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「動物園からライオンが逃げた」「〇〇で有毒物質の雨が降る」——実際の災害で拡散し、人々を混乱させてきたデマの一例です。近年はAIで作られた本物そっくりの偽画像も加わり、見分けるのはますます難しくなっています。
大切なのは、「すぐに信じない・すぐに広げない・一次情報で確かめる」という3つの姿勢です。この記事では、実際の事例と具体的な確認テクニックを通じて、あわてず情報を見極めるコツを解説します。
- 災害時は「不安」「善意の拡散」「AI生成画像」が重なり、デマが広がりやすい。
- 2016年の熊本地震では「ライオン脱走」デマの投稿者が全国で初めて逮捕された。悪ふざけでも実害と罪に問われる。
- だまされない決め手は、総務省の「8つのチェック」+逆画像検索などの実践テク+公式の一次情報。
なぜ災害時にデマは増えるのか
デマが広がるのには、災害時ならではの理由があります。仕組みを知っておくだけでも、冷静になれます。
- 強い不安:先が見えない状況では、人は情報を鵜呑みにしやすくなります。「怖い」という感情が、確認より先に拡散を促してしまいます。
- 善意の拡散:「役に立ちたい」という善意から、未確認の情報をそのまま広めてしまうケースが少なくありません。悪意がなくても、結果的にデマの拡散に加担してしまいます。
- AI生成のフェイク:最近は、AIで作られた本物そっくりの偽画像・動画が簡単に作れるようになり、見分けが難しくなっています。
過去の災害で実際に起きたデマ
「自分はだまされない」と思っていても、実際のデマは巧妙で、多くの人が拡散してしまいました。過去の代表的な事例から学びましょう。
2016年 熊本地震「動物園からライオンが逃げた」
2016年の熊本地震(前震)の直後、神奈川県の男性が「地震のせいで動物園からライオンが逃げた」という虚偽の投稿を、歩くライオンの画像付きでXに投稿しました。この投稿は2万回以上リツイートされ、熊本市動植物園には100件を超える問い合わせが殺到。園は地震対応の最中に対応を強いられ、業務が妨げられました。
投稿した男性は、災害デマでは全国で初めて偽計業務妨害の疑いで逮捕されました(のちに起訴猶予・不起訴)。画像は海外で撮影された無関係のものでした。
この事例の教訓
「悪ふざけのつもり」でも、災害時のデマは現実の業務や救助を妨げ、罪に問われることがあります。そして、もっともらしい画像が添えられていても、それが本物とは限りません。
2024年 能登半島地震「偽の救助要請」
2024年の能登半島地震では、SNSで被災者を装った偽の救助要請が相次ぎました。実在しない住所を書き込んで救助を求めたり、東日本大震災の津波の写真を能登の被害だと偽って投稿したりするものです。こうした投稿により救助現場が混乱し、当時の首相もXで「実在しない住所や無関係の画像で救助を求めるような情報……こうした悪質な虚偽情報は決して許されません」と注意を呼びかけました。
この事例の教訓
善意で救助要請を拡散したくなりますが、偽の要請は本当に助けが必要な人への対応を遅らせます。写真の使い回しも定番の手口。「本当にこの災害の、この場所の情報か」を必ず疑いましょう。
だまされないための「8つのチェック」(総務省)
総務省は、情報を見極めるための確認ポイントを示しています。SNSで気になる情報を見かけたら、シェアする前にこの早見表で確かめましょう。
情報を見極める8つのチェックポイント(総務省)
| 区分 | チェック項目 | 見るポイント |
|---|---|---|
| 基本 | 情報源はあるか | 「どこ発の情報か」が示されているか。発信元が不明なものは要注意。 |
| 発信者は専門家か | その分野の専門家や公的機関による発信か。 | |
| ほかではどう言われているか | 複数の信頼できる媒体が同じことを報じているか。 | |
| 添付画像は本物か | 画像や動画が加工・AI生成・使い回しでないか。 | |
| 応用 | 「知り合い情報」で信じ込んでいないか | 身近な人経由でも、元をたどると不確かなことは多い。 |
| 表やグラフも疑う | もっともらしい図表でも、その根拠を確認する。 | |
| 発信の動機はないか | 不安を煽る・特定の方向へ誘導する意図がないか。 | |
| ファクトチェックを確認 | 公的機関やファクトチェック団体の検証結果を確認する。 |
すべてを完璧に確認する必要はありません。「情報源」「画像の真偽」「ほかの媒体」の3つだけでも意識すれば、多くのデマは見抜けます。
画像・動画のウソを見破る3つの実践テク
デマの多くは「もっともらしい画像・動画」で信じ込ませてきます。次の3つは、スマホだけですぐにできる確認方法です。
