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- 契約電力50kW以上は高圧受電。原則として選択の余地はなく、設備の増設で自動的に到達する
- 高圧は電気の単価が安い一方、キュービクルの設置費用と毎年の保安管理費用が発生する
- 判断は「単価がいくら下がるか」ではなく「年間の削減額が保安管理費用を上回るか」で行う
- 設備が減って50kWを下回った場合は、低圧に戻す選択肢も検討できる
50kWが低圧と高圧の境界
電力の契約区分は契約電力の大きさで決まり、50kWが低圧と高圧の分かれ目です。契約電力が50kW未満なら低圧、50kW以上2,000kW未満なら高圧になります。
重要なのは、これは選択ではなく区分だということです。「設備は増やしたいが低圧のままでいたい」という選び方はできません。契約電力が50kW以上になれば、6,600Vでの高圧受電に移る必要があります。
50kWを超えるきっかけ
50kWは、業務用機器をまとめて導入すると意外に早く到達します。次のような場面がきっかけになります。
- 増床・改装によってフロア面積が広がった
- 業務用エアコンを増設した
- 厨房機器や業務用冷凍冷蔵設備を導入した
- EV充電器を設置した
- 生産設備や大型のコンプレッサーを追加した
- テナントが増えて共用部を含む使用量が増えた
設備計画の段階で契約電力の見込みを確認しておくと、キュービクルの設置スペースや費用を含めて検討できます。工事が終わってから高圧受電が必要だと判明すると、設置場所の確保に苦労することがあります。
低圧のままで済ませられないか
契約電力を50kW未満に抑えられれば低圧のままでいられます。使用する機器の総容量に対して、実際の同時使用を抑える運用が可能かどうかが判断材料です。
ただし無理に抑えようとして必要な設備を諦めるのは本末転倒でしょう。また低圧の動力プラン(低圧電力)は基本料金の単価が高めに設定されているため、使用量が大きい場合は低圧に留まること自体が割高になる可能性もあります。
高圧受電で新たに発生する負担
高圧に移ると、電気の単価が下がる代わりに次の3つの負担が発生します。いずれも低圧では電力会社が負担していたものを、需要家が引き受けることになります。
①キュービクル(高圧受電設備)の設置
6,600Vの電気を100Vや200Vに変圧する設備を、自分の敷地内に設置する必要があります。低圧では電柱上の変圧器で電力会社が変圧していた部分です。
初期費用は受電容量や設置条件によって大きく変わるため、一律の相場を示すのは適切ではありません。電気工事業者から自社の条件で見積もりを取るのが確実です。あわせて設置スペース、搬入経路、屋外設置か屋内設置かも検討事項になります。
またキュービクルの法定耐用年数は10〜15年で、安全に運用できるのは最長でも20年程度とされています。導入時の費用だけでなく、更新費用を含めた長期の計画で考える必要があります。設備の詳細はキュービクル(高圧受電設備)の解説をご覧ください。
②電気主任技術者の選任または外部委託
600Vを超える電圧で受電する設備は、電気事業法上の自家用電気工作物に該当します。設置者には次の義務が生じます。
- 保安規程を作成し、国に届け出ること
- 保安を監督する電気主任技術者を選任し、届け出ること
電気主任技術者は国家資格で、扱う設備の規模に応じて第一種・第二種・第三種に分かれます。自社で雇用できない場合は、外部委託承認制度を利用して電気保安法人などに保安管理業務を委託できます。中小規模の施設では外部委託が一般的です。
③毎年発生する保安管理費用
保安規程に基づいて月次点検と年次点検を実施する必要があります。これは初期費用ではなく毎年発生し続けるランニングコストで、切り替えの判断で見落とされやすい項目です。
年次点検では設備を停電させて実施するため、営業や生産を止める日程を毎年確保する必要もあります。24時間稼働の施設では、この停電時間の確保が実務上の課題になることがあります。
判断の考え方
切り替えの判断は、「電気代がいくら下がるか」から「保安管理費用を差し引いても残るか」という順序で考えます。
低圧と高圧の比較(判断の観点)
| 観点 | 低圧(50kW未満) | 高圧(50kW以上) |
|---|---|---|
| 電気の単価 | 高い | 安い |
| 単価の決まり方 | 公開された料金表どおり | 使用実績をもとに個別に提示 |
| 変圧設備 | 電力会社が設置・保守 | 需要家が設置・保守(キュービクル) |
