非化石証書って何?わかりやすく解説
「非化石証書」についてわかりやすくまとめたページです。非化石証書の生まれた背景や役割について調べました。非化石証書を利用したCO2排出ゼロプランもご紹介しています。環境にやさしい電気料金プランをお探しの方はぜひご覧ください。
非化石証書とは?
非化石証書とは、非化石電源で発電された電気の非化石価値を切り離して証書にしたものです。
これだけだとよくわからないですね。詳しく解説します。
「非化石電源」とは、天然ガスや石炭、石油などの化石燃料を使わずに電気を作る発電方法のことです。あてはまるのは、太陽光・風力・水力・地熱・バイオマスなどの再生可能エネルギーと、原子力発電です。
化石電源は、地球温暖化の原因となるCO2(二酸化炭素)を排出するのに対して、非化石電源はCO2を排出しません。
そのため、非化石電源には電気そのものとしての価値(例えば、部屋を明るくできる、家電を動かせる・・など)に加えて、「CO2を排出しない」という価値があります。これが「非化石価値」です。
- 化石電源 = 電気としての価値のみ
- 非化石電源 = 電気としての価値 + 非化石価値
ただし、非化石電源の持つ非化石価値はもちろん目に見えません。これを証書というかたちで非化石電源から切り離して、可視化したものが非化石証書です。
非化石価値のいろいろ非化石証書以外にも、グリーン電力証書やJ-クレジットなど、非化石価値を可視化するシステムがあります。
非化石証書の種類
非化石証書には、以下のとおり3つの種類があります。
FIT非化石証書(再エネ指定) |
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再生可能エネルギーのうち、FIT制度を通じて買い取られたFIT電気の非化石価値を証書にしたもの (例:太陽光、風力、小水力、 バイオマス、地熱など) |
非FIT非化石証書(再エネ指定) |
FIT電気でない再生可能エネルギーの非化石価値を証書にしたもの (例:大型水力など) |
非FIT非化石証書(指定なし) |
FIT電気でない、非化石電源の非化石価値を証書にしたもの (例:原子力など) |
①と②については、CO2排出をしない非化石価値があるうえに、環境負担が少ないという環境価値があります。ただし、③についてはCO2排出がないため非化石価値はあるものの、発電に伴って使用済み核燃料を生み出すなど、CO2以外の環境負担が大きくなります。そのため、「CO2を排出しない、かつ環境負担の少ない電気」を使いたいと思ったら、非化石証書の中でも「再エネ指定」のものが使用されている電気を選ぶ必要があります。
非化石証書は電力会社によって売買される
非化石電源から作られた非化石証書は、電力会社によって売買されます。
非化石証書の売買開始は2018年5月です。小売電気事業者や発電事業者が電気を売買する会員制の日本卸電力取引所(JEPX)に非化石価値取引市場が開設され、ここで上記①のFIT非化石証書(再エネ指定)の売買が開始されました。
市場で取引ができるのは会員企業のみであり、証書を購入できるのは小売電気事業者だけです。なお、非化石証書も電気と同じく、「1kWhあたりxx円」という単位で売買されます。
上記②と③は2020年から新たに取引対象に加わった非化石証書で、非化石価値取引市場で売買が行われるほか、電力会社同士が相対取引をすることも可能となっています。
非化石証書を購入するとどうなる?
電力小売事業者はこの非化石証書の購入を通じて、自社の電気が排出するCO2の量を減らすことができます。
仮に、供給する電気のすべてを火力などの化石電源でまかなっている電力会社があったとします。この会社が、供給電力量の30%に相当する非化石証書を購入した場合、この会社の30%の電気はCO2を排出しない電気、つまり非化石価値のある電気としてみなされることになります。さらに、100%に相当する非化石証書を購入すれば、その電力会社が供給する電気は実質的に100%CO2フリーということになるわけです。
もちろん、再エネなどの非化石価値がある電気を購入するのなら、電力会社はわざわざ非化石証書を購入する必要はありません。ただし、再エネの発電量は化石電源のそれと比べてまだ少なく、化石電源よりもコストが高いというのが現状です。ですから、CO2排出を減らすためといっても、電力会社は単純に再エネの電気購入を増やすことばかりできないのです。電力会社が持続的・安定的に電気の供給を行いながらCO2排出を減らすには、再エネなどの非化石電源の購入と非化石証書の購入をうまく組み合わせて行うことが重要です。
※ 東京電力・スタンダードS/L」と比較して、kwhあたりの単価において1円以上の差がないことを指します。なお、東京ガスの電気プランは燃料費調整の上限を設けていません。これにより、燃料費の高騰によって上限を設けている他社の料金プランと比べ、高くなる場合があります。
FIT電気には非化石価値がない
ここまでで見てきたとおり、再エネには非化石価値があります。ただし注意したいのがFIT電気のケースです。
今日、多くの電力会社は、非化石電源である再生可能エネルギーをFIT制度(固定価格買い取り制度)を通じて購入しています。というのも、FIT制度を利用する方が、しないよりも安価で再エネを購入できるためです。
