FIT(フィット)電気ってなに?FIT制度(固定価格買取制度)ってなに?詳しく解説!
「FIT(フィット)電気」ってよく聞くけど、再生可能エネルギーと何が違うの?」という人もいることでしょう。ここでは、FIT電気とは何なのか、再生可能エネルギーと何が違うのか、FIT制度の仕組みについて等、分かりやすく解説します。
FIT(フイット)電気って何?
FIT(フイット)電気とは、再生可能エネルギーを電源として発電され、かつFIT制度によって電気事業者に買い取られた電気のこと。言い換えると、FIT制度によって買い取られた再生可能エネルギー源による電気のことです。
これだけでは意味が分からないという人のために、これから以下の点を1つずつ具体的に解説していきます。
- 再生可能エネルギーとは?
- FIT制度とは?
- FIT電気と再生可能エネルギーの違いは?
再生可能エネルギーとは?
再生可能エネルギーとは、主に下記の自然由来エネルギーのことを指します。
- 太陽光
- 風力
- 水力
- 地熱
- バイオマス
これらは“再生可能”という言葉の通り、利用しても資源が枯渇せず繰り返し利用が可能なエネルギー源です。それに対し、石油・石炭・天然ガスなどの化石燃料は資源が有限で、将来的に枯渇すると予想されるため、再生可能エネルギーとはいえません。
また、再生可能エネルギーは発電時にほとんどCO2(二酸化炭素)を発生させずクリーンです。それに対して、化石燃料による発電はCO2を大量に発生させてしまうため、地球温暖化の一因となります。
環境保護、そして地球温暖化防止の観点から、再生可能エネルギーによる発電は今後いっそう重要になっていくでしょう。
国内の発電における再生可能エネルギーの割合
日本国内の電気事業者による発電において、再生可能エネルギー由来の発電電力の割合はどれ位なのでしょうか?
下記の表を見ると、発電電力量の16.8%が再生可能エネルギーということが分かります。化石燃料による発電が78.6%と全体の8割近いことを考えると、再生可能エネルギーによる発電はまだまだ少ないですね。
電気事業者の発電電力量 | 758.4億kWh | |
火力発電 595.8億kWh(78.6%) |
石炭 | 256.2億kWh(33.8%) |
天然ガス(LNG) | 286.5億kWh(37.8%) | |
石油 | 12.5億kWh(1.7%) | |
再生可能エネルギーによる発電 | 水力 | 95.1億kWh(12.5%) |
新エネルギー等 (風力・太陽光・地熱・バイオマス・廃棄物) |
32.9億kWh(4.3%) | |
その他の発電 | 原子力 | 51.7億kWh(6.8%) |
※参照:資源エネルギー庁「電力調査統計 結果概要(2019年7月分)」
FIT制度とは?
FIT(フィット)制度は、「固定価格買取制度」とも言われます。FITは固定価格買取を表す英語「Feed in Tariff(フィード・イン・タリフ)」の略です。
FIT制度は、再生可能エネルギーで発電した電気を、電力会社(小売電気事業者)が一定期間固定価格で買い取ることを国が約束する制度です。
この制度において、小売電気事業者が発電事業者から電気を買い取る際の費用の一部は「再生可能エネルギー発電促進賦課金」というかたちで電気料金に上乗せされて国民が負担しています。国民が費用の一部を負担することで、小売電気事業者は火力発電などと比べてまだコストが高い再エネを購入しやすくなります。これによって、再エネが安定的に購入されるようになるため、再エネ発電事業者は、事業の持続的な運営と普及を行いやすくなる、というしくみです。
具体的なしくみとしては以下のとおりです。
- 国が指定する「費用負担調整機関」が、小売事業者が電気料金と一緒に徴収した再エネ賦課金をいったん全て回収
- 各小売電気事業者は再エネの買取費用を費用負担調整機関に報告
- 報告された金額に応じて費用負担調整機関が「再エネ特措法交付金」を各小売電気事業者に交付
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FIT制度が定められた背景
FIT制度が定められた背景にはどのような事情があるのでしょうか?それは、日本国内においてまだまだ少ない再生可能エネルギー発電施設の普及を推し進めなければならないという事情です。
そもそも日本はエネルギー源となる資源が乏しく、エネルギー自給率が他の先進国に比べてかなり低いという事実があります。下図を見ると、2017年時点で日本のエネルギー自給率は1割にも満たないことが分かります。
※出典:資源エネルギー庁「主要国の一次エネルギー自給率比較(2017年)」
