日本における再生可能エネルギーの割合は?
日常的に聞くよく聞く「再生可能エネルギー」。なんとなく環境にやさしいイメージはありますが、具体的にどのようななエネルギーを指すのでしょうか。日本では再エネ普及の遅れも指摘されていますが、国内の発電量のどのくらいを占め、欧米の先進国に比べて実際は進んでいるのでしょうか、遅れているのでしょうか。日本の取り組みと今後の課題をみていきましょう。
再生可能エネルギーとは
そもそも「再生可能エネルギー」とは何でしょうか。
エネルギー供給構造高度化法において、再生可能エネルギーは「太陽光、風力その他非化石エネルギー源(*)のうち、エネルギー源として永続的に利用することができると認められるものとして政令で定めるもの」と定義されています。
(*) 非化石エネルギー源とは、石炭や石油などの化石燃料を使わないで作ることのできるエネルギーのこと。再生可能エネルギーのほかに原子力エネルギーが含まれます。
具体的に、再生可能エネルギーとは、太陽光・風力・水力・地熱・太陽熱・大気中の熱その他の自然界に存する熱・バイオマスによって作ることのできるエネルギーを指しています。
太陽光や風は枯渇する心配のないエネルギーです。そのうえ、地球温暖化の原因となる温室効果ガスの排出や、環境への負荷がほぼありません。何度も繰り返し作ることができるため、再生可能エネルギー(再エネ)と呼ばれているのです。
再エネは、資源の少ない日本にとって国内で生産できる貴重なエネルギーです。そのため、再エネの利用を増やすことは、環境負荷の低減はもちろんですが、日本のエネルギー自給率を高めることにもつながります。
日本の再エネ割合の推移
では、日本で使われているエネルギーのうち、どの程度が再生可能エネルギーによってまかなわれているのでしょうか。
環境エネルギー政策研究所の調査結果を参考にしてみましょう。
2019年度、日本の発電量に占める再生可能エネルギーの割合は18.5%です。過去6年でこの割合は6%ほど増加していることがわかります。中でも太陽光発電の割合が1.9%から7.4%へと増加しており、再エネ割合全体の増加を牽引しています。
2014年 | 2015年 | 2016年 | 2017年 | 2018年 | 2019年 | |
---|---|---|---|---|---|---|
水力 | 8.0% | 8.6% | 7.6% | 7.6% | 7.8% | 7.4% |
バイオマス | 1.5% | 1.5% | 1.9% | 2.0% | 2.2% | 2.7% |
地熱 | 0.24% | 0.25% | 0.22% | 0.21% | 0.22% | 0.24% |
風力 | 0.47% | 0.50% | 0.54% | 0.61% | 0.69% | 0.76% |
太陽光 | 1.9% | 3.0% | 4.4% | 5.7% | 6.5% | 7.4% |
再エネ合計 | 12.1% | 13.8% | 14.7% | 16.4% | 17.4% | 18.5% |
火力 | 87.9% | 85.7% | 83.6% | 80.8% | 77.9% | 75.0% |
原子力 | 0.0% | 0.4% | 1.7% | 2.8% | 4.7% | 6.5% |
参考:環境NPO法人 環境エネルギー政策研究所「2019年(暦年)の自然エネルギー電力の割合(速報)」
再生可能エネルギーの割合が増えているのは良い傾向ではあるものの、化石エネルギー(火力発電)への依存度は高いままであることは明白です。
一方、エネルギーの安定供給と環境負荷の低減のために制定された「エネルギー供給構造高度化法」において、販売電力量の多い電力会社は2030年までに再エネの割合を22~24%以上にすることが義務付けられています。そのため、2030年に向けて日本の再エネ導入は引き続き拡大していくことが予想されます。また、最近では菅首相が2020年10月の所信表明にて「2050年までに温室効果ガスの排出をゼロとする」と述べたこともあり、再エネ促進の動きは今後より強まっていくでしょう。
※ 東京電力・スタンダードS/L」と比較して、kwhあたりの単価において1円以上の差がないことを指します。なお、東京ガスの電気プランは燃料費調整の上限を設けていません。これにより、燃料費の高騰によって上限を設けている他社の料金プランと比べ、高くなる場合があります。
世界と比べる日本の再エネ割合
日本の再生可能エネルギーの割合は、世界の現状と比べてみるとどのような位置づけになるのでしょうか。
欧州諸国および中国、日本の発電量に占める再エネの割合および発電方法の内訳は以下のとおりです。
国名 | 再エネ割合 |
---|---|
デンマーク | 83.9% |
オーストリア | 78.1% |
スウェーデン | 61.0% |
ポルトガル | 53.7% |
イタリア | 42.2% |
ドイツ | 40.2% |
イギリス | 38.2% |
スペイン | 37.1% |
フランス | 20.5% |
中国 | 27.4% |
日本 | 18.5% |
参考:環境NPO法人 環境エネルギー政策研究所「2019年(暦年)の自然エネルギー電力の割合(速報)」
参考:環境NPO法人 環境エネルギー政策研究所「2019年(暦年)の自然エネルギー電力の割合(速報)」
再エネの発電方法別内訳を見ると、再エネ割合の高いデンマーク、オーストリア、スウェーデンなどの国では、風力、水力による発電量が大きいことがわかります。
欧州諸国、そしてお隣の中国と比べてみて、日本の再生可能エネルギー利用割合はまだ少ないということがわかりました。では、将来的な導入見通しはどうでしょうか。
日本は2030年に再エネを国内発電量の22~24%に引き上げることが目標です。これに対し、ヨーロッパの主要国では、フランスで同じ2030年に40%、ドイツは2035年に60%をめざすなど将来目標でも日本を上回る高い水準を維持しています。この目標を見る限り、日本は今後10~20年は再エネ導入で世界のトップに立つのは難しそうです。
