都市ガスとプロパンガスの違い:料金や供給方法、発熱量や成分など、違いを徹底解説
私達が普段使っているガスには、都市ガスとプロパンガス(LPガス)の2種類があります。お引越しで都市ガスからプロパンガス、もしくはその逆に変わる事もありますが、そんな時に知っておくべき、都市ガスとプロパンガスの違いについてみていきます。
一目でわかる:都市ガスとプロパンガス(LPガス)の違い
都市ガスとプロパンガス(LPガス)の違いが一目でわかるように一覧にまとめました。
都市ガス | プロパンガス (LPガス) |
|
---|---|---|
供給方法 | 地下のガス導管を通じて供給 | ガスボンベを契約者宅まで配送して供給 |
供給エリア | ガス導管が敷設されている地域のみ(人口密度の高い都市部が中心) | 全国どこでも |
料金 | ・2017年まで規制料金だった ・販売店同士の価格差は小さい ・プロパンガスより安い |
・昔から自由料金制 ・販売店同士の価格差が大きい ・都市ガスより高い |
主成分・原料 | メタンを主とする天然ガス | プロパン・ブタンを主とする液化石油ガス |
重さ | 空気より軽い | 空気より重い |
発熱量 | 小さい:11,000Kcal/㎥ | 大きい:24,000Kcal/㎥ |
それぞれのポイントは次で詳しく解説します。
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都市ガスとプロパンガスの違いを詳しく解説
都市ガスとプロパンガス(LPガス)の違いは大きくまとめて以下の4点です。それぞれ確認します。
違い①ガスの供給方法・供給エリア
都市ガスとプロパンガス(LPガス)の違いで、皆さんがぱっと思いつくのは、「ガスボンベの有無」ではないでしょうか。これは、都市ガスとプロパンガスの供給方法の違いを表しています。
プロパンガスはボンベ、都市ガスはガス導管
都市ガスは、地下に敷設されたガス導管を通じてガスが契約者まで届けられます。電気や水道の供給と似ていますね。一方のプロパンガスは、ガス会社の作業員が定期的にガスボンベを各契約者の家まで届けています。
❓プロパンガスは危険?
ちなみに、プロパンガスはガスボンベを置くので危険なイメージがあるかもしれませんが、マイコンメーターや警報機、ヒューズコックといった安全機器の取り付けが徹底された結果、プロパンガスの安全性や事故件数は都市ガスと変わらなくなりました。プロパンガスの事故件数には屋台などイベント時の事故も含まれるのでむしろ都市ガスよりも少ないと言えるでしょう。
👍災害に強いプロパンガス
プロパンガスは、ガスが入った容器を配送して供給する分散型エネルギーであるため、 災害に強いエネルギーという側面があります。 災害が起こった時、被害を最小限に抑え、調査・点検を1戸単位で行なうことができるため、迅速な復旧が可能です。また、避難所などへの燃料供給にも臨機応変に対応できるメリットもあります。
プロパンガスは全国、都市ガスは都市部
都市ガスとプロパンガス( LPガス)の供給方法の違いは、供給エリアの違いにも関係します。
都市ガスを供給するためにはガス導管が必要です。このガス導管を設置するためには、莫大な初期費用がかかります。人口がある程度密集している、つまり潜在的な契約者が多い地域でないと、ガス導管を引いても初期費用を回収することができません。そのため、都市ガスはその名が表すとおり、主に都市部でのみ供給が行われています。なお、都市ガス用のガス導管が設置されているエリアは、日本の面積のおよそ6%(※1)程度です。
一方でプロパンガスは、ガスボンベと簡単な設備があれば、どこでも供給することが可能です。そのため、プロパンガスは全国各地で供給が行われています。居住エリアのサイズが限られている地方の市町村などでは、都市ガスのガス導管を敷設するよりもプロパンガスを配送する方がコスト効率が高いため、主要な熱源としてプロパンガスが活躍しています。
つまり、都市ガスはガス導管のある都市部でしか供給できないのに対して、プロパンガスは全国どこでも供給が可能、というわけです。
❓都市ガスとプロパンガスの利用者の割合は?