もともと日本は原子力発電によるエネルギー自給を目指していましたが、2011年の東日本大震災時に発生した福島の原発事故が原因となり、国内の全原子力発電所が稼働をストップしました。
その後いくつかの原子力発電所は稼働再開したものの、原子力発電の事故リスクが衆目にさらされたことで、これまでのように原子力発電にエネルギー供給を任せるのは難しい状況です。
また上でも触れたように、日本は国内で消費するエネルギー源のおよそ8割を、他国から輸入した石炭や天然ガスなどの化石燃料に頼っています。しかし、化石燃料は将来的に枯渇するのに加えて、発電時に大量のCO₂やその他有害な物質を発生させ環境に悪影響を及ぼします。
そこで、リスクが少なく環境にもやさしい再生可能エネルギー発電を国内で増やしていこう!となり、その一環としてFIT制度が導入されたわけです。
FIT制度の成果
FIT制度が導入された2012年以降、どのような成果が見られているでしょうか?再生可能エネルギーの設備容量の推移をあらわす下図を見ると、主に太陽光発電が大きく伸びていることが分かりますね。FIT制度は確かに成果を発揮しているといえるでしょう。
※出典:資源エネルギー庁「再生可能エネルギー設備容量の推移」
FIT制度の考え方
FIT制度は、発電事業者がつくった電気を電力会社が買い取る費用の一部を、電気を消費する国民みんなで負担しようという取り決めです。「電気ご使用量のお知らせ」(検針票)に再生可能エネルギー発電促進賦課金※という項目がありますよね?それがFIT制度による負担金なのです。
再エネ賦課金(再生可能エネルギー発電促進賦課金)とは?再生可能エネルギーで発電された電気は、私たちが日々使う電気の一部として供給されています。また、今後の日本のエネルギー自給率を高めるのにも国民の協力が不可欠です。そのため、再生可能エネルギー発電の高い建設コストの一部を国民から徴収するというのが再エネ賦課金の考えです。
FIT制度によって再生可能エネルギーによる電気が普及すると、日本のエネルギー自給率が向上します。エネルギー自給率が向上するということは、他国に依存せざるを得ない化石燃料の輸入を減らすことができます。
化石燃料価格は、他国の情勢や政治リスク等によって乱高下する場合があるため、電気料金が変動して国民に混乱をもたらすことも考えられます。実際、過去に石油の価格が大きく上昇するオイルショックもありました。
FIT制度は日本のエネルギー自給率を向上させ、リスクが高い他国依存度を抑えるという観点から、電気を利用する国民全てにとってメリットといえるでしょう。
再生可能エネルギー促進のため、いくらぐらい我々は負担している?
FIT制度(固定価格買取制度)とは、再生可能エネルギー(電気)の買取り価格を国が保証するものです。そしてこれは、国民が「再生可能エネルギー賦課金」として負担していることも説明しました。それでは、いったいどのようにして、そしていくらくらい、私たちは負担をしているのでしょうか?
まず、どのように負担しているか?ですが、これは月々の電気料金に含まれる形で負担をしています。この賦課金は国が設定しているものなので、どこの電力会社のどの電気料金プランを契約していても、必ず支払っています。次に、どのくらい支払っているかですが、これは電気1kWhの使用につき、いくら、と設定されており、あなたがその月に使用した電力量(kWh)x 1kWhあたりの賦課金で計算されます。
- 再生エネルギー発電促進賦課金は電気を使うすべての人が負担しています。
- 単価は全国一律の単価です。(どこの電力会社でもどの電気料金プランでも変わりありません。)
- 毎月の電気料金の一部として負担しています。
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再生可能エネルギー賦課金の支払方法
あなたが使った電気の使用量の合計(kWh = キロワットアワー)かける1kWhあたりの賦課金単価で負担すべき、賦課金は決定されます。今月どれくらい賦課金を支払ったかは、毎月、電力会社から届けられる検針票(検針票)の記載をチェックしてみましょう。
再生可能エネルギー賦課金単価の推移
再生可能エネルギー賦課金単価(円/kWh)は以下のとおりです。2012年の導入以来、単価は増加傾向にあるのが分かります。この賦課金は毎月の電気料金を支払うときに一緒に支払っています。
2012年 | 0.22円 |
---|---|
2013年 | 0.35円 |
2014年 | 0.75円 |
2015年 | 1.58円 |
2016年 | 2.25円 |
2017年 | 2.64円 |
2018年 | 2.90円 |
2019年 | 2.95円 |
※税込価格
