対物超過修理費用特約とは?
対物超過修理費用特約はダイレクト型保険ではオプション特約のため迷う方が多いと思います。こちらの記事では対物賠償金を超えた損害をカバーする超過修理費用特約の基本と、加入のメリットについて解説します。
対物超過修理費用特約とは?
対物超過修理費用特約は自動車保険の見積もりをしていると「対物賠償保険」の項目で必ず出てくる特約ですが、 名前が長くとっつきにくいため、詳しいことは不明のまま見積もりを進めている方もいらっしゃるかもしれません。
対物超過修理費用特約は事故の相手の財物(モノ)を壊してしまった際に支払わなければいけない「対物賠償金」とセットで支払われます。 「車を壊してしまった賠償金」に追加して、対物賠償金額では足りない修理費用を約50万円まで支払うことができる特約です。
対物賠償金と過失割合
特約の細かいことをお伝えする前に、そもそも「対物賠償」とはどのような場合賠償責任が発生するのか、過失割合とは、 賠償金額はいくらになるのかという点について確認します。
まず一般的な「賠償」に関しては民法709条(不法行為)で定義されています。 故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う
民法709条(不法行為)
過失割合とは?
交通事故の場合は必ずしもどちらかが完全に加害者で被害者ということではなく、 お互いに過失があることがほとんどです。このお互いの過失を割合で定めたのが「過失割合」というものです。
信号がない交差点で、左折で進入したAさんと、その向かい側から右折で進入したあなたが衝突した場合。
あなたの過失7割 Aさんの過失3割となります。
このように、事故原因や状況に応じて、どちらがどれだけ悪かったか(過失があったか)という割合に応じて過失割合=賠償割合が決まります。この場合ですとあなたはAさんが被った損害のうち7割賠償する責任を負います。一方のAさんはあなたが被った損害のうち3割を賠償する責任を負います。
対物賠償金額はいくらになるのか?
交通事故により賠償責任が発生することはわかりましたが、賠償を負うことになった場合、賠償金額として請求される金額はいくらになるでしょうか。被害者の言い値になるのでしょうか?
結論
あなたが対物賠償で法律上の賠償責任を負うのは相手の自動車の「時価額」までとなります。
それはなぜ?
事故にあった時点で被害者が被っている資産損害は「時価」という考え方が基本になるためです。 たとえ過去にその自動車を高額で入手していたとしても、事故後の修理に時価額以上の費用がかかったとしても、 それらの費用は事故時点での損失ではないため、賠償金に加算されません。 つまり「時価」以上は法律上あなたに支払い義務はありませんので、 保険会社の「対物賠償保険」で支払われるのは時価までとなります。
過失割合はどう関係する?
事故の状況からあなたの過失割合が7割だった場合は、時価の7割があなたが法律上負う賠償金額になります。
対物賠償保険で支払われる金額は?
保険会社は過失割合も加味してあなたが法律上負う賠償金額を保険金として支払います。 対物賠償保険の金額を「無制限」で設定していた場合、法律上の賠償責任の範囲であればもちろん無制限で支払いますが、 いくら「無制限」であっても法律上の賠償責任金額の範囲を超えて支払うことはありません。
信号がない交差点で、左折で進入したAさんと、その向かい側から右折で進入したあなたが衝突した場合。
あなたの過失7割 Aさんの過失3割となります。
Aさんの損害時価額50万円だった場合
あなたの 対物賠償責任金額は35万円となります。( Aさんの損害時価額50万×過失割合7割)
事故発生から対物賠償保険のカバーまで
- 賠償責任発生:事故を起こして相手に損害を与えた場合に賠償責任が発生する
- 対物賠償:事故により相手の財物(自動車など)に与えた損害への賠償
- 過失割合:事故の状況に応じて過失割合が決まり、割合に応じた賠償責任を負う
- 対物賠償金額:対物賠償金は事故時点での時価額
- 保険カバー:対物賠償金は自動車保険の対物賠償保険で補償
ポイント!時価額以上の損害は法律上賠償責任を負わない=対物賠償保険でも補償されない
対物賠償の理屈と感情
これまで見てきたように対物賠償金の理屈は「時価」までなのですが、「被害にあった側は修理代が時価を超えている。」もしくは「車を買い替える必要がある」にもかかわらず、 事故の相手方から「時価までしか支払われない(賠償されない)」ということに納得できる人は多くありません。 事故後の経済損失について泣き寝入りしたくないと、被害者が加害者に弁償を求めてトラブルになることがあります。
