暖房費の比較:灯油 vs エアコン

寒い日には欠かせない暖房器具ですが、暖房費は家庭におけるエネルギー消費の4分の1を占める侮れない存在です。ここでは灯油を熱源とする石油ファンヒーターと、エアコンのコストパフォーマンスを比較・検証してみます。
- エアコンのランニングコストは、年々省エネ化がすすんでいるため、年式や型による部分も大きいといえます。
- 石油ファンヒーターのランニングコストは、灯油の値段に左右されがちです。
- 石油ファンヒーターとエアコン、どちらがおトクかだけでなく、メリット・デメリットを見て考えましょう。
エアコンのランニングコスト

空気を汚さずに部屋全体を温めてくれるエアコン暖房は寒い冬には大活躍してくれるアイテムですが、長時間使用するものなので、やはり気になるのは電気代です。家族の集まる居間用に使用する場合はなおさらです。
一般家庭用のエアコンは、年々省エネ化がすすんでいるため、消費電力も機種や型によって大きく違います。同じ機種でも運転開始時と、セーブモード(省エネモード)では消費電力量に非常に大きな開きがありますし、製造年によってもまた、省エネ度が進化していることが多いと言えます。このため、「標準的」な消費電力量を計算するのはそう容易なことではありません。
そこでよくエアコンの消費電力量を比較する際に用いられるのが「暖房期間消費電力量」です。通常、エアコンの仕様書に記載されています。暖房期間消費電力量は、以下の様な条件で算出されています(ただし、メーカーによって条件が多少異なる場合があります)。
期間 | 5.5カ月(10月28日~4月14日) |
---|---|
設定温度 | 20℃(外気は東京を基準とする) |
時間 | 18時間(6時~24時)/ 日 |
住宅 | 平均的な木造住宅(南向き) |
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暖房期間消費電力量は、エアコンの機種やその省エネ度、製造年度などによって大きく異なり、同じ機種でも最新型の方がより省エネ度が高い傾向にあります。
たとえば一般家庭でよく使用されている暖房能力4.2kWタイプ(10~15畳用)の機種の平均暖房期間消費電力量を見ると、2008年冬期に販売された省エネ型エアコンでは1090kWhだったのが、2010年の冬期に販売された省エネ型エアコンの平均暖房期間消費電力量は990kWhと1000kWhの大台を下回り、2014年冬期には939kWhと、950kWhを切るなるなど、年々下がってきています。
15~23畳用の大型エアコンになると削減kWh数はさらに大きく、2008年冬期に1822kWhであった平均暖房期間消費電力量は、2015年冬期には1500kWh台を切って1488kWhにまで下がっています。(経済産業省「省エネ性能カタログ」参照)。
省エネ型エアコンとは?エアコンがどれくらい省エネ型であるかを示す指標として、「通年エネルギー消費効率(APF)」という指標が採用されています。APFは、1年を通してある一定条件のもとにエアコンを運転したときの消費電力1kW当たりの冷房・暖房能力を表わすもので、 (冷房期間中および暖房期間中に発揮した能力の総和)÷ (冷房期間中および暖房期間中の消費電力の総和)で算出されます。数値が高いものほど省エネ性が高いエアコンと言えます。現在販売されている省エネ型エアコンのAPFは5~6前後のものが多いようです。
エアコン暖房にかかるおおよその電気代はしたがって、この暖房期間消費電力量に電力量単価を掛けると算出できます。
2.8kWタイプ | 4.2kWタイプ | 6.7kWタイプ | |
---|---|---|---|
暖房期間の電力消費量 | 608kWh | 976kWh | 1574kWh |
年間電気代 | 15,753.28円 | 25,288.16円 | 40,782.34円 |
1カ月当たり | 2,864.23円 | 4,597.85円 | 7,414.97円 |
1日当たり | 93.21円 | 149.63円 | 241.32円 |
※ 電力量単価は東京電力の従量電灯B(第二段階料金)25.91円/kWhで計算。
※※ 暖房期間消費電力量は省エネ性能カタログ2011年冬期にある平均消費電力を使用。
