誰も教えてくれない6Gの真実:通信の更なる高速化が実現するまで

5Gの進化、そして6Gの幕開け
ここ数年、5Gは私たちのコミュニケーションのあり方を大きく変えてきました。高速通信が可能になり、IoT(モノのインターネット)や自動運転車など、さまざまな革新技術を支えています。しかし、まだ5Gが完全に普及していないにもかかわらず、世間の注目は「Beyond 5G(5Gのその先)」へと移り始めています。
6Gとは?なぜ今話題になっているのか?
日本では、2023年3月末時点で17万の5G基地局が展開され、2023年末には人口カバー率98%を達成しました。人口減少や過疎化問題などの社会課題をデジタルの力で解決する取り組み、「デジタル田園都市国家構想」のもと、5Gインフラ整備は国家レベルでで進められています。
国外でも中国や韓国を筆頭に、急速に5G展開が進んでいます。そんな中、「Beyond 5G(5Gのその先)」として注目を集めているのが「6G(第6世代移動通信システム)」です。
6Gは無線通信技術のさらなる飛躍を目指した技術革新です。その特徴として、5Gよりも遥かに高速な通信速度、ほぼゼロに近い通信遅延が実現できると言われています。
こうした通信の大幅な高速化により、人工知能(AI)や機械学の分野において、大規模データの利用がより自律的に可能となり、そのポテンシャルが最大化できると言われています。
6Gは医療、輸送、産業といったさまざまな分野に革新をもたらすと考えられており、高度な遠隔医療、自動運転車、さらには高度に自動化されたスマートファクトリー(スマート工場)の実現が期待されています。
6Gの開発を巡る世界の覇権争い
現在、世界各国で6Gの研究開発が進められています。
たとえば、マドリード・カルロス3世大学(UC3M)が主導するヨーロッパの「MultiXプロジェクト」は、6Gネットワークに革新的な多感覚認識システム「MultiX Perceived 6G-RAN(MP6R)」を統合することを目指しています。このプロジェクトは2027年6月まで続く予定で、医療や自動運転車への応用が期待されています。
また、米国では「6G開発導入の初期段階で北米主導で標準化すること」を目標に掲げ、「Next G Alliance」を2020年10月に発足しました。このプロジェクトには、Apple、Google、AT&T、Verizon、US Cellular、T-Mobile等の名だたる企業が参画しており、米国の国家戦略として6G開発が非常に重要な位置づけであることが伺えます。中国も国をあげて6G開発に取り組んでおり、米中を中心に、次世代通信技術の覇権を巡る世界競争はすでに始まっています。
KPMG UKの報告によると、全世界の6G技術の特許申請率は中国が最多で40.5%、米国が35.2%、そして日本は9%となっています。

引用:「6G:AQuantumLeap or aQuagmire for Global Connectivity?」 (KPMG UK, 2024年4月)
6Gはいつ利用可能になるのか?
6Gの商用化は2030年から2032年頃になると予想されています。
その一方で、野心的な目標を掲げる韓国では、2028年までに6Gネットワークを立ち上げる計画を発表しています。韓国政府はこのプロジェクトに約500億円を投資し、通信技術の先端を走り続ける意向を示しています。
6Gが直面する課題
6Gの実現向けて、ソフト面・ハード面さまざまな課題が存在します:
- 標準化:異なる機器やネットワーク間での互換性を確保するため、国際的な規格を策定する必要があります。
- 技術開発:AIとの統合や超高周波数帯域の利用など、新技術の研究が求められます。
- インフラ整備:既存の通信インフラを6Gに対応させるには、莫大なコストと時間が必要です。
- 規制:周波数割り当てやセキュリティ、プライバシー保護に関する新たなルールが求められます。
6G時代の到来にはまだ時間がかかりそうですが、その未来は確実に近づいています。AIが日常の一部になりつつある今、更なるテクノロジーの進化への期待が高まります。
この記事はセレクトラ・フランスの記事を翻訳・加筆しています。
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参考サイト一覧
- 「更なる5Gインフラ整備 推進に向けて」(総務省、2024年3月)
- 「5Gの整備状況」(総務省、2023年度末)
- 「デジタル田園都市国家構想とは」(内閣官房、2025年3月25日時点)
- 「6G:AQuantumLeap or aQuagmire for Global Connectivity? 」(KPMG UK, 2024年4月)
- 「European 5G scoreboard」(European 5G observatory, 2024年6月)