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- 力率は電力会社が送った電力のうち実際に使われた割合で、基本料金の計算式に直接入る
- 力率85%が基準。これを上回れば基本料金が割引、下回れば割増になる
- 力率が1ポイント上がるごとに、基本料金は約1%下がる
- 力率が下がる主な原因はモーターや変圧器などの誘導性負荷で、進相コンデンサで改善できる
力率とは?
力率とは、電源から送り出された電力(皮相電力)に対して、実際に消費された電力(有効電力)の割合のことです。百分率で表され、力率が85%であれば、送られた電力のうち85%が実際の仕事に使われたという意味になります。
有効電力・無効電力・皮相電力の関係
電気の世界では、送られた電力がすべて仕事に変換されるわけではありません。交流電力には次の3種類があります。
有効電力・無効電力・皮相電力
| 有効電力(kW) | 実際に仕事(動力・熱・光)に変換される電力。請求の対象になる |
|---|---|
| 無効電力(kvar) | 機器の磁界の生成に使われ、電源との間を往復するだけで仕事をしない電力 |
| 皮相電力(kVA) | 有効電力と無効電力を合わせた、送配電設備が実際に負担する電力 |
このうち力率 = 有効電力 ÷ 皮相電力です。無効電力が大きいほど力率は下がります。
電力会社の立場で考えるとわかりやすいでしょう。電力会社は皮相電力の分だけ設備を用意しなければならないのに、料金として請求できるのは有効電力の分だけです。力率が低い需要家は、電力会社に余分な設備負担を発生させていることになります。だからこそ力率に応じた割引・割増の制度が設けられているのです。
なぜ力率が下がるのか
力率を下げる原因は、誘導性負荷(コイルを使う機器)です。これらの機器は動作のために磁界を作る必要があり、その分の無効電力を消費します。
- モーター(ポンプ・送風機・コンプレッサー・エレベーター)
- 変圧器
- 蛍光灯やHIDランプの安定器
- アーク溶接機
- 誘導炉などの加熱設備
とくにモーターを軽い負荷で動かしている状態は力率が悪くなります。定格の半分以下でポンプや送風機を回し続けている設備がある場合は、力率の観点でも見直しの余地があります。
力率割引・割増の仕組み
高圧電力の基本料金は次の式で計算されます。
基本料金 = 基本料金単価 × 契約電力 ×(1.85 − 力率)
この「(1.85 − 力率)」の部分が力率による調整を表しています。力率を小数で当てはめると、次のようになります。
力率と基本料金の係数
| 力率 | 係数(1.85 − 力率) | 基本料金への影響 |
|---|---|---|
| 95% | 0.90 | 10%の割引 |
| 90% | 0.95 | 5%の割引 |
| 85%(基準) | 1.00 | 割引も割増もなし |
| 80% | 1.05 | 5%の割増 |
| 75% | 1.10 | 10%の割増 |
表からわかるとおり、力率が1ポイント改善するごとに基本料金は約1%下がります。「力率割引は5%」と説明されることがありますが、これは85%から90%へ5ポイント改善した場合を指した表現です。実際には連続的に効くため、1ポイントの改善でも金額に反映されます。
この力率割引の制度は高圧電力に限ったものではなく、低圧電力(動力プラン)にも同じ考え方で適用されています。
力率改善でどれだけ安くなるのか
力率の改善が基本料金にどう効くのかを試算してみましょう。
・基本料金単価:1,800円/kW(試算用に仮定した金額)
※高圧電力の基本料金単価は電力会社や契約条件によって個別に決まります。ここでの1,800円/kWは計算方法を示すための仮の数値であり、実際に適用される単価ではありません。
力率による基本料金の違い(契約電力150kWの試算)
| 力率 | 月間の基本料金 | 年間の基本料金 | 力率85%との差(年間) |
|---|---|---|---|
| 95% | 243,000円 | 2,916,000円 | −324,000円 |
| 90% | 256,500円 | 3,078,000円 | −162,000円 |
| 85% | 270,000円 | 3,240,000円 | — |
| 80% | 283,500円 | 3,402,000円 | +162,000円 |