日本全国での都市ガスとプロパンガスユーザーの割合(※2)は、都市ガスがおよそ53%、プロパンガスがおよそ44%となっています(残りの3%は簡易ガスの需要家)。都市ガスはガス導管の設置面積は少ないものの、人口が多い地域で供給されているため、利用者の数自体はプロパンガスよりも多いという結果になっています。
※1 出典:一般社団法人日本ガス協会Webサイト「都市ガス事業について」
※2 出典:経済産業省「ガス事業の現状」図表1-1-1 ガス事業の分類(2013年3月時点のデータ)
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違い②ガスの料金設定
会社ごとの料金差が大きいのはプロパンガス
都市ガスとプロパンガスを比べると、都市ガスでは会社ごとの料金差がそこまで大きくないのに対して、プロパンガスでは会社ごとの料金差が大きいという特徴があります。これは、両者の料金制度の違いによるものです。
都市ガスの料金制度
都市ガスの料金は、2017年4月に市場が自由化されるまで、政府の認可が必要な「規制料金」でした。今は規制がないため、都市ガス会社は自由に料金を設定することができます。これによって、新しく参入した都市ガス会社が規制料金よりもお得な料金プランを提供するようになりました。
しかし現状では、規制料金と大幅に違った料金を提示している都市ガス会社はまだ見受けられません。新しく参入した企業がガスを配送するためには、自由化前からある大手ガス会社にお金を払ってガス導管を使わせてもらう必要があり、コストを劇的に下げるのが難しいということも影響しています。
したがって、都市ガスにおいては販売店同士で値段が違うものの、価格の幅はそれほど大きくありません。また、自由化後に参入した企業が多くないため、選べる会社の数には限りがあります。
プロパンガスの料金制度
プロパンガス(LPガス)は都市ガスと違い、ずっと昔から「自由料金」です。つまり、ずっと昔から料金設定に関して規制がなく、プロパンガス販売店が仕入れ価格や人件費などのコストと自分たちの利益を考えて自由に料金を設定してきました。
規制料金のように基準となる値段が存在しなかったこともあり、プロパンガスは販売店が違うと料金もばらばらです。消費者になるべく安い値段でプロパンガスの提供をするべく努力している企業もあれば、利益を増やすために、必要以上に高い値段で販売している企業も残念ながら存在します。そのため、同じ地域でも2倍近く料金が違うことも決して珍しくはありません。
つまり、プロパンガスは販売店を変えることで、値段が劇的に変わる可能性のある商品だということです。
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プロパンガスの方が料金が高い
都市ガスとプロパンガスの料金を比べると、都市ガスの方が安く、プロパンガスの方が高い傾向があります。
その主な理由には以下のようなことが挙げられます。
- プロパンガスは都市ガスと比べて供給(ボンベの配送)にかかるコスト(配送費・人件費)が高い
- プロパンガスは販売店の数が多く、規模もばらばらなため、消費者にとって価格の比較が難しい。そのため販売店同士が価格競争にさらされてこなかった
ボンベを契約者宅まで運ぶという供給方法から、どうしても都市ガスと比べてプロパンガスのコストは高くなってしまいます。しかし、上で説明したとおり、プロパンガスは価格の幅が大きいです。料金が都市ガスに勝ることは難しいとしても、安い販売店を選んで切り替えることで、ガス代を今以上に下げられる可能性は大いにあります。
違い③ガスの原料・成分・輸入国
都市ガスとプロパンガス(LPガス)は、名前が違うだけでなく、ガスの成分と原料も違います。ガスの種類自体が違うのです。
- 都市ガス:メタンを主成分とする天然ガスが主な原料
- プロパンガス(LPガス):プロパン・ブタンを主成分とする液化石油ガスが主な原料
ちなみに、この「LPガス」という名称は、液化石油ガスの英語である「Liquefied Petroleum Gas」の略称です。
都市ガスは軽く、プロパンガスは重い
原料が違うため、都市ガスとプロパンガスでは重さも異なり、都市ガスは空気より軽く、プロパンガスは空気より重いという特徴があります。
万が一ガス漏れが起きた場合、都市ガスは高いところに、プロパンガスは低いところに滞留します。このため、都市ガスのガス探知器は高い位置にあり、プロパンガスのガス探知器は低い位置に設置されています。
輸入国の違い
都市ガスもプロパンガス(LPガス)も、原料のほとんどを輸入に頼っています。しかし、輸入国にはそれぞれ違いがあります。
都市ガスの原料となる液化天然ガスの主な輸入国
参考:一般社団法人日本ガス協会「2019年度LNG輸入実績」
日本で使用される液化天然ガスは、オーストラリアからの輸入が大半を占めています。また、シェールガス*の増産よるアメリカからの輸入も増えています。
プロパンガス(LPガス)の主な輸入国
参考:日本LPガス協会「国別輸入量推移 2021年度」(プロパンとブタンの合計)
