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2024年の再生可能エネルギー発電促進賦課金はいくら?これまでの推移も解説

更新日
2024年の再生可能エネルギー発電促進賦課金はいくら?これまでの推移も解説
2024年の再生可能エネルギー発電促進賦課金はいくら?これまでの推移も解説

2024年度の「再生可能エネルギー発電促進賦課金(再エネ賦課金)」は1kWhあたり3.49円です。標準家庭(※)では毎月1,047円の負担が見込まれます。本記事では、再エネ賦課金の推移や再エネ賦課金を減らす方法等を解説します。

※標準家庭…ひと月あたり300kWhの電気を使用すると仮定

2024年の再エネ賦課金はいくら?再エネ賦課金の推移

再エネ賦課金とは

電気代に含まれる項目の一つ。再生エネルギーを普及させるために各電力契約者が負担する料金のことを指します。

経済産業省は2024年3月19日、2024年度の再エネ賦課金を1kWhあたり3.49円に設定すると発表しました。

下の図から見ても分かるように、2023年度に再エネ賦課金が大きく値下がりしたのに対し、2024年度は再び大幅に値上がりすることとなりました。

2012-2024年度の再エネ賦課金(1kWhあたり)の変遷

こうした再エネ賦課金の値上げに伴って、標準家庭(※)においては、毎月1,047円の再エネ賦課金を負担することになると見込まれます。2023年度と比べて627円分の負担増となります。

2012-2024年度の再エネ賦課金(1kWhあたり)の変遷

※標準家庭…ひと月あたり300kWhの電気を使用すると仮定

上記のグラフを見るとわかるとおり、2012年度のFIT導入当初、再エネ賦課金の単価は1kWhあたり0.22円で始まり、標準家庭のひと月あたりの負担は66円に過ぎませんでした。その後、再エネ発電の普及が急速に進んだことなどから、毎年右肩上がりで増加していきます。 2023年度には一時大幅に減少したものの、2024年度には1kWhあたり3.49円と再び増加し、標準家庭のひと月当たりの負担は1,047円にも上ります。

わずか12年で約16倍の値上がりとなっており、消費者の負担が増え続けることを問題視する声も上がっています。そこで、消費者負担を軽減することをひとつの目的とした「非化石証書」のような制度も作られています。

再エネ賦課金を負担しなければいけないのはなぜ?

再生可能エネルギー発電促進賦課金(再エネ賦課金)を電気の契約者一人一人が負担することになったのは、2012年に「固定価格買取制度(FIT)」が導入されたことがきっかけです。以下でFITの制度内容と導入の経緯を見ていきましょう。

固定価格買取制度とは

再生可能エネルギー(再エネ)とは、太陽光、風力、水力、バイオマスなどによって作られる、永続的に利用できるエネルギーのことです。石油、石炭などの化石燃料は一度燃やすとなくなってしまい、埋蔵量にも限りがありますが、再エネは枯渇の心配がなく繰り返し作ることができます。また、化石燃料は燃やすと温暖化の原因になるCO2が出ますが、再エネはCO2を出しません。このような点を踏まえ、地球温暖化への有力な対策として各国で再生可能エネルギーの普及が進められています。

この流れを受けて、日本も電気事業者に一定期間再エネで作られた電気を固定価格で買い取るよう法律で義務づけ、再エネの普及を後押ししました。これが2012年7月に始まった固定価格買取制度(FIT)です。FITを通じて買い取られた再エネは、FIT電気と呼ばれます。

国が決めた固定価格で一定期間電力の買い取りを保証することで、再エネ発電事業者は採算の見通しが立てやすくなります。これによって再エネ発電の施設の拡大はすすみ、発電量全体に占める再エネ発電の割合は2011年度の約10.4%から、2019年度には18.1%にまで増えました。様々な企業が各地に大規模な太陽光発電施設(メガソーラー)を建て、個人の住宅でも太陽光発電システムの導入が進むなど、一気に普及が進みました。

再エネ普及のための消費者負担

FITによって再エネ発電の導入が進み、その分日本の温暖化対策も進んだといえますが、良い面ばかりではありません。割高な固定価格で再エネの買い取りを義務づけられた電気事業者側はどうでしょうか。

割高な固定価格で買い取ったFIT電気を他の電気と同じ料金で販売するとなると、FIT電気が増えれば増えるほど電気事業者は損をすることになってしまいます。こうした電気事業者側のデメリットに配慮して設けられたのが再生可能エネルギー発電促進賦課金(再エネ賦課金)です。