FITで増加する再エネ発電
現状は出遅れが目立つ日本ですが、再エネ発電比率は2010年で9.5%と国内の発電量の1割にも満たない程度でした。この10年で2倍近くに急増したわけです。なぜこんなに再エネ発電が急増しているのでしょうか。
2011年3月に起きた東京電力福島第一原発事故では、住民の避難や放射能による汚染など広範囲にわたって大きな被害が出ました。原発への不安から各地で原発の稼働が停止され、一時は原発の発電量が国内でゼロになりました。この発電量の落ち込みを補うために全国で火力発電所の稼働が増え、化石燃料への依存度は2010年の81.2%から2017年には87.4%まで増えました。しかし、化石燃料を燃やすことは温室効果ガスの排出を増やし、温暖化防止をめざす国際的な取り組みに反します。
一方、原発に代えて再エネ発電の普及を進めようと導入されたのが「固定価格買取制度(FIT制度)」です。FIT制度は再エネで発電した電気を、電力会社が決められた期間、一定の価格で買い取ることを国が保証することで、発電コストが割高な再エネ発電の普及を支えるのが狙いです。買取価格が見通せることで事業計画が立てやすくなり、「再生可能エネルギー特別措置法」(FIT法)が施行された2012年7月以降、再エネ発電事業に参入する事業者が急増しました。これに伴い、再エネ発電の設備容量も2012年以降ぐっと増加しています。
出典:資源エネルギー庁「2019—日本が抱えているエネルギー問題(前編)」
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再エネ普及のカギは
FIT制度の導入で再エネ発電が増加しましたが、割高な固定価格での買い取りは、電気料金における私たち消費者の負担を重くする原因となっています。電力会社が割高な固定価格で再エネを購入する際、その費用の一部を我々消費者が「再生可能エネルギー発電促進賦課金」という形で負担しています。2019年度の買取費用総額は全体で3.6兆円に上り、そのうち2.4兆円は消費者負担でした。再エネの普及が進むにつれ、この賦課金の単価も2012年度の1kWh当たり0.22円から、2019年度には2.98円へと年々増加しています。標準的な家庭で年間1万728円も電気料金を余分に支払う計算です。こうした消費者の負担を減らしながら普及を進めていくには、再エネの発電コストをさらに下げていく必要があります。
非化石証書の導入 消費者負担を軽減することを目的として、2018年から電力会社同士による非化石証書の取引が開始されました。非化石証書を購入する電力会社が増えることによって、消費者負担が少なくなっていくことが期待されています。
また、太陽光や風力発電は、発電量が天候に左右されることが多くなります。太陽光発電の場合は需要はなくても快晴なら発電量が増え、大量の電気が必要になっても夜間の発電量は増やせません。「再エネは安定的な電力供給に向かない」という批判の声に対し、需要と供給のバランスを日本全体で調節する広域の送電線網や、大容量の蓄電池の普及なども必要とされています。
※ 東京電力・スタンダードS/L」と比較して、kwhあたりの単価において1円以上の差がないことを指します。なお、東京ガスの電気プランは燃料費調整の上限を設けていません。これにより、燃料費の高騰によって上限を設けている他社の料金プランと比べ、高くなる場合があります。
まとめ:日本における再生可能エネルギーの割合は?
太陽光、風力など再生可能エネルギーを使った発電の普及が日本でも進んでいます。しかし、国内で使われる発電量全体に占める再エネの割合はまだ18.5%にすぎません。「脱炭素化」が進む欧米などに比べると遅れをとっているのが現状です。
日本は石油や天然ガスなどのエネルギー資源の大半を輸入に依存し、中東地域などの国際情勢に私たちの生活が左右される恐れがあります。それに対し、再エネは資源の少ない日本の貴重な天然資源の一つで、ほぼ無限に得ることができます。国産エネルギーである再エネの活用を進めることで、今は10%程度しかないエネルギー自給率を高めていくことにもなります。発電時に温室効果ガスを排出しない再エネは、国際的な問題になっている温暖化対策に貢献できるというメリットもあります。
日本ではまだ発電コストが高いなど改善すべき課題はありますが、温室効果ガスを排出する火力発電や事故の被害が大きい原子力発電に代わる主要な電源として、国民全体で普及を後押ししていきたいですね。最近では、再エネを積極的に利用した電気料金プラン、CO2排出量の少ない電気料金プランを提供している電力会社もどんどん増えています。このような電力会社を選んで契約することも、環境負荷低減への大切な一歩となります。
東京ガスの「さすてな電気」
例えば東京ガスは、非化石証書(再エネ指定)の利用を通じて、実質再エネ100%の「さすてな電気」を関東エリアで販売しています。
さすてな電気の価格は、一般的な料金プランのひとつである、東京電力・スタンダードS/Lプランと同等(※1)です。つまり、東京電力からさすてな電気に切り替える場合、電気代はそのままで、毎日使う電気を実質的に再エネ100%の電気に変えられる(※2)、ということになります。
※1 東京電力・スタンダードS/L」と比較して、kwhあたりの単価において1円以上の差がないことを指します。なお、東京ガスの電気プランは燃料費調整の上限を設けていません。これにより、燃料費の高騰によって上限を設けている他社の料金プランと比べ、高くなる場合があります。
※2 ・さすてな電気の主な電源はLNG火力です。
・再エネ指定の非化石証書の使用により、CO2排出量が実質ゼロになることを意味します。
・非化石証書市場の状況によってはCO2排出量実質ゼロにならない場合があります。