プロパンガス(LPガス)は、UAEやサウジアラビアなどの中東諸国からの輸入が大半を占めていましたが、近年はアメリカ産のシェールガス*由来のLPガスの輸入が増加し、今ではアメリカが日本にとって最大の輸入元となっています。
*シェールガスとは? シェールガスとは、地層深くの頁岩(シェール)層に封じ込められている天然ガスの一種です。近年技術が発達したことにより、採掘が可能となりました。これまでの天然ガスに匹敵するほど埋蔵量が多いとされ、都市ガス・プロパンガスの生産に利用されており、その割合は年々増加しています。ただし、従来のガスと比べて発掘コストが依然高いこと、環境への悪影響などの問題点も指摘されています。
違い④発熱量と使えるガス器具
都市ガスとプロパンガス(LPガス)は、ガスの成分・原料が異なるため、その発熱量にも違いがあります。
プロパンガスの方が発熱量が高い
上で確認したとおり、都市ガスはメタン、プロパンガス(LPガス)はプロパン・ブタンを主成分として含んでいます。
プロパンガス(LPガス)の主成分であるこのプロパン・ブタンは、熱量がとても高いのが特徴です。プロパンガス1㎥あたりの熱量(カロリー)は、都市ガスのそれと比べて2倍以上あります。
- 都市ガス:11,000Kcal/㎥
- プロパンガス(LPガス):24,000Kcal/㎥
つまり、都市ガスとプロパンガスで同じ作業をしたい場合、都市ガスはプロパンガスの2倍以上の量を使う必要があるということです。
都市ガスとプロパンガスは使えるガス器具が違う
前述のように、都市ガスとプロパンガス(LPガス)は原料が違い、熱量も異なるため同じガス器具は使用できません。
お引っ越しなどで、都市ガスからプロパンガス、もしくはプロパンガスから都市ガスになる時は、ガス機器を買い換える、もしくは部品を交換して仕様を変更する必要があります。
ちなみに、都市ガス用コンロのガス穴はプロパンガス(LPガス)用コンロのそれよりもガスが多く出るようになっています。そのため、都市ガスの方が熱量が低いものの、実際の使用ではプロパンガスと都市ガスで差を感じることはありません。例えば、調理をする時に、都市ガスだからといって、プロパンガスの2倍時間がかかるわけではないということです。
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違いから見る都市ガスとプロパンガスのメリット・デメリット
ここまで都市ガスとプロパンガス(LPガス)の違いを見てきました。そのうえで両者のメリット・デメリットをまとめます。
プロパンガス |
---|
メリット ・全国どこでも利用できる ・災害に強い(復旧が早い避難所等でも使用できる) |
デメリット ・価格が高い |
都市ガス |
メリット ・価格が安い |
デメリット ・利用できる場所が限られる ・災害からの復旧に時間がかかる |
なお、ここまでですでに説明したとおり、プロパンガスは価格の差が大きいので、現状のガス代が高い、と感じている方は、探せば今よりも安いプロパンガス販売店を見つけられる可能性が大いにあります。
都市ガスより高いプロパンガス。どうやって安くする?
「都市ガスよりもプロパンガスが高い」理由を解説しました。しかし、都市ガスは供給エリアが限られていますから、みんなが都市ガスに切り替えられるわけではありません。
この状況における最善の策は、「プロパンガスの中でも安いものを選んで契約を切り替える」ことです。
プロパンガスの契約を切り替えられるのは?
ご自身でプロパンガス契約の切り替えが可能なのは以下の方です。
- 持ち家戸建てにお住まいの方
- 飲食店、美容院など、店舗を所有している方
- 集合住宅・賃貸住宅のオーナー
集合住宅や賃貸住宅に入居している場合は、ご自身の意思だけではプロパンガスの契約切り替えができません。オーナー(大家さん・管理会社など)に契約を切り替えてもらう必要があります。
今のプロパンガス料金はどのくらい?
「うちのプロパンガスは高い?」と疑問に思ったら、まずはプロパンガスの無料料金診断をしてみましょう。
お住まいの地域・ひと月のガス料金とガス使用量(㎥)を入力するだけで結果がわかります。
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プロパンガス料金を削減できる可能性があるなら、「無料切替相談サービス」を活用しましょう。プロパンガスのエキスパートが現状のヒアリングを行い、今より安く優良なプロパンガス販売店を探して紹介してくれます。
相談料や利用料はかかりませんので、安心して利用できます。下記のオンラインフォームもしくはフリーダイヤルからお気軽にご相談ください。
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一般社団法人 プロパンガス料金消費者協会 代表理事
2010年、一般社団法人プロパンガス料金消費者協会を設立して代表理事に就任。従来、概念すら存在しなかったプロパンガス料金の「適正価格」の設定に奔走。
大手を中心とした多数のプロパンガス会社の賛同を得て、設立10年足らずで業界の共通言語としての浸透に成功した。
また、幅広い分野のマネースキルを学べるメディア、「マネーの達人」においてもプロパンガスに関する知識の記事を多数執筆している。