FIT制度とは、再エネで発電した電気を、電力会社が一定価格によって一定期間買い取ることを国が約束している制度です。この制度において、電力会社が電気を買い取るための費用の一部は我々消費者が毎月の電気代と一緒に支払っている再生可能エネルギー発電促進賦課金(再エネ賦課金)からまかなわれています。これによって、電力会社は化石電源と比べてまだコストの高い再エネを購入しやすくなります。そして、再エネ発電を行う発電事業者は購入が安定することによって再エネ発電事業の持続的な普及運営がしやすくなる、というしくみです。
FIT制度で購入された再エネはFIT電気と呼ばれます。FIT電気ももちろん、電気そのものとしての価値と非化石価値の両方を有しています。しかし、FIT電気が持っている非化石価値を電力会社が使うことはできません。FIT電気の非化石価値は、再エネ賦課金を負担した我々消費者に分配されます。そのため、電力会社が購入するFIT電気には、電気そのものとしての価値しか残りません。つまり、火力などの化石電源と同じようにみなされるということです。
- FIT電気 = 電気としての価値(⇒電力会社へ)+ 非化石価値(⇒消費者へ)
これは、消費者のお金で買った電気で、電力会社が「エコで環境にやさしい」などというイメージを享受すべきでないという考えによります。そのため、電力会社が販売するFIT電気は、再エネで作られた電気でありながら、非化石価値がない電気として扱われます。
もちろん、電力会社がFIT電気を使うことは再エネを増やすためには不可欠の取り組みです。しかし、電力会社自身が本当にCO2を減らす努力をするためには、FIT電気の供給だけでは不十分、ということになります。したがって、電力会社が自社のFIT電気を「CO2を排出しない電気」として売り出すためには、非化石証書の購入をする必要があります。
非化石証書で消費者負担の軽減・さらなる再エネの普及へ
非化石証書の売上は、私たち消費者の再エネ賦課金に対する負担軽減と、再エネの安定的な普及に役立てられます。
これまで、FIT制度による再エネの購入の一部は私たち消費者負担によってまかなわれていました。このしくみにおいて、再エネによる発電が増えて、電力会社が再エネをFITで買えば買うほど、消費者の負担が大きくなることが問題でした。実際に、再エネ賦課金の価格は年々上昇を続けています。非化石証書が作られた目的のひとつはこの問題の解決です。
非化石証書の販売によって得られた費用は、私たちが支払っている再エネ賦課金と同じように使われます。つまり、再エネを固定価格で購入するための費用として使われるというわけです。今後、非化石証書を購入する電力会社が増えていけば、私たちの再エネ賦課金の負担が軽減されていくでしょう。
そして、消費者の負担を軽減できることはもちろんですが、電力会社が非化石証書を購入して、FITに使える費用が増加することによって、再エネの安定的な供給・開発が可能になることが予想されます。
非化石証書を利用した環境にやさしい電気料金プラン
売買が開始された2018年から、非化石証書を利用してCO2排出の少ない電気料金プラン、さらにはCO2排出ゼロの電気料金プランを提供している電力会社が徐々に増えてきています。また、最近では菅首相が「2050年までに温室効果ガスの排出量をゼロにする」と所信表明演説で発表しました。これを受けて電力会社によるCO2排出ゼロの電気料金プラン提供はより活発になると予想されます。
日常の生活の中で、CO2の排出を減らしたい、環境への負担を減らしたい、と考えている方は、非化石証書(※)を使用したプランに電気を切り替えてみてはいかがでしょうか。
非化石証書を使用している電気料金プランの例を次にご紹介します。
※環境負担を減らすなら、「再エネ指定」を 「非化石証書の種類」で確認したとおり、非化石証書には再エネ指定のものと、指定なしのものがあります。指定なしの中には原子力で発電された電気の非化石価値が含まれています。原子力はCO2排出はないものの、核廃棄物による別の環境負担を生むため、環境にやさしい電気を使いたいと思ったら、「再エネ指定」のある非化石証書を使用している電気料金プランを選びましょう。
東京ガスの「さすてな電気」
東京ガスは、再エネ指定の非化石証書の購入を通じて、実質再エネ100%の電気料金プラン「さすてな電気」を提供しています。さすてな電気が利用できるのは、東京電力の供給エリアです。
使う電気のすべてが実質的に再生可能エネルギーになるにも関わらず、電気料金は一般的なプラン、東京電力「スタンダードS/L」と同等(※1)に設定されています。つまり、東京電力・スタンダードS/Lからさすてな電気に切り替えると、料金は今のまま、電気使用によるCO2排出量をゼロにすることができます(※2)。
※1 東京電力・スタンダードS/L」と比較して、kwhあたりの単価において1円以上の差がないことを指します。なお、東京ガスの電気プランは燃料費調整の上限を設けていません。これにより、燃料費の高騰によって上限を設けている他社の料金プランと比べ、高くなる場合があります。
※2 ・さすてな電気の主な電源はLNG火力です。
・再エネ指定の非化石証書の使用により、CO2排出量が実質ゼロになることを意味します。
・非化石証書市場の状況によってはCO2排出量実質ゼロにならない場合があります。
なお、さすてな電気の新規契約1件につき、1本の植林が行われます。