COP21、パリ協定とは?:温室効果ガス排出削減の国際的目標
ニュースなどで取り上げられるCOP21、パリ協定というワード。「環境問題にかかわる言葉みたいだけど、具体的な中身はよくわからない」という人も多いと思います。21回目のCOPを指すCOP21は温暖化対策を話し合う国際会議で、2015年にフランス・パリで開かれました。そこで合意された取り決めがパリ協定です。世界的な温暖化対策の転換点になったCOP21とパリ協定について説明します。
COPの意味
まず、COP21の「COP」とはどんな意味でしょうか。
COPは「Conference Of Parties」の頭文字をとった略称で、一般的に「締約国会議」という意味です。「締約国」とは、ある条約を結び、その条約を守ることに合意した国々や国際機関のことを言います。国連の人種差別撤廃条約や世界遺産条約など、締約国が180カ国以上に上るものもあります。
ある条約の締約国同士が集まって様々な課題を話し合う会議がCOPです。なかでも、COPの略称で最も親しまれているのは、国連気候変動枠組条約の締約国会議です。この条約は1992年にブラジルで開かれた地球サミットで採択され、1994年に発効しました。締約国として197の国や国際機関が参加しました。当時すでに深刻になっていた地球温暖化問題に対し、原因となる温室効果ガスの排出量を世界的に減らすのが目的です。条約は世界中の総排出量を2000年までに1990年の水準に戻すことを努力目標にスタートし、2000年以降の取り組みは締約国会議(COP)で議論していくことになりました。これ以降COPといえば、この条約の締約国会議を指すのが一般的になっています。
もともとCOPは「締約国会議」を意味する。現在では温室効果ガス排出削減を目指す「国連気候変動枠組み条約の締約国会議」を指すことが一般的
COPの歩み・COP21
1回目の国連気候変動枠組条約の締約国会議となるCOP1は条約の採択から3年後の1995年、ドイツ・ベルンで開かれました。その後は毎年開かれ、COP2、COP3……と何回目かを示す数字を後ろに付けて呼ばれています。COP3は1997年に日本の京都で開かれたので、「COP3」という言葉に覚えのある人も多いのではないでしょうか。この会議では、2020年までの削減目標を定めた京都議定書が締結されました。
京都議定書では、先進国と新興国・開発途上国を分け、先進国全体の2020年の温室効果ガス排出量を1990年より5%削減することを目標にしました。温室効果ガスの削減目標を初めて具体的な数値で表す画期的な取り決めでした。しかし、日本などの先進国だけが排出削減の義務を負い、中国やインドなどの新興国・開発途上国には削減義務が課されませんでした。当時すでに排出量が先進国を上回っていた新興国に削減義務が課されないことに不満をもつ国もありました。こうした不満から排出量の大きいアメリカが議定書に参加せず、世界全体の排出量を減らすという京都議定書の効力に疑問がもたれるようになりました。
京都議定書に代わる新たな枠組みづくりに向け、2011年のCOP17(南アフリカ・ダーバン)で作業部会が設けられました。温室効果ガスの排出削減をめぐっては、温暖化対策よりも経済成長を優先させたい開発途上国と、すでに経済成長を遂げて環境技術も進む先進国の利害がぶつかります。世界全体の排出量を減らすには、排出量の大きいアメリカや中国などの参加は不可欠です。こうした難しい条件を約4年にわたる交渉で乗り越え、2015年にフランス・パリで開かれたCOP21で採択されたのがパリ協定です。
パリ協定とは
パリ協定は採択翌年の2016年4月に、日本など175の国・地域が署名しました。このうち55か国以上が批准し、その国々の排出量の合計が世界の温室効果ガス総排出量の55%以上を占めることが発効の条件でした。2016年9月にはアメリカ、中国も参加し、予想よりも早い2016年11月に正式に発効しました。世界全体で排出削減に取り組む態勢をとれました。
協定は、以下の2つの目標を掲げています。
- 世界の平均気温を産業革命以前のプラス2度以下、さらにプラス1.5度まで抑える努力をする。
- できるだけ早く世界の温室効果ガス排出量を抑え、21世紀後半には排出量と、森林などによる吸収量のバランスをとる。
この2つの目標を達成するために、すべての締約国が2020年以降の削減目標や国内での実施状況を5年ごとに報告し、専門家の評価を受けることになります。世界全体での実施状況も2023年から5年ごとに見直すことになっています。
協定の最大の特徴は、先進国、新興国・開発途上国にかかわらず、すべての参加国に温室効果ガスの排出削減を義務づけた点です。すべての国に義務を課すことで不公平感をなくし、協定の実効性を高める効果が期待されています。
さらに、各国が自国の削減目標を自主的に決め、削減に取り組むことを認めた点です。京都議定書では、あらかじめ決められた排出削減目標が先進国だけに課され、公平性や実効性に疑問が出ました。パリ協定では各国の事情に合わせた取り組みを認めることで、各国の自主的な努力を促すのが狙いです。