再エネ賦課金は、電気の利用者が消費電力量に応じて電気料金と一緒に支払う、いわば税金のようなものです。この再エネ賦課金は、電気事業者がFIT電気の買い取りにかかった費用をまかなうために使われます。電気料金と一緒に徴収された再エネ賦課金は、いったん国が指定する調整機関に回収され、そこから交付金という形で電気事業者に分配されます。

つまり、全国で発電されるFIT電気の買い取り費用を消費者が負担し、電気事業者が赤字にならないような仕組みになっているのです。逆にいえば、消費者が薄く広く負担し合うことで、お金を電気事業者に回し、再エネ発電の普及拡大を支えていく仕組みといえます。

再エネ賦課金徴収の仕組み
再エネ賦課金、どう回収される?

経済産業省資源エネルギー庁HP「固定買取制度 制度の概要」より転載

今後の再エネ賦課金の見通し

この再エネ賦課金は将来も上がり続けていくのでしょうか。

FITを導入したことにより、再エネ発電の中でも参入しやすく開発期間も短い太陽光発電が急速に拡大しました。太陽光発電は、今ではFITの認定容量のほぼ8割を占めています。特に制度のスタート初期の2012~2014年度には、発電容量10kW以上の事業用太陽光発電が爆発的に増加、賦課金も大きく値上がりしました。2019年度も事業用太陽光発電の買取価格が全体の6割に上り、消費者に重い負担がのしかかる要因になっています。

一方、FITによる固定価格での買取期間は限られています。そのため、固定価格での買取期間を終える「卒FIT電気」も2022年以降増えていくことが想定されています。買取期間が10年間の住宅用太陽光発電は2022年に約34万件、139万kWが卒FITを迎えます。買取期間20年の事業用太陽光発電は2032年から卒FITが本格化していきます。

環境省が2013年にまとめた推計(※1)では、こうした要因から2030年までは賦課金単価は値上がりが続くものの、再エネ電気導入量の減少や卒FITの増加で、2030年以降は値下がりが続くとみられています。家計への負担も2048年にはほぼなくなるという見通しです。ただし推計が古く、2020年の見通しも実際とは違っているなど、この推計の通りになるのかどうかはわかりません。

なお、電力中央研究所は2020年3月、より厳しい見通しを研究結果(※2)で発表しています。今後は太陽光に加えて、買取価格が高い風力が大幅に増えるとみて、賦課金の単価も2030年度は2019年度より4~6割以上高い3.5~4.1円まで上がると予想しています。その後の見通しは明らかにしていませんが、国の掲げる再エネ最大限導入と国民負担抑制の両立は困難といい、「費用対効果の検証と改善が不可欠」と指摘しています。

※1 環境省「平成25年度2050年再生可能エネルギー等分散型エネルギー普及可能性検証検討報告書」
※2 一般財団法人 電力中央研究所「2030年における再生可能エネルギー導入量と買取総額の推計」

再エネ賦課金を減らす方法は?

標準家庭で月額約1,000円、今後さらに値上がりする可能性が高い再エネ賦課金。安く抑える方法はないのでしょうか。

賦課金の額は全国一律で決められた単価と電気使用量で決まります。

再エネ賦課金=再エネ賦課金単価(※全国一律) × 1か月の電気使用量

そこで、金額を抑えるには電気使用量を減らすしかありません。無駄な電気は使わない、家電のスイッチをこまめに切る、省エネ効率の高い家電に買い換えるなど、省エネを心がけましょう。

また、自宅に太陽光発電システムを導入すれば、自分で作った電気を利用できますから、電力会社から購入する電気を減らし、再エネ賦課金も抑えることができます。さらに、余剰電力を売ることによって、再エネ賦課金以上の売電収入を得られるかもしれません。

まとめ

再エネ賦課金は電気事業者がFIT電気の買い取りにかかった費用を、消費者(国民)全体で負担し、再エネ電気の普及拡大を後押しする仕組みです。国が年間にどのくらい再生可能エネルギーが導入されるかを推測し、経済産業大臣が毎年度、全国一律で単価を決めています。この単価にそれぞれの電気使用量を掛けた金額が再エネ賦課金になり、電気料金に上乗せして請求されています。

2012年度のFIT導入当初、単価は1kWhあたり0.22円、標準家庭あたりでの月額は66円にすぎませんでした。その後、再エネ発電が急速に普及して電気事業者の買取費用も増え、毎年値上がりが続いてきました。2024年度には3.49円、標準家庭で月額1,047円にもなり、再エネ普及と消費者の負担増とのバランスが問われています。