対物超過修理費用特約のポイントはこの相手方の不満を和らげるところあります。
対物賠償で法律上の賠償責任を負うのは過失割合を加味した自動車の「時価額」。 しかし修理費が時価を超えることもあり、時価までの賠償に納得できる被害者は少ない。
対物超過費用特約には被害者の納得を助ける役割がある。
保険金を受け取れる条件と保険金額
対物賠償を支払う場合で、相手自動車が時価額を超える修理が発生したときの補償可能です。 保険金額はほぼすべての保険会社が50万円としています。チューリッヒ保険のみ「50万円」と「無制限」という選択肢があります。
対物超過修理費用特約なし | 対物超過修理費用特約あり | ||
---|---|---|---|
【ケース1】 修理費用 150万 |
時価額50万円 | 対物賠償保険より 35万円を相手へ賠償 |
|
時価額超え 100万円 |
賠償責任なし | 特約適用 100万円 ↓ 過失割合70万円 ↓ 支払い限度額 50万円を相手へ追加補償 |
|
【ケース2】 修理費用 500万円 |
時価額450万円 | 対物賠償保険より 315万円を相手へ賠償 |
|
時価額超え 50万円 |
賠償責任なし | 特約適用 50万円 ↓ 過失割合35万円 ↓ 35万円を相手へ追加補償 |
保険の対象とならない事故
対物超過費用特約は下記の場合では保険金は支払われません。下記は主な事項ですが細かい内容については各社の保険契約を確認してみてください。
- 地震、噴火、津波、台風、洪水、高潮などの自然災害によって生じた損害
- わざと。保険契約者、記名保険者等の故意によって生じた損害
- 身内の損害
- 賠償責任を負っていない損害
- 事故の翌日から6か月を超えた修理費用
対物超過修理費用特約は必要か?
自分は法律上の賠償責任を負わないのに、それ以上の補償を事故の相手方にする必要はあるのでしょうか。代理店型保険会社およびソニー損保は対物超過修理費用特約は自動付帯ですが、その他のダイレクト型保険会社ではオプションの特約です。ここからは対物超過修理費用特約の加入を判断できるような情報を説明していきます。
保険料:相場は500円程度
対物超過修理費用特約の保険料を、あるダイレクト型自動車保険で見積もりをしてみました。38歳10等級で付帯しない場合は約24,000円。付帯した場合は24,500円でした。 見積もり条件は契約者でもちろん変わりますが、この結果から一般的に車両保険のように数万円の保険料インパクトがある特約でないことがわかります。そのため500円で50万円の補償なら「いならない」と思うのか、 「あってもいいかな」と思えるか。ということが判断のポイントになります。
事故:円満解決の助けになる
先ほど対物賠償の理屈と感情でも説明した通り、「時価額」という概念は普通に生活している限り一般的ではありませんので、事故にあってからいきなり時価という考え方を知り、賠償金が思ったより少ないと納得できない被害者は多いと考えられます。 そのうえ火に油を注ぐように保険会社からは「時価額以上の支払いができない」ことを主張されて、相手によっては示談が遅れることがあります。 このような場合、多少でも時価額以上の支払いをして被害者の負担を軽減することができれば示談交渉が進みやすくなる可能性があります。
事故:相手方へのプラスアルファの償いが自分の精神負担を和らげる
たとえばあなたが信号待ちの車への後方からの追突事故するという、完全にあなたの過失10割で事故を起こしてしまった場合など加害者になってしまうと事故の解決までつらい日々を過ごすことになります。そんな時に相手方の車の修理など、賠償金を超えてできる限り弁償できるところまで負担して、相手方の経済負担を減らすことができると、自分の精神的負担も和らげることができるという側面があります。
まとめ:対物超過特約をおすすめする方
支払い義務のない相手の補償への特約ですので、絶対に必要という特約ではありませんが、特に下記に当てはまる方には付帯をおすすめします。
事故の相手方とトラブルにならないよう交渉で使える材料を持っておきたい。
自分の過失で相手に被害を与えた場合は、可能な限り弁償したい。
おすすめの自動車保険会社
保険会社 | 特徴 |
---|---|
おすすめ度 満足度ランキング 1位(セレクトラ調べ)
| |
おすすめ度 楽天ポイントが貯まる・使える
|