NetflixがFast.comを作った本当の理由|プロバイダとの帯域争い

Fast.comとは?
Fast.comはNetflixが開発したシンプルなインターネット速度テストサイトです。ネット通信速度をチェックする時に使ったことがある人も多いのではないでしょうか?筆者である私も、何度も使ったことがあるツールです。
他の速度測定サイトとの違いは?
セレクトラでも速度測定ツールを提供していますし、他にも、Speedtest by Ooklaなどネット速度測定ツールが存在します。どれも、単に通信速度をチェックするだけの便利ツールに見えますよね。
しかし、Netflixが提供するFast.comは、ただの便利アイテムとしての存在意義の他に、もう一つの別の狙いがあります。
背景にはNetflixとISP(プロバイダ)の帯域争いがある
コロナ禍で大幅に利用者が増えたNetflix。作品数や利用者も急激に増えました。それによって何が起こるかというと、ネット上のトラフィックのうち、Netflixが占める割合が増えるということです。
ただ、この事実はISP(インターネットプロバイダ)にとってはかなり不利です。1つのプロバイダで提供できるインターネットの通信帯域は限られていますので、できるだけ多くの契約者に、少しずつネットを利用してもらうのが一番利益になりやすいためです。
そこでどうするかというと、ISP(インターネットプロバイダ)がNetflixへの通信速度を意図的に制限しようという考えになるのです。
ただ、そうなると、Netflixとしては面白くありません。
そのため、あえて本当の通信速度をユーザー自身に計測してもらうことで、そういった制御(通信制限)ができない仕組みを作りました。
Fast.comの「本当の狙い」
Fast.comの狙いは、ユーザーが「Netflixを利用したときのリアルな速度」をユーザーに見せることです。Netflixのサーバーに接続して速度を測ることで、あくまでNetflix利用時の速度がピンポイントで分かるようになっています。
つまり、ネットフリックスは「遅い通信速度は、あなたの契約先のプロバイダの責任です。」と言いたい訳ですね。
Fast.comが変えたもの
Fast.comの登場によって、ユーザーが「自分がNetflixを利用する時のネット速度」が分かるようになりました。そうすることで、インターネットプロバイダがNetflixにだけ露骨に通信制御をするといったことがしづらくなります。
特定のサービスのトラフィックを制限するといった不公平な対応を防ぐ、一種の「社会的圧力ツール」として働くようになりました。
ネットの中立性(Net Neutrality)とFast.com
アメリカでは、2000年台の初頭から、ネットの中立性(英語で、Net Nerutrality)という概念が社会に浸透するようになりました。
ネットの中立性とは、、インターネット上の通信トラフィックは平等に取り扱われるべきであるという考え方のことです。
例えば、Yahoo!検索よりもGoogleで検索する時の方がネットが速い!なんてことがあったら、これは中立性がないということになります。
インターネットの中立性とは、インターネットの通信トラフィックは平等に取り扱われるべきであるという考え であり1、様々な経緯を経て現在のような大きな議論へと発展していった。
最近では、Netflixはもちろん、YouTubeなど動画コンテンツの増大により、トラフィックが急激に増加しインターネットプロバイダにはそれが大きな負担となりました。そこから、特定サービスの通信速度を規制するというアイデアへとつながりました。
しかし、それによってNetflixのトラフィックだけを意図的に制限されては、Netflixのビジネスモデルを守ることはできません。YouTubeも同じです。
Fast.comは、この考えに基づき、ユーザー自身にそういった差別の抑制をさせるということを可能にしたのです。