暖房期間消費電力量は、年間の暖房費を算出するには有効です。しかし、これをもとに1カ月、1日当たりのコストを計算するのは、とりわけ石油ファンヒーターと比較する場合には、適切とは言いがたい面があります。というのも、「暖房期間」は10月末から4月中旬までの5.5カ月間と長期にわたるため、真冬のエアコン暖房使用と、秋あるいは春先の温度調整的なエアコン暖房使用とでは消費電力も大きく異なってくるためです。実際の真冬のエアコン暖房代は上記の数値よりかなり多めに、秋や春先のエアコン代はかなり少なめになると考えられます。
このため、冬期のエアコン暖房コストを推算するには、エアコンの消費電力量から行ったほうがより実際のコストに近いと数値が得られると言えます。
エアコンの仕様書には通常、消費電力が最大時と最小時とともに記載されています。上記モデルに近似値の機種から1時間当たりの電気代を計算すると以下のようになります。
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2.8kWタイプ | 4.2kWタイプ | 6.7kWタイプ | |
---|---|---|---|
消費電力 | 635(135~1485)W | 900(105~1980)W | 1780(45~2825)W |
1時間当たりの電気代 | 16.45(3.50~38.48)円 | 23.32(2.72~51.30)円 | 46.12(1.17~73.20)円 |
※ 電力量単価は東京電力の従量電灯B(第二段階料金)25.91円/kWhで計算。
エアコンの消費電力量は上記のように、室温を一気に設定温度にまで上げる暖房開始時(最大時)と、室温が設定温度まで上がった後、この室温を保つためのセーブモード(最小時)とでは、十~数十倍の大きな差があります。エアコンはつけっぱなしにしておいたほうが電気代が安上がりになると言う説があるのはこのためです。
エアコンつけっぱなしは本当におトク? エアコンの消費電力は暖房開始時だから、後はつけっぱなしにしておいたほうが反っておトク、という説がよく聞かれます。その真偽に関しては賛否両論あります。確かに暖房開始時の電力消費量は多いのですが、その後も室温を保つために、エアコンは運転モードに時々切り替わります。注意しなければならないのは、冬場は外気との温度差が大きいため、エアコンが下がりかけた室温を上げるため、運転モードに切り替わるサイクルも早いということです。したがって、長時間不在の時や、使用してない部屋までを常時エアコン暖房することが、果たして電気代の節約につながるかどうかは、意見の別れるところです。在宅時と不在時、暖房する部屋の大きさやエアコンの運転コストを把握して総合的に判断していくのが賢明かと思われます。

石油ファンヒーターのランニングコスト
快適な室温を保つエアコンとは異なり、パワフルな暖房力が期待できる石油ファンヒーターは、灯油さえ用意すれば暖を取れる便利な暖房機器です。いろいろなメーカーから様々な種類の機種が出ていますが、エアコンと同程度の部屋を暖めることができる機種を取り上げ、そのエネルギー消費をみると、おおよそ以下のようなものになります。
種類 | 木造建て | コンクリ造 | 暖房出力 | 電力消費量 (燃焼時) |
灯油消費量 強燃焼時/弱燃焼時 |
---|---|---|---|---|---|
小型 | 6~7畳 | 9畳 | 3.60~1.02kW | 21 / 20W | 0.350リットル/h 0.099リットル/h |
中型 | 9畳 | 12畳 | 4.25~1.02kW | 22 / 20W | 0.413リットル/h 0.099リットル/h |
大型 | 15畳 | 20畳 | 5.25~1.41kW | 25 / 23W | 0.510リットル/h 0.137リットル/h |
15~20畳の暖房に対応する石油ファンヒーターのランニングコストを例にとって説明しましょう。

まず消費電力量ですが、点火時に320~390W程度の電力を消費しますが、これは短時間ですみますので。その後の電力消費量は中間値をとって24Wとすると、1時間に0.62円となります(東京電力の従量電灯Bの第二段階料金の料金単価25.91円/kWhで計算した場合)。したがって、石油ファンヒーターの電気代に関しては、点火時の消費電力を入れても、わずかであることが分かります(ただし、メーカーによっては消費電力がこれよりもかなり高くなっているものもあります)。
