フランスの電力事情:電力自由化の流れを解説

電力自由化の先進国であるフランスの電力事情をご紹介します。フランス電力事情・電気料金事情はどうなっているのか、ちらで詳しくチェック。
- フランスは原子力大国!
- フランスの電気料金はEU内でも安い国に入ります。
目次:
原子力大国フランスのエネルギー政策
フランスは、多くの欧米諸国と同様に、第1次オイルショックを機に輸入石油への依存を軽減させるため、国内資源の開発、省エネルギーの促進、電力供給源の多角化を中心としたエネルギー政策を実施してきました。
その中でも、特にフランス政府が力を注いできたエネルギー政策が原子力の開発でした。
1980年代以降に原子力発電が増加するとともに、フランスにおける電力自給率は著しく改善され、現在では50%以上を達成。
2014年現在、フランスでは58基6,313万kWの原子力発電設備が運転を行っており、国内における発電電力量の75%を占めるに至っています。
しかし、福島原発事故後の2012年にフランス政権を握った社会党オランド大統領は、「原子力からのエネルギー移行」を選挙公約に掲げて勝利。
前政権からの再エネ開発と省エネ推進に加え、電源多様化の観点から原子力発電比率の低減と、国内最古のフェッセンハイム原子力発電所の閉鎖などが公約に盛り込まれていました。
そして2015年7月22日、フランス国民議会(下院)において以下のような目標を定めた「緑の成長に向けたエネルギー移行法案」がついに可決成立しています。
- 1. 原子力発電シェアを現在の75%から2025年までに50%まで削減する
- 2. 原子力発電設備を現状レベルの6320万kWに制限する
- 3. 再生可能エネルギーのシェアを2030年までに32%まで引き上げる
- 4. 温室効果ガスの排出量を2030年までに1990年比で40%削減する
- 5. 化石燃料の消費量を2030年までに2012年比で30%削減する
- 6. フランスの最終エネルギー消費量を2050年までに半減させる
ただし、フェッセンハイム原子力発電所を2016年までに閉鎖する件については、閉鎖プラント名の具体的な特定が回避されています。
そのため、発電事業者であるフランス電力(EDF)が、同国初の欧州加圧水型炉(EPR)として建設中のフラマンビル3号機(FL3)の完成時に、原発発電設備の容量を現状レベルに抑えるために閉鎖するプラントを特定しなければならないとみられます。
フランスでは2007年に電力全面自由化
フランスでは1946年に「電力・ガス事業国有化法」で設立された国有企業の旧フランス電力公社(現フランス電力EDF)が、長い間にわたり発送配一貫体制の下で全国的に電力供給を行っていました。
しかし、1990年代にEU諸国で電力小売市場の自由化が始まると、フランスでも1999年2月より実質的に電力自由化がスタート。
フランスの自由化は段階的に進すすめられ、2007年7月には一般家庭向けの電力小売も規制が廃止されて電力全面自由化となりました。
電力自由化に伴い、EDFは欧州各国への進出を図るべく2004年に「EDF・GDF株式会社化法」によって株式会社化され、一部の株式が一般公開されています。
1999年2月 | 「EU電力自由化」指令により実質的にフランスで電力小売の自由化がスタート フランス電力自由化第1弾(年間消費電力量1億kWh以上の需要家約200件、全体の20%が対象) |
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2000年2月 | フランス政府が改めて「電力自由化法」を成立 |
2000年5月 | フランス電力自由化第2弾(年間消費電力量1,600万kWh以上の需要家約1,600件、全体の30%が対象) |
2003年2月 | フランス電力自由化第3弾(年間消費電力量700万kWh以上の需要家約3,300件、全体の37%が対象) |
2004年7月 | フランス電力自由化第4弾(産業用・業務用需要家が対象) |
2007年7月 | フランス電力自由化第5弾(家庭用需要家が対象)、フランスで電力全面自由化へ |
自由化後のフランス電力事情
電源構成
電力自由化を経て、現在フランスの電力会社の発電事業にはEDFの他に、CNR(仏GDFスエズ社系)、SNET(ドイツE.ON社系)などが存在します。
しかし、依然としてEDFが国内発電電力量の約80%を占めており、2013年末時点で国内に発電設備9,818万kW(水力2,003万kW、火力1,503万kW、原子力6,313万kW)を所有しています。
水力 | 火力 | 風力 | 太陽光 | 原子力 |
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10,8% | 6,2% | 76,4% | 3,8% | 1,4% |
出典:セレクトラ
電力供給
現在、フランスで電力供給事業を行っている事業者には、EDFや地方配電事業者(小売供給部門)など電力自由化以前からの既存事業者が約160社、そして自由化で新たに参入した新規事業者が約20社があります。
フランスでは、電力自由化以前はEDFと地方配電事業者がそれぞれの管轄地域内において独占的に需要家へ電力供給を行っていました。
しかし2000年の「電力自由化法」によってフランスで電力小売が段階的に自由化されると、EDFなど既存事業者から新規事業者にスイッチングして電力供給を受ける需要家が増えてきています。
2013年末時点でのフランスでの新規事業者による電力販売シェアは、産業用・業務用需要家向けで22.2%、家庭用需要家向けで8.9%です。
フランス電力自由化で生まれたエネルギー比較サイト「セレクトラ」電力自由化ですべての人が自由に電力会社を選択できるようになったフランスですが、一方でどのように最適な電力会社や料金プランを選べばよいのか?という新たな問題が発生。セレクトラはそんなニーズに応えるべくフランスで生まれた電力・ガス比較サイトで、2014年だけでもフランス国内で約10万件のよりお得な電気・ガス契約の成立に利用されています。
電気料金
出典:ユーロスタット(Eurostat)
フランスの電気料金は、産業用、家庭用ともに1990年代中頃から値下がりしたのち、2000年頃から横ばいの状態が続いています。
ただし、2002年より「電力公共サービス拠出制度(CSPE)」の課徴金が増加傾向にあることから、若干値上がりの傾向にあります。
一方、フランスでは原子力発電比率が高いので、その他の欧州諸国のような2000年代前半以降の燃料費高騰の影響は受けていません。
欧州委員会統計局ユーロスタット(Eurostat)のデータによると、2013年下半期におけるフランスの平均的な電気料金は以下の通りで、EUで最も安い部類に入ります。
家庭用電気料金 | 税込 | 0.1589ユーロ/kWh |
---|---|---|
税抜 | 0.1099ユーロ/kWh | |
産業用電気料金(年間消費電力量2,400万kWh) | 税込 | 0.0819ユーロ/kWh |
税抜 | 0.056ユーロ/kWh |