3月11日東日本大震災から15年。AIで発電増は必須!日本のエネルギー政策の振り返りと今後の課題は?
東日本大震災から15年が経過しました。あの日を転機に、日本のエネルギー政策は大きな方向転換を余儀なくされました。
あれから15年、世界情勢の変化や生成AIの爆発的普及を受け、日本のエネルギー戦略は「省エネ・縮小」から「増産・変革」へと、再び大きな転換点を迎えています。
2011年までの歩みと、これから私たちが向き合う「第7次エネルギー基本計画」の核心を解説します。
これから耳にする機会が増えるであろう「新しい言葉」についても紹介します。
日本のエネルギーは「エネルギー基本計画」で決まる - 最新の第7次計画の中身
日本が今後、どのような電源(電気の作り方)を使い、どのように電気代や脱炭素に向き合うか。その羅針盤となるのが「エネルギー基本計画」です。
2025年に閣議決定された「第7次エネルギー基本計画」は、これまでの「電力需要は減る」という前提を覆し、AI社会の到来を見据えた「供給力の増強」へ舵を切った歴史的な転換点となりました。
エネルギー基本計画は「誰が、どう決める」のか?
この計画は、日本のエネルギー政策の根幹を成すものであり、エネルギー政策基本法に基づき、主に以下のプロセスを経て策定されます。
- 総合資源エネルギー調査会:経済産業大臣の諮問機関であり、大学教授、業界団体、消費者代表などの有識者で構成される「基本政策分科会」で、具体的な数値目標や戦略が議論されます。
- パブリックコメント:議論の過程で国民から広く意見を募集する期間が設けられます。
- 閣議決定:最終的には政府全体の方針として「閣議決定」され、国としての正式な目標となります。
少なくとも3年ごとに検討を加え、必要に応じて変更することとされており、常に世界情勢や新技術の動向(今回の生成AIなど)を反映して更新されます。
最新の計画はどこで確認できる?
エネルギー基本計画の全文や要旨は、経済産業省 資源エネルギー庁の公式サイトで誰でも確認することができます。
「エネルギー基本計画」とは?
日本原子力文化財団の提供する「エネ百科」では、初心者向けの動画解説があります。
電力供給の見通しが「減少」から「増加」へ反転 - 生成AIの影響
これまでの第6次計画では、人口減少や徹底した省エネにより、電力需要は「横ばい、あるいは減少する」と予測されていました。しかし、第7次計画ではこれが「増加」へと大きく舵を切りました。
では、なぜ、電力が「増加」という転換したのでしょうか?
主な理由は以下の通りです。
- 生成AIの爆発的進化:学習や推論を行うデータセンターは、膨大な電力を消費します。サーバーの稼働だけでなく、冷却システムにも大量の電気が必要です。
- 国内製造業の復活:日本の自立性の観点から、半導体などの重要物資を国内生産する動き(工場建設)が加速しています。
- GX(グリーントランスフォーメーション):自動車のEV化や製造工程の電化が進むことで、化石燃料から「電気」へのシフトが起きているためです。
- ペロブスカイト太陽電池:日本発の技術で、薄く、軽く、曲がります。ビルの壁面や駅の屋根など、これまで設置困難だった場所が発電所に変わります。
- 洋上風力発電:日本の広い排他的経済水域(EEZ)を活用し、海の上に巨大な風車を並べる計画が進んでいます。
- 地熱発電の実装:地下から取り出した「蒸気」でタービンを回す発電方法です。
- 北海道電力:泊(1〜3号機)
- 東北電力:東通(1号機)、女川(1〜2号機)
- 東京電力:柏崎刈羽(1〜7号機)
- 日本原子力発電:東海第二、敦賀(2号機)
- 中部電力:浜岡(3〜5号機)
- 北陸電力:志賀(1・2号機)
- 当時の太陽光シェア:わずか0.3%程度
- エネルギー自給率:20.2%(2010年)
第6次計画の時点では、生成AIがここまで進化するとは想定されていなかったと言えるでしょう。
これを受けて、電力量の予想は、第6次から現行の第7次とで、以下のように大きく変わりました。
電力需要の予測値の変化
・第6次(2030年度目標):約9,340億kWh(0.93兆kWh)
・第7次(2040年度目標):約1.1兆〜1.2兆kWh
わずか10年強の間に、総発電量を約2〜3割も上積みしなければならない計算になります。
減る予定が、増えた訳ですから、期間も短く、なかなか難しい目標設定と言えるでしょう。
電源構成はどうなる?「脱炭素」と「安定供給」の両立
増え続ける需要をどう賄うのか。第7次計画が示す「電源構成の3本柱」を見ていきましょう。
① 再生可能エネルギー:2040年度に40〜50%を目指す「主力電源」へ
再エネを単なる補助ではなく、日本の「主力」に据える方針です。
