |
3.3 | 592.19€ | 50.000 kWh - 100.000 kWh |
3.4 | 592.19€ | 100.000 kWh以上 |
開通権 これもまた契約内容により料金は異なりますが、自治体ごとでの設定となっています。これが点検、接続に対しての費用となり、料金は次の表のように示されます。
開通料金 | 3.1 | 3.2 | 3.3 | 3.4 |
---|---|---|---|---|
カタルーニャ | 76.85€ | 76.85€ | 122.54€ | 122.54€ |
バレンシア | 91.98€ | 91.98€ | 152.05€ | 152.05€ |
マドリード | 91.96€ | 91.96€ | 137.57€ | 137.57€ |
アンダルシア | 72€ | 76.02€ | 97.14€ | 107.47€ |
カスティージャ ラ・マンチャ | 84.95€ | 87.63€ | 126.12€ | 129.25€ |
カスティージャ レオン | 67.05€ | 70.58€ | 105.88€ | 105.88€ |
ガリシア | 106.89€ | 106.89€ | 151.78€ | 151.78€ |
ナバーラ | 93.5€ | 106.06€ | 139.55€ | 139.55€ |
ラ・リオハ | 86.56€ | 86.56€ | 143.57€ | 143.57€ |
バスク | 105.14€ | 105.14€ | 157.74€ | 157.74€ |
アラゴン | 99.68€ | 105.39€ | 134.61€ | 134.61€ |
エストレマドゥーラ | 90.61€ | 90.61€ | 126.94€ | 160.87€ |
電気とガスの申し込みにかかる時間は?
電気とガスの申し込みにはどちらもおおよそ5~7営業日が供給までに必要であると言えます。電気及びガス事業者の技術者が家までやってきてメーターの設置を行います。
※技術者への注意: 技術者はメーターを設置するために家への事前の訪問許可が必要であり、決まった日時にしか入れません。また、覚えておかなければいけないのは、最初の請求にその費用は含まれることから費用の支払いをその場で行うことはないということです。
主要事業者との契約
この記事内で一つの住居における電気とガスの契約時の手順について説明してきました。
スペインのエネルギー市場では様々な電気とガスの事業者があり、ここでは代表的な5社を紹介いたします。(各企業ロゴをクリック頂くと料金プラン等をまとめたスペイン語ページに移ります。)