① 逆画像検索で「使い回し」を見破る
その画像がいつ・どこで撮られたものかを調べる方法です。過去の災害や別地域の写真の使い回しは、これで一発で分かることがあります。
- 気になる画像を長押しして保存、またはスクリーンショットを撮る。
- Google画像検索(images.google.com)や「Googleレンズ」を開き、その画像をアップロードする。
- 同じ画像がいつから・どのニュースで使われているかを確認する。今回の災害より前の日付で出てきたら、使い回しの疑いが濃厚です。
② AI生成画像を疑う
AIで作られた偽画像は精巧ですが、よく見ると不自然な点が残ることがあります。
- 手や指:指の本数がおかしい、関節が不自然に曲がっている。
- 文字:看板や標識の文字が崩れている、意味をなさない。
- 背景・光:背景がゆがむ、影の向きや反射が全体と合っていない。
「衝撃的なのに、発信元が個人アカウントだけ」という画像は、特に慎重に扱いましょう。
③ ファクトチェックサイトで確認する
拡散している情報が本当かどうかは、専門機関がすでに検証していることがあります。「日本ファクトチェックセンター(JFC)」などのファクトチェック機関や、報道各社の検証記事を確認しましょう。「(キーワード)+デマ」「(キーワード)+ファクトチェック」で検索するのも有効です。
特に警戒したいデマの「型」
災害時に出回るデマには、いくつか決まった「型」があります。型を知っておくと、あやしい情報にすぐ気づけます。
本物か判断できない情報は、シェアせずにいったん止めるのが最も安全です。あなたが広げなければ、そのデマはそこで止まります。「善意の拡散」がデマを大きくしてしまうことを覚えておきましょう。
困ったときは「一次情報」へ
不確かな情報に振り回されないためには、はじめから信頼できる発信元を見に行くのがいちばんです。次のような公式・一次情報を確認しましょう。
- 気象庁:地震・津波・気象に関する公式情報。
- 内閣府 防災情報・自治体/都道府県の公式サイト:避難所・給水・ライフラインなど地域の最新情報。
- NHKなどの報道機関:裏取りされたニュース。
- 各通信会社の公式サイト:通信の障害・復旧エリアの最新状況。
- 災害用伝言板(web171)・171:家族や知人の安否確認。
通信がつながらないときの備えや、各キャリアの状況については、こちらの記事もあわせてご覧ください。
まとめ|「すぐ信じない・すぐ広げない・確かめる」
災害時のデマは、あなたの不安や善意につけ込んで広がります。2016年の熊本地震の「ライオン脱走」デマや、能登半島地震の偽の救助要請のように、もっともらしい画像や切実な訴えほど、いったん立ち止まりましょう。情報源はあるか、画像は本物か(逆画像検索)、ほかの媒体はどう報じているか——この3点を確認するだけでも、多くのデマは見抜けます。
そして最後は、気象庁・自治体・報道・各社公式といった一次情報にあたること。正しく情報を見極める力は、家族や自分の身を守る大切な備えのひとつです。
災害時のデマ・情報の見極めに関するよくある質問
2016年の熊本地震では「動物園からライオンが逃げた」という虚偽の投稿が2万回以上拡散し、動植物園に問い合わせが殺到。投稿者は災害デマとして全国で初めて逮捕されました(のちに不起訴)。2024年の能登半島地震では、実在しない住所での偽の救助要請や、東日本大震災の津波写真の使い回しが問題になりました。
総務省は、(1)情報源はあるか (2)発信者は専門家か (3)ほかではどう言われているか (4)添付画像は本物か、といった確認ポイントを示しています。すべてを確認できなくても、「情報源」「画像の真偽」「ほかの媒体の報道」の3つを意識するだけで、多くのデマは見抜けます。
Google画像検索や「Googleレンズ」で逆画像検索をすると、その画像がいつ・どこで使われたものかを確認できます。今回の災害より前の日付で出てくれば使い回しの疑いが濃厚です。AI生成画像は、指の本数や文字の崩れ、背景・影の不自然さがヒントになります。判断に迷うときは、日本ファクトチェックセンター(JFC)などの検証結果も確認しましょう。
総務省は公式X(旧Twitter)で「科学的根拠のない言説などがSNSで流通するおそれがある」と注意喚起を行いました。あわせて、Google・LINEヤフー・Meta・X・TikTokといった主要プラットフォーム事業者に対し、利用規約などを踏まえた適切な対応を要請しました。
善意であっても、確認できていない情報を広めるのは危険です。特に救助要請は、偽物だと本当に助けが必要な人への対応を遅らせます。あなたが広げなければデマはそこで止まります。事実かどうか確認できるまでは、シェアせずにいったん止めておくのが最も安全です。