これ以上、どのようにして再生可能エネルギーを増やしていくのでしょうか?基本計画によれば、以下のような案が提示されています。
ペロブスカイト太陽電池は、開発、実装が急ピッチですすめられています。
曲がる「ペロブスカイト太陽電池」なぜ注目? 様々な場所へ設置可能にhttps://t.co/TinMCKeCQF
— 日本経済新聞 電子版(日経電子版) (@nikkei) October 4, 2025
② 原子力:20%程度の維持 -「迅速な再稼働」が求められる
原発の比率を20%程度とする目標は維持されており、第6次計画と同様です。目標達成には、安全確保を大前提とした迅速な再稼働と、既存の原子炉を最新型に建て替えるの議論が不可欠です。
【2026年3月11日現在の稼働状況】
現在、全国で約15基の原子炉が稼働しています。震災後、最も厳しい安全基準をクリアしたものが順次復帰していますが、依然として北海道(泊)や新潟(柏崎刈羽)など、再稼働に向けた手続きや地元同意を待つプラントも多く残っています。
現在停止中の原子炉は以下の通りです。
③ 火力発電:供給力を維持しつつ「脱炭素」を目指す
火力は現在も日本の屋台骨ですが、2040年には30〜40%程度まで下げつつ、中身を「ゼロエミッション化」していきます。水素・アンモニアを混ぜて燃やす技術や、排出されたCO2を回収・貯留する「CCS」の実装を急いでいます。
CCSってなに?
CCSは、“Carbon dioxide Capture and Storage”の略語で、二酸化炭素(CO2)を分離・回収し、地中などに貯留する技術のことです。
引用元ː産総研マガジン > CCS/CCUS とは?
さらにこの、CO2を化学製品や燃料などに変換して利用する(カーボンリサイクル)する考えをCCUSと呼びます。CCUSには、まだ課題がありますが、研究・開発がすすめられています。
【振り返り】東日本大震災の2011年まで、日本のエネルギー政策は?
震災前(2010年度)、日本の原子力の発電シェアは25.1%に達していました。これに火力を加えた「原発+火力」で全発電の約8割以上を賄う、安定した構造に見えていました。
第7次計画では、原子力のシェアを30年度までに20%程度にする目標ですから、東日本大震災の前のレベルに戻す形になることが分かります。
2010年と現在の違い
しかし、震災により原発が停止。2013〜2014年度には「稼働ゼロ」の期間を経験しました。その結果、火力依存度は87.8%まで跳ね上がり、燃料代支払いのための国富流出と自給率の急落(6.4%)という、先進国でも最低水準のリスクに直面したのです。
2011年以降の大きな動き - 燃料費調整額と再エネ賦課金で家計への負担
話をもう少し身近な、家計の視点から考えてみましょう。
震災以降、私たちの電気代には2つの大きな「加算」が加わりました。
1. 燃料費調整額:火力依存度が高まったため、中東情勢や円安による燃料価格高騰が、ダイレクトに家庭の電気代を直撃するようになりました。
2. 再エネ賦課金:2012年7月から徴収開始。再エネを普及させるためのコストを全員で負担する仕組みです。導入当初(0.22円/kWh)から単価は上昇傾向にあり、燃料費調整額と相まって家計に重くのしかかっています。
国のエネルギー政策と並行し、国民の家計をどう守っているか、という点にも注目していく必要があります。
第7次計画で明らかになった新しい方向性 - これから耳にする機会が増える単語
冒頭で述べた通り、電気の需要はますます増えるという新たな認識のもとに、明らかにされた今後の日本のエネルギーの方向性。
これに関連して、今後ニュースなどで耳にする機会が増えるであろうキーワードを整理します。
・GX(グリーントランスフォーメーション):脱炭素を経済成長の機会と捉え、社会構造を変革すること。
・排出量取引制度:企業ごとにCO2排出枠を決め、余剰分や不足分を売買する市場。2026年度から本格稼働。
・化石燃料賦課金:CO2を出す燃料の輸入業者に対し、排出量に応じた負担を求める仕組み。2028年度導入予定。
・次世代革新炉:より安全性が高く、効率的な新しいタイプの原子炉開発。
ペロブスカイト太陽電池という言葉も、より頻繁に聞くことになるでしょう。
編集部の視点
震災から15年、私たちは「安全性」「経済性」「脱炭素」という難しい選択を迫られています。
|原発の再稼働に関しても、長期的に考えて冷静な目で判断する必要があるでしょう。
特に最近は、中東リスクや円安が続く中、「外部環境に左右されないエネルギー自立」をいかに達成するかに特に注目です。
新しい技術の開発も興味深い点です。CCSや、核融合炉など、今後よく注目して追っていきたい話題です。