パリ協定の課題
このように世界中の多くの国が参加して始まったパリ協定ですが、課題もあります。
そもそも、パリ協定が採択された2015年時点で各国から出された2030年の削減目標をたし合わせても、目標とする気温変動(プラス2度以下)の達成には不十分とみられていることです。「気候変動の影響を最小限に抑えるにはプラス2度では不十分。より低いプラス1.5度をめざすべきだ」と、専門家を中心に協定の目標をさらに厳しいものに見直すべきだという意見が広がっています。
また、2019年11月には、主要排出国であるアメリカのトランプ大統領が協定からの脱退を国連に通告しました。実際に脱退するかどうかは11月のアメリカ大統領選の結果しだいですが、協定がめざす温室効果ガスの排出削減や気温上昇の抑制には、アメリカなど主要排出国をはじめ各国の利害を調整し続ける必要があります。
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日本への影響
パリ協定によって、日本へはどんな影響があるのでしょうか。
日本はCOP21で、温室効果ガスの削減について「2030年度までに、2013年度に比べて26.0%少ない水準」という目標を掲げ、政府は2019年に目標達成に向けた長期戦略も決めています。また、COP21で削減義務が課される発展途上国には「官民合わせて年間約1.3兆円を支援する」と表明し、パリ協定を積極的に後押しする立場をとってきました。
一方、COP21では、日本国内で石炭火力発電所の建設計画が相次いでいることなどが批判されました。国際NGOからは、化石燃料や「古い考えの国」を意味する「化石賞」を贈られる不名誉な出来事もありました。「2013年度比で26.0%削減」という目標についても、一部に「低すぎる」などの批判の声があります。
こうした批判を受けながらも、日本は国際公約としてこの目標の達成を迫られることになりました。パリ協定をきっかけに、ガソリン車に代わるエコカーの普及、太陽光や風力などの再生可能エネルギーを活用した発電の促進などのほか、カーボン・オフセットなどの新たな取り組みも本格化することになりました。
伊勢志摩サミットでカーボン・オフセット
パリ協定を受けて、日本政府はCOP21閉幕後に初めて開かれたG7伊勢志摩サミット(2016年5月)にてカーボン・オフセットの実施を行いました。国際的には温暖化対策を進める日本の姿勢を、国内向けにはカーボン・オフセットを広く知ってもらう好機になりました。
この時のカーボン・オフセットは、サミット期間中に各国首脳や関係者の移動、宿泊、会議場などで排出される温室効果ガス約2万トンを、日本の別の場所での森林保全や植林などによる吸収量で埋め合わせるというものでした。日本政府の呼びかけで、自治体・企業計112社から計1万3千トン分の吸収量を証明する「クーポン」が寄せられ、政府調達分と合わせてオフセットを達成しました。協力した自治体・企業にはサミットのロゴや写真を利用できるメリットがあり、環境に配慮する姿勢をアピールすることができました。こうした取り組みが、日本でもカーボン・オフセットが盛んになる一つのきっかけになりました。
政府は2019年に決めた長期戦略で「2050年までに温室効果ガスの80%削減」を目標に掲げました。再生可能エネルギーを主力電源化し、日本が誇る脱炭素技術をさらに進めて環境と(経済)成長の好循環を実現するとしています。しかし、温暖化対策には国だけでなく、企業や自治体、個人などの社会全体でいかに意識を高めていくかがカギになります。
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まとめ:COP21、パリ協定とは?
COP21は、国連気候変動枠組条約の21回目の締約国会議(COP)のことです。1995年から毎年1回開かれる会議で、2015年にはフランス・パリで開かれました。この会議で、温暖化対策の枠組みを決めたパリ協定が採択され、2016年11月に正式に発効しました。
パリ協定では、世界の平均気温の上昇を産業革命以前のプラス2度以内、さらには1.5度に抑えることを共通の目標にしています。歴史上初めて、すべての締約国に温室効果ガスの削減が義務づけられたのが特徴です。一方で、自国の削減目標を自主的に決めるため、全ての国が目標を達成しても気温上昇をプラス2度以内に抑えることはできない、など実効性に疑問の声も挙がっています。
日本は温室効果ガスの排出を2013年度時点より26.0%削減することを表明しました。政府は世界でも高い脱炭素技術を生かして、環境(温暖化防止)と経済成長の両立を図っていく考えです。日本でも再生可能エネルギーやカーボン・オフセットなどの取り組みが徐々に普及しつつありますが、目標達成には、企業や個人といった様々なレベルで「脱炭素化」の意識をさらに高めていくことが必要です。
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