単価が仮の数値であっても、力率を80%から95%へ改善すれば基本料金が約14%下がるという比率の関係は変わりません。この試算では年間で48万円以上の差になります。自社の請求書に記載された基本料金と力率から、同じ計算で概算できます。
なお力率の改善は基本料金にのみ効きます。電力量料金は有効電力(kWh)に対して課されるため、力率が変わっても金額は変わりません。
力率を改善する方法
①進相コンデンサを設置・増設する
力率改善の基本は進相コンデンサ(力率改善用コンデンサ)の設置です。誘導性負荷が発生させる遅れの無効電力を、コンデンサが発生させる進みの無効電力で打ち消す仕組みです。
設置場所はキュービクル(高圧受電設備)の内部、または負荷に近い分電盤側になります。力率の悪い機器の近くに個別に設置するほうが、配線の損失も含めて効果が高くなります。
②過補償(進み力率)に注意する
コンデンサを入れれば入れるほど良い、というわけではありません。コンデンサの容量が過大だと力率が進み側に振れてしまい、これを過補償と呼びます。
過補償の状態では受電端の電圧が上昇し、機器の絶縁劣化や誤動作につながるおそれがあります。また電力会社の料金上も、進み力率が割引として評価されるとは限りません。
とくに注意したいのが夜間や休日など、負荷が小さい時間帯です。稼働中の負荷に合わせてコンデンサ容量を決めると、無負荷時に過補償になりやすくなります。負荷の変動が大きい施設では、負荷に応じてコンデンサを自動で入切する自動力率調整装置の検討が有効です。
③機器の運用そのものを見直す
設備を追加せずにできる対策もあります。モーターを軽負荷で長時間動かす運用は力率を悪化させるため、次のような見直しが力率にも効きます。
- 過大な容量のモーターを適正容量のものに置き換える
- 使っていない変圧器やモーターの電源を切る
- ポンプや送風機の流量制御をバルブ絞りからインバータ制御に変える
- 古い蛍光灯照明をLEDに置き換える
コンデンサの設置容量や過補償の判断には専門的な検討が必要です。選任している電気主任技術者、または保安管理業務を委託している電気保安法人に相談するのが確実でしょう。
単価の見直しとあわせて考える
力率の改善と契約電力(デマンド)の適正化は、いずれも電力会社を変えずに基本料金を下げられる対策です。まずこの2つで下げられる分を確認するのが順序として合理的です。
そのうえで残るのが単価そのものです。高圧電力の単価は公表されている標準料金がそのまま適用されるわけではなく、契約電力の規模や使用パターンをもとに電力会社が個別に提示します。そのため他社と比べるには、実際に見積もりを取る必要があります。詳しくは高圧電力の基礎解説をご覧ください。
力率に関するよくある質問
電源から送り出された電力(皮相電力)に対して、実際に消費された電力(有効電力)の割合です。力率 = 有効電力 ÷ 皮相電力で計算され、百分率で表されます。モーターや変圧器などの誘導性負荷が無効電力を発生させるため、力率は100%より小さくなります。
高圧電力の基本料金は「基本料金単価 × 契約電力 ×(1.85 − 力率)」で計算されるため、力率が1ポイント上がるごとに基本料金が約1%下がります。力率85%が基準で、これを上回れば割引、下回れば割増になります。なお割引が効くのは基本料金のみで、電力量料金は変わりません。
モーター(ポンプ・送風機・コンプレッサー・エレベーター)、変圧器、蛍光灯の安定器、溶接機などの誘導性負荷が原因です。とくにモーターを定格の半分以下といった軽い負荷で動かし続けると力率が悪化します。
進相コンデンサ(力率改善用コンデンサ)の設置・増設が基本です。キュービクル内または力率の悪い機器の近くに設置します。あわせて過大容量モーターの適正化、未使用の変圧器の停止、インバータ制御への変更、照明のLED化なども効果があります。
いいえ。容量が過大だと力率が進み側に振れる「過補償」となり、受電端の電圧上昇による機器の絶縁劣化や誤動作のおそれがあります。とくに夜間や休日など負荷が小さい時間帯に過補償になりやすいため、負荷変動の大きい施設では自動力率調整装置の検討が有効です。容量の決定は電気主任技術者に相談してください。
あります。低圧電力(動力プラン)でも力率85%を基準とした同じ考え方の割引・割増が適用されます。ただし採用していない電力会社もあるため、契約中の料金表で確認してください。