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2026年は日本とフィリピンの国交正常化70周年

日本とフィリピンの外交関係が正常化したのは1956年。2026年で70周年を迎えます。

日本政府は2026年を「日・フィリピン友好年」とし、70周年のテーマを「Weaving the Future Together: Peace, Prosperity, Possibilities(未来を共に織りなす:平和、繁栄、可能性)」としています。

2026年5月28日には、来日したフィリピンのマルコス大統領と日本の首脳による会談が行われ、両国関係を「包括的・戦略的パートナーシップ」に格上げする共同声明も発表されました。

70年にわたる交流を経て、両国の関係は経済やインフラ、環境など幅広い分野へ広がっています。

では、フィリピンのエネルギー事情はどうなっているのでしょうか?

フィリピンの電気は何で作っている?

フィリピンの電源構成を見ると、意外なことが分かります。

現在も石炭が発電の中心です。

国際通貨基金(IMF)の資料によると、2024年のフィリピンの発電量に占める化石燃料の割合は78%。そのうち、石炭だけで63%を占めています。

天然ガスは14.2%、再生可能エネルギーは22%でした。

つまり、フィリピンでは、

  • 石炭:約63%
  • 天然ガス:約14.2%
  • 再生可能エネルギー:約22%
  • その他の化石燃料など

という構成になっています。

「フィリピン」と聞くと、南国の太陽を利用した太陽光発電など、再生可能エネルギーが中心というイメージを持つ人もいるかもしれません。

しかし、実際には石炭火力が現在のフィリピンの電力供給を支えているのが現状です。

一方で、フィリピン政府はこの電源構成を大きく変えようとしています。

フィリピンでは再生可能エネルギーも拡大中

フィリピンでは、太陽光、風力、水力、地熱など、さまざまな再生可能エネルギーが利用されています。

なかでも特徴的なのが地熱発電です。

フィリピンは世界有数の地熱資源を持つ国で、特にビサヤ地域では地熱発電が重要な電源となっています。

また、ルソン島では水力に加えて太陽光発電が増加。ミンダナオ島では水力発電が大きな役割を果たしています。

再エネ比率を2030年に35%へ

フィリピン政府は「Philippine Energy Plan 2023-2050」で、再生可能エネルギーの導入を大幅に増やす方針を示しています。

発電量に占める再生可能エネルギーの割合について、

2030年:35%
2040年:50%
2050年:50%超

を目標としています。

2024年時点では22%だったことを考えると、2030年までに大きく引き上げる必要があります。

ここで日本と比べてみると、意外なことが分かります。

日本の再生可能エネルギーの割合は、2024年度で23.1%(水力を含む)。フィリピンの22%と、ほとんど変わりません。さらに日本も、2040年度の再生可能エネルギーを4〜5割程度にする目標を掲げています。フィリピンの2040年50%と、目指す水準はほぼ同じです。

違うのは、残りの中身です。日本は火力67.5%と原子力9.4%。フィリピンは石炭だけで63%を占め、原子力はありません。同じくらいの再エネ比率から、同じくらいのゴールへ。ただし出発点の中身は大きく違います。

さらに2026年2月には、フィリピンのエネルギー省が2035年までに少なくとも25 GWの新規再生可能エネルギー容量を導入する10年間の「Green Energy Auction Program」を進める方針を発表しました。

太陽光や風力だけでなく、地熱、水力、バイオマスなども対象となっています。

なぜフィリピンは再エネを増やしたい?

再生可能エネルギーの導入を増やす理由は、地球温暖化対策だけではありません。

エネルギー安全保障も大きな理由の一つです。

石炭や天然ガスなどの化石燃料に依存すると、海外の燃料価格や国際情勢の影響を受けやすくなります。

一方、太陽光、風力、水力、地熱などの国内資源を利用できれば、海外から輸入する燃料への依存を減らすことができます。

フィリピン政府も、再生可能エネルギーの導入拡大を、エネルギー安全保障や安定した電力供給につながる取り組みとして進めています。

再エネの拡大は、

「CO₂を減らすため」だけではなく、「国内で安定してエネルギーを確保するため」

という側面もあるわけです。

島国ならではの電力事情も

フィリピンのエネルギー事情を考えるうえで忘れてはいけないのが、7,000以上の島からなる島国であることです。

日本も島国ですが、フィリピンは多数の島に人口や産業が分散しているため、電力を送るためのインフラ整備が課題になります。

IMFは、フィリピンでは地理的な条件によって全国を一つの送電網で結ぶことが難しく、地域によって電力供給や再生可能エネルギーの導入状況に差があると指摘しています。

例えば、

  • ルソン島:水力、太陽光など
  • ビサヤ地域:地熱発電
  • ミンダナオ島:水力発電

というように、地域によって主要な電源も異なります。

再生可能エネルギーを増やすだけでなく、発電した電気を必要な地域まで届ける送電網の整備も重要になります。

フィリピンの電気代は高い?