つぎに石油ファンヒーターの燃料である灯油にかかるコストを計算します。上記機種の場合、弱燃焼時で1時間当たり約0.137リットル、強燃焼時で約0.51リットルの灯油が必要となります。灯油価格は常に変動しているため、経済産業省の最新データによる65円/リットルで計算すると1時間に弱燃焼時で8.91円、強燃焼時で33.15円となり、過去3年間の平均価格(約85円/リットル)で計算すると11.65円、43.35円となります。
大中小それぞれの型の石油ファンヒーターにかかる1時間当たりの電気代および灯油コストを計算すると以下のようになります。
期間 | 小型 | 中型 | 大型 |
---|---|---|---|
電気代力※ | 0.54円 / 0.52円 | 0.57円 / 0.52円 | 0.65円 / 0.60円 |
灯油コスト※※ | 22.75円 / 6.44円 | 26.85円 / 6.44円 | 33.15円 / 8.91円 |
最終コスト | 23.29円 / 6.96円 | 27.42円 / 6.96円 | 33.80円 / 9.51円 |
※ 電力量単価は東京電力の従量電灯B(第二段階料金)25.91円/kWhで計算。
※※ 灯油価格は経済産業省の最新データによる65円/㍑で計算。
これらの石油ファンヒーターをエアコンと同じ基準で使用すると、1日のコストは小型で419.22~179.28円、中型で493.56~125.28円、大型で608.40~171.18円、月にすると小型で12,576.60~5,378.40円、中型で14,806.80~3,758.40円、大型で18.252~5,135.40円と、かなりの額になります。
ただ、実際には18時間連続で石油ファンヒーターをつけることはそんなに無いのではないでしょうか?安全面から考えても石油ファンヒーターの使用時間は真冬でもエアコンのように長くはないでしょう。それに、そもそも石油ファンヒーターはこまめな換気を必要とするため、エアコンのような連続使用に適した暖房器具とは言えません。
使用期間に関しても、寒冷地をのぞいて、石油ファンヒーターを多用するのは真冬の3カ月程度でしょう。このため、石油ファンヒーターを冬に使用した場合の1カ月のコストは、1日12時間使用したとしても月に8,384 / 2,506円~12,168 / 3,424円程度、シーズン当たり25,152 / 7,518円~36,504 / 10,272円と考えて良いでしょう。
灯油とエアコン、どちらがおトクか?
それでは、灯油とエアコンの暖房費は、どちらがおトクなのでしょうか?
エアコンと石油ファンヒーターの暖房費は、外気温や使用時間および使用期間、灯油価格などによってかなり上下するため、安易に比較するのは厳しいといえます。
エアコンの暖房期間消費電力量は、すでに述べたように、10月末から4月中旬までの5.5カ月にわたり、1日18時間連続運転したことを想定して計算された数値です。
なので、これを日割りして石油ファンヒーターの1時間当たりのコストと比較することは難しいですね。
しかも、エアコンは立ち上がり時に消費する電力消費量が非常に高く、室温維持のセーブモード時は非常に低いため、単純に18時間で割っても石油ファンヒーターと比較出来ないのです。
1時間当たりのコストは灯油価格によってはほぼ互角の様相を見せますが、常に上下するため、決定的な判断材料とするのは危険でしょう。
一方の石油ファンヒーターは、冬期に集中的に使用することが多い暖房器具であり、連続使用にも適していません。そして、そのランニングコストは、常に灯油価格の動きに左右されています。
エアコンと石油ファンヒーターの暖房費ですが、同じ時間だけ使う事を想定すると、エアコンの方が安くなります。ただ、石油ファンヒーターは連続使用をしない事を考えると、コスト面ではそれほど差がなくなりそうです。
なお、コスト面以外でも、選ぶ際に考慮すべきメリット、デメリットがあります。表にまとめてみました。エアコンと石油ファンヒーター、暖房費だけにこだわらず、それぞれの特徴を把握した上で、最適の暖房方法を選択しましょう。
種類 | メリット | デメリット |
---|---|---|
エアコン |
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石油ファン ヒーター |
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