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使わない電力代を私たちが?データセンターの「空押さえ」による電気代高騰のリスクとは

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使わない電力代を私たちが?データセンターの「空押さえ」による電気代高騰のリスクとは

「これ何だろう?AIに聞いてみよう」と、日常生活にAIがあることが普通になってきている今日この頃。

AIの発展が及ぼす影響については至るところで様々な議論が行われていますが、実はそのうちのひとつに、私たちの将来の電気代をさらに押し上げるリスクがあります。

その原因は、我々の便利なデジタル生活を支える「データセンター」です。AIの進化に伴って増えるこれらの施設では、「電力の空抑え」によって、使われない電気設備のために一般消費者がコストを負担させられるリスクが浮上しています。

一体どういうことなのか、記事でわかりやすく解説します。

使われない電力のために、私たちが料金を払う?「空押さえ」の実態

想像してみてください。人気レストランで、ある団体客が「30人分」の席と料理を予約したとします。店側は急いで食材を仕入れ、スタッフを増員して準備を整えます。しかし、当日になって現れたのは、たったの20人。あるいは、予約そのものがキャンセルされる――。レストランにとっては大赤字ですね。しかし、この損失を「他のお客さんの料理の値段を上げる」ことで埋め合わせようとしたらどうでしょうか?

これと似たような事態が、電力業界とデータセンターの間で起きるかもしれないのです。

東京電力ホールディングス管内、特に国内最大のデータセンター集積地である千葉県の印西エリアでは、データセンター事業者が事前に申し込んだ電力契約容量の約3割が、実際には使われない計画へと下方修正されていることが明らかになりました。これを業界では「空押さえ」と呼んでいます。

電力会社は、データセンターからの「これだけの電力が欲しい」という申し込みに基づいて、巨額の資金を投じて変電所や送電網を整備します。東京電力は2000億円超、関西電力も1500億円規模の投資を計画していますが、肝心のデータセンター側が計画通りに電力を使わなければ、これらの設備は過剰投資となってしまいます。

なぜ私たちの電気代に跳ね返るのか?

電力会社が送配電網の整備に投じたコストは、「託送料金」という形で回収されます。これは電気を送るための「送料」のようなもので、私たちが毎月支払う電気代の約3割を占めています。つまり、データセンターのために巨額の投資をして、それが無駄になったとしても、そのコストの一部は巡り巡って、一般家庭や企業の電気代に転嫁される恐れがあるのです。

なぜ「空押さえ」は起きるのか?データセンターの焦り

そもそも、なぜデータセンター事業者は、使いもしない電力を確保しようとするのでしょうか。そこには、デジタル社会特有の「スピード競争」と「インフラ整備の遅れ」というジレンマがあります。

データセンターの建設自体は数年で完了しますが、それを動かすための大規模な送電網を整備するには、変電所の新設などで10年近い歳月がかかることもあります。印西エリアのような人気のある場所では、電力確保はまさに「早い者勝ち」。事業者は土地を取得する前から、「とりあえず電力を確保しておかないと、顧客(サーバーを置く企業)に逃げられる」という恐怖に駆られ、多めの電力枠を予約せざるを得ないのです。

さらに、データセンターは「箱(建物)」を先に作り、あとからアマゾンやグーグルのようなクラウド事業者を誘致するビジネスモデルが一般的です。もし顧客が見つからなければ、確保した電力は不要になります。松尾豪・エネルギー経済社会研究所代表が指摘するように、投資決定が先行し、販売先があとから決まるという構造が、このミスマッチを助長しているのです。

AIブームが拍車をかける電力争奪戦

この状況をさらに複雑にしているのが、生成AIの爆発的な普及です。AIの学習や推論には膨大な計算能力が必要であり、将来的な電力需要は右肩上がりに急増しています。電力広域的運営推進機関の試算によれば、データセンター等の消費電力は今後10年で劇的に増加する見通しです。

「将来足りなくなるかもしれない」という不安が、さらなる過剰な電力確保を招き、それが結果としてインフラ投資の負担を膨らませる――。まさに負のスパイラルが形成されつつあります。

「電気を運ぶ」から「データを運ぶ」へ。起死回生の解決策

このままでは、過剰な設備投資と電気代の上昇は避けられません。そこで注目されているのが、発想を根本から変える「ワット・ビット連携」という新たなアプローチです。

これまでの常識では、データセンターは通信の遅延(ラグ)を防ぐため、ユーザーが多い東京や大阪などの大都市近郊に作るのが鉄則でした。電気が足りなければ、遠くの発電所から電気(ワット)を都市まで運んでくるしかありませんでした。

しかし、東京電力パワーグリッドとNTTが連携して進めている構想は逆です。「電気を運ぶコストが高いなら、データ(ビット)の方を電気が余っている場所に運べばいい」というものです。

カギを握る光技術「IOWN(アイオン)」

「データを遠くに運ぶと遅延が発生する」という課題を解決するのが、NTTの次世代通信基盤「IOWN」です。この技術は、電気信号ではなく「光」のままデータを伝送するため、従来の100分の1の低消費電力で、圧倒的な低遅延を実現します。これを使えば、再生可能エネルギーが豊富な地方にデータセンターを設置しても、東京にあるのと変わらない感覚で利用できる可能性があります。

地方分散がもたらすメリットと、立ちはだかる壁

もしデータセンターを地方に分散できれば、都市部の電力逼迫は解消され、過剰な送電網投資も抑えられます。さらに、災害時のリスク分散や地方創生にもつながるため、このワット・ビット連携は2025年に「石破首相肝煎りの施策」として取り上げられ、今も政府が継続して後押ししているところです。

しかし、現実はそう簡単ではありません。データセンターを利用する外資系巨大IT企業(ハイパースケーラー)にとって、地方への分散は必ずしも経済合理的ではないからです。彼らは、海底ケーブルの陸揚げ地や、インターネットの相互接続点(IX)が集まる都心エリアを好みます。「つながりやすさ」こそが価値だからです。

いくら技術的に可能でも、ビジネスとしてのメリットがなければ企業は動きません。政府がどのようなインセンティブを提示し、通信インフラの「形」自体を変えていけるかが、私たちの電気代の未来を左右することになりそうです。

電力網の整備とデジタル化の波、そして私たちの家計。これらは複雑に絡み合っています。単なる「インフラの話」として片付けるのではなく、私たちの生活に直結するコストの問題として、今後の動向を注視していく必要があります。

 

 

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