| 初期費用 | ほぼ不要 | キュービクル設置費用が必要 |
| 毎年の費用 | なし | 保安管理費用(月次・年次点検) |
| 契約電力の決まり方 | 設備容量・主開閉器容量 | 実量制(過去12ヶ月の最大デマンド) |
| 停電を伴う点検 | 不要 | 年次点検で必要 |
削減額の見積もり方
高圧に移ったときの電気代は、実際に見積もりを取らないとわかりません。高圧の単価は公表されている標準料金がそのまま適用されるわけではなく、契約電力の規模や使用パターンをもとに電力会社が個別に提示するためです。この仕組みは高圧電力の基礎解説で詳しく説明しています。
つまり判断の手順は次のようになります。
- 想定される契約電力と使用量で、高圧の見積もりを複数社から取る
- 現在の低圧での年間電気代と比べて、年間削減額を出す
- 電気工事業者からキュービクル設置費用の見積もりを取る
- 電気保安法人から保安管理費用(年額)の見積もりを取る
- 年間削減額から保安管理費用を引き、残った金額で設置費用を何年で回収できるか計算する
2と4を混同しないことが重要です。年間削減額が大きく見えても、そこから毎年の保安管理費用を引くと手残りが小さくなることがあります。回収期間はキュービクルの耐用年数(10〜15年)の範囲内に収まるかどうかで評価しましょう。
切り替えが有利になりやすいケース
一般に、使用量が大きく、電気の使い方が平準化されている施設ほど高圧が有利になります。単価差が効く総量が大きく、なおかつ契約電力(デマンド)に対して実際の使用が詰まっているためです。
- 年間を通じて稼働時間が長い(工場・24時間稼働の施設)
- 使用量が季節に偏らない
- すでにキュービクルの設置スペースが確保できている
- 設備の更新時期と重なっており、工事をまとめられる
逆に稼働が季節や曜日に偏っている施設では、削減額が保安管理費用に見合わないこともあります。
高圧から低圧に戻すという選択肢
見落とされやすいのが逆方向の見直しです。設備の入れ替えや業務内容の変化で使用量が減り、契約電力が50kWを下回った状態が続いているなら、低圧に戻すことで保安管理費用そのものをなくせます。
照明のLED化、空調の高効率機への更新、生産ラインの縮小などが重なると、実際の最大デマンドが以前よりかなり低くなっている施設があります。キュービクルの更新時期が近い場合はとくに検討する価値があります。更新費用と保安管理費用の両方が不要になるためです。
判断には、直近12ヶ月の最大デマンドが安定して50kWを下回っているかの確認が必要です。低圧化の工事費用と、単価が上がることによる電気代の増加分を、削減できる保安管理費用と比べて評価します。
低圧から高圧への切り替えに関するよくある質問
はい。契約電力50kW以上は高圧受電の区分になり、選択の余地はありません。6,600Vで受電し、敷地内にキュービクル(高圧受電設備)を設置して変圧する必要があります。低圧のままでいたい場合は、契約電力を50kW未満に抑える運用が可能かを検討することになります。
1kWhあたりの単価は下がります。ただしキュービクルの設置費用と、毎年発生する保安管理費用が新たにかかるため、電気代の削減額から保安管理費用を差し引いた金額で判断する必要があります。使用量が大きく稼働が平準化されている施設ほど有利になります。
受電容量や設置条件(屋外か屋内か、搬入経路、既存設備との取り合い)によって大きく変わるため、一律の相場を示すことはできません。電気工事業者から自社の条件で見積もりを取ってください。あわせて法定耐用年数10〜15年後の更新費用も長期計画に含めておく必要があります。
雇用が難しい場合は、外部委託承認制度を利用して電気保安法人などに保安管理業務を委託できます。中小規模の施設では外部委託が一般的です。いずれの場合も保安規程の作成と届出、電気主任技術者の選任の届出は設置者の義務です。
できます。設備の更新や業務内容の変化で最大デマンドが安定して50kWを下回っているなら、低圧化によって保安管理費用そのものをなくせます。キュービクルの更新時期が近い場合はとくに検討の価値があります。低圧化の工事費用と単価上昇による電気代の増加を、削減できる保安管理費用と比べて判断してください。
直近12ヶ月の契約電力・最大需要電力・使用電力量を請求書から拾い出してください。この数字をもとに、電力会社からは高圧の見積もり、電気工事業者からはキュービクル設置費用、電気保安法人からは保安管理費用の年額を取得し、回収期間を計算します。