なお、年々増加する国民負担を軽減するべく、2018年より日本卸電力取引所(JEPX)にて非化石証書の取引が開始されました。これは、電力会社が「非化石証書」を購入することによって、CO2の排出量を削減すると同時に再エネ促進にかかる費用の一部を負担するというしくみです。今後非化石証書を購入する電力会社が増えることによって、我々消費者の再エネ賦課金の負担が減っていくことが予想されます。
FIT電気は再生可能エネルギーと区別される
FIT電気はもともと再生可能エネルギーを用いて発電されますが、固定価格買取制度(FIT制度)によって買い取られた電気のことを指します。
FIT電気には、電気そのものとしての価値に加えて、「CO2を排出しない、環境負担が少ない」という環境価値があります。この環境価値は、購入費用を負担している私たち消費者に分配されます。そのため、電力会社が買い取る時点において、FIT電気には電気そのものとしての価値しか残りません。したがって、電力会社は「再生可能エネルギー由来だからCO2排出量も少なくて環境にいいですよ!うちから電気を購入してください」と宣伝してはいけないことになっています。
FIT電気 = 電気そのものの価値(⇒電力会社へ)+ 環境価値(⇒消費者へ)
実際、電力会社の電源構成において、FIT電気は火力発電による電気なども含めた全国平均のCO2排出量を持つ電気として扱われます。本来の発電方法はクリーンでも、扱いとしては特段クリーンとはされないわけですね。
それに対して、FIT制度によって買い取られていない再生可能エネルギー由来の電気もあります。この場合は電力会社が100%自己負担で買い取った電気なので、堂々と「環境に良いクリーンな電気を作っています」と宣伝していいことになっています。
環境価値を付加すればFIT電気も「再エネ」になお、電力会社がFIT電気を「環境に良いクリーンな電気」と宣伝するためには、そのFIT電気に対して新たに環境価値を付加しなおす必要があります。電力会社は、非化石証書やグリーン電力証書などの購入によって自社の電気に環境価値を付加することができます。
電力会社の選び方
電力小売り自由化によって、私たちは電力会社もしくはその料金プランを選べるようになりました。出費をなるべく抑えるため、1円でも安い電気料金プランを見つけて乗り換えたいと思うのは当然です。
一方で、原子力発電によって作られた電気はなるべく避けたいと思っている人も多いのではないでしょうか。脱原発はもちろん、地球温暖化防止のために二酸化炭素を排出しないクリーンな電気を選びたいと思う人もいることでしょう。
そのような人が注目するべきなのは電源構成です。電源構成とは、発電事業者がどのような発電方法を用いているかを示したものです。
FIT電気も、元はといえば再生可能エネルギーによって発電された電気なので、環境に優しいことに変わりはありません。FIT電気または再生可能エネルギーの割合が大きいほど、クリーンな発電をしているというわけです。
電源構成の開示は義務づけられていませんが、電源構成を明らかにして自然エネルギーか否かをはっきりと明示している電力会社もあります。FIT電気とは別に再生可能エネルギーを提供している事業者は、電源構成を明記している場合が多いといえます。
電源構成の表記について
一例として、ENEOSでんきの電源構成を見てみましょう。FIT電気と再生可能エネルギーが別々に表記されていることが分かります。
出典:ENEOSでんき「当社の電源構成:CO₂排出係数(期間:2016/4/1-2017/3/31)」
電源構成を開示している電力会社
電源構成を開示している電力会社の一例を以下に掲載します。環境に優しい電力会社を選びたいと思っている方はぜひチェックしてみてください。
Looopでんき
- 電源構成:FIT電気24.48%、再エネ1.27%、その他74.25%(2018年度実績)
- 供給エリア:離島を除く全国
- 電気料金プラン特徴:基本料金0円、従量料金が1段階のシンプルなプラン。電気使用量が多いほどお得になりやすい。
自然電力のでんき
- 電源構成:FIT電気32%、電力卸取引所61%、その他(相対取引)7%(2018年度実績)
- 供給エリア:沖縄、離島を除く全国
- 電気料金プラン特徴:市場連動型の電気料金プラン。非化石証書によるCO2ゼロの電気料金プランを提供。従量料金が1段階で、電気使用量が多いほどお得になりやすい。
市場連動型電気料金プランに関する注意 2020年末から続く大寒波の影響で、日本卸電力取引所(JEPX)における電気の価格が高騰しています。この影響を受けて、料金体系に市場連動制を導入している電気料金プランでは、一時的に電気料金が高くなっている可能性があります。
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