では、フィリピンの電気料金はどうでしょうか。

IMFによると、フィリピンの電力価格はASEANの中でも高い水準にあります。

ただし、電力市場で取引される平均価格は低下傾向にあります。

フィリピンの電力市場を運営するIEMOPのデータによると、平均電力価格は、

2024年:5.58 フィリピンペソ/kWh
2025年上半期:4.14 フィリピンペソ/kWh

まで低下しました。IMFは、再生可能エネルギーへの投資拡大も価格低下の要因の一つとして挙げています。

ただし、ここで注意したいのは、この数字は電力市場の平均価格であり、日本の家庭が実際に支払う「電気料金」と単純に比較できるものではないということです。

フィリピンでは電気料金の高さが、製造業などにとっても課題になっているとIMFは指摘しています。

今後、再生可能エネルギーの導入が進むことで、発電コストや電力価格がさらに低下する可能性があります。

フィリピンは「石炭中心」から「再エネ中心」へ?

ここまで見てきたフィリピンのエネルギー事情を整理すると、

現在:石炭が主力
↓
今後:太陽光・風力・水力・地熱などを拡大
↓
2030年:再エネ35%
2040年:再エネ50%
2050年:50%超

という大きな転換を目指しています。

フィリピン政府は2020年から、新規の石炭火力発電所についてモラトリアム政策を実施しており、再生可能エネルギーの導入を促進しています。

さらに、2026年には再エネの導入を加速させるため、2035年までに少なくとも25 GWの新規再エネ容量を確保するための長期的なグリーンエネルギー入札計画も進めています。

ただし、石炭火力がすぐになくなるわけではありません。

2024年時点では発電量の63%を石炭が占めているため、今後は既存の石炭火力をどう扱いながら、再生可能エネルギーや蓄電池、送電網を整備していくかが課題になります。

日本とフィリピンはエネルギー分野でも協力

日本とフィリピンの関係は、エネルギー分野にも広がっています。

例えばJICA(国際協力機構)は、フィリピンのエネルギー省(DOE)とともに、水力発電のポテンシャルを調査する技術協力プロジェクトを2025年から開始しています。

このプロジェクトでは、100 MWを超える大規模な貯水式水力発電や揚水発電の候補地などについて、フィリピン国内の水力資源データを更新・整備します。

水力発電は、太陽光や風力のように天候によって発電量が変動する電源を支える役割も期待されています。

また、JICAはフィリピンの気候変動対策や再生可能エネルギー政策についても支援しています。

2026年6月には、JICAがマニラのLRT-1(ライトレール)について省エネの技術支援を完了したことも発表されています。日本の専門家が鉄道の電力消費を分析し、省エネ対策や2026〜2035年のロードマップを提案しました。

国交正常化70周年を迎えた2026年、日本とフィリピンのエネルギー分野での協力も続いています。

まとめ:フィリピンのエネルギーはこれからどう変わる?

2026年、日本とフィリピンは国交正常化70周年を迎えました。

フィリピンのエネルギー事情を見てみると、現在は石炭が発電の中心となっています。

2024年の発電量では、石炭が63%、天然ガスが14.2%、再生可能エネルギーが22%でした。

一方で、フィリピン政府は再生可能エネルギーの割合を2030年に35%、2040年に50%、2050年には50%超まで引き上げる目標を掲げています。

フィリピンには太陽光、風力、水力、地熱などの豊富な再生可能エネルギー資源があります。

その一方で、島国ならではの送電網の問題や電力価格の高さなど、解決すべき課題もあります。

「石炭中心の現在」から「再生可能エネルギーを中心とした将来」へ。

国交正常化70周年を迎えた日本とフィリピンでは、こうしたエネルギー分野でも今後さらに協力が進むことが期待されます。

参考サイト一覧 :

  • 外務省|2026年日・フィリピン友好年(国交正常化70周年)記念ロゴマークの決定(友好年のテーマ「未来を共に織りなす:平和、繁栄、可能性」)
  • 外務省|日・フィリピン首脳会談及び夕食会(2026年5月28日、包括的・戦略的パートナーシップに関する共同声明)
  • IMF(国際通貨基金)|Renewable Energy Transition in the Philippines(2024年の化石燃料78%・石炭63%・天然ガス14.2%・再エネ22%、ASEAN屈指の電力価格、地域ごとの電源、平均市場価格5.58→4.14 フィリピンペソ/kWh)
  • IEMOP(フィリピン独立市場運営機関)|2025年上半期の卸電力市場価格(2024年の5.58 フィリピンペソ/kWhから4.14 フィリピンペソ/kWhへ低下)
  • フィリピン エネルギー省(DOE)|Philippine Energy Plan 2023-2050(再生可能エネルギー比率の目標)
  • 経済産業省・資源エネルギー庁|令和6年度(2024年度)エネルギー需給実績(確報)。2026年4月14日公表(再生可能エネルギー23.1%、原子力9.4%、火力67.5%)
  • 資源エネルギー庁|第7次エネルギー基本計画(2040年度の再生可能エネルギー4〜5割程度)
  • フィリピン エネルギー省(DOE)|新規石炭火力発電所の承認モラトリアム(2020年10月27日から)
  • JICA(国際協力機構)|包蔵水力データベース化支援プロジェクト(2025年5月〜2028年4月、100 MW以上の貯水池式・揚水式水力のインベントリー更新)
  • JICA(国際協力機構)|マニラ首都圏の都市鉄道LRT1号線の省エネルギー化推進支援