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全国高校野球選手権大会(夏の甲子園)は、球児たちの熱戦とともに「暑さ対策」が大きな話題になっています。なかでも注目されているのが、いちばん暑い時間帯を避けて試合を午前と夕方に分ける「朝夕2部制」です。
夕方の試合が増えれば、日が落ちてからのナイター照明の出番も増えます。「そのぶん電気代はどうなっているの」と気になった方も多いのではないでしょうか。実は舞台となる阪神甲子園球場は、球場で使う電気をすでに「実質再生可能エネルギー100%」に切り替えています。
- 朝夕2部制はもっとも暑い12時〜16時ごろの試合を避ける暑さ対策
- ナイター1試合の照明代は約12万円という試算になる
- 照明の全LED化で消費電力は約60%削減済み
- 銀傘の太陽光1,600枚とオフサイトPPAで実質再エネ100%を達成
- 家庭でも「使う量」と「電気の買い方」の2方向で電気代は下げられる
「朝夕2部制」で、そもそも何が変わるのか
朝夕2部制は、熱中症のリスクがもっとも高い昼の12時〜16時ごろの試合をまるごと避けるという考え方です。従来のスケジュールと比べると、次のように変わります。
夏の甲子園:従来のスケジュールと朝夕2部制の比較
| 区分 | 従来のスケジュール | 朝夕2部制を適用したとき |
|---|---|---|
| 午前の部 | 第1試合 8:00〜 | 第1試合 8:00〜/第2試合 10:30〜 |
| 中断・入れ替え | なし(連続開催) | 最暑の時間帯(12:00〜16:00頃)は試合を中断し、観客も入れ替え |
| 夕方の部 | 第3〜4試合(夕方〜夜間) | 第3試合 17:00〜(ナイター点灯) |
ポイントは、真ん中にできる「空白の4時間」です。選手も観客も、1日でいちばん過酷な時間帯をグラウンドやスタンドで過ごさずに済みます。
そのかわり第3試合は17時開始です。試合が後半にさしかかるころには日が暮れ、あの大きなカクテル光線が灯ります。夜間照明の稼働時間が延びることが、朝夕2部制のエネルギー面での変化になります。
ナイター照明の電気代は、1試合でいくらなのか
ここが多くの方の気になるところだと思います。球場が公表しているデータから、目安を計算してみましょう。
年間発電量から逆算すると「約12万円/1試合」
甲子園球場の屋根には太陽光パネルが設置されており、その年間発電量は約19万3,000 kWhです。球場側の説明によると、これは阪神タイガースが1年間のナイターで使う照明の電力量とほぼ同じ規模だとされています。
ここから1試合あたりを逆算すると、次のようになります。
ナイター1試合あたりの照明電気代(編集部試算)
| 年間のナイター照明の電力量 | 約193,000 kWh |
| 年間のナイター試合数(仮定) | 約50試合 |
| 1試合あたりの照明の電力量 | 約3,900 kWh |
| 電気代(31 円/kWhで計算) | 約12万円/1試合 |
※球場公表の年間発電量をもとにしたセレクトラ編集部の試算です。試合数や契約単価によって金額は変わります。電気料金単価は全国家庭電気製品公正取引協議会公表の目安単価31 円/kWhを使用しています。
一般的なご家庭が1年間に使う電気は、4,000 kWh前後が目安です。つまりナイター1試合の照明だけで、一般家庭のほぼ1年分の電気を使っていることになります。あの明るさを思えば納得ですが、あらためて数字にすると迫力がありますね。1 kWhあたりの単価の考え方は、電気料金の1kWhあたりの単価のページで詳しく解説しています。
全LED化で消費電力を約60%カット
では、朝夕2部制で夕方の試合が増えれば、電気代もどんどん膨らんでしまうのでしょうか。
実はそうならない理由があります。甲子園球場は照明器具をすべてLEDに切り替え済みだからです。従来の放電灯(メタルハライドランプなど)と比べて、消費電力は約60%削減されました。
しかもLEDは、スイッチを入れてから明るくなるまでの待ち時間がほとんどありません。従来の照明は点灯までに数分かかり、その間もずっと電気を使い続けていましたが、その無駄がなくなったわけです。
夜の試合が増えても電力使用量が急増しないのは、先に器具そのものを省エネにしておいたという準備があってこそ、というわけです。
屋根一面の太陽光「銀傘」と、球場の外にある発電所
甲子園球場は、環境配慮型スタジアムとしての取り組み「KOSHIEN eco Challenge」を進めています。柱は大きく2つあります。
「銀傘(ぎんさん)」のオンサイト太陽光発電
内野席を覆う大屋根、通称「銀傘」。この上に約1,600枚の太陽光パネルが並んでいます。前述のとおり年間発電量は約19万3,000 kWhで、ナイター照明1年分に相当する電気を球場自身が生み出しているのです。
オフサイトPPAによる「実質再エネ100%」の実現
とはいえ、屋根の発電だけでは足りません。夜間の電力や大型空調が使う電気は、屋根の太陽光ではまかないきれないからです。
そこで甲子園球場は、関西電力および大和ハウス工業との連携により、兵庫県相生市などに球場専用の太陽光発電所を設置しました。これが「オフサイトPPA」と呼ばれる仕組みです。
自分の建物の屋根には置ききれない分の太陽光発電設備を離れた場所につくり、そこで発電した電気を長期契約で購入する仕組みのことです。屋根が狭くても再生可能エネルギーを増やせるため、企業や自治体で導入が広がっています。
この結果、2025年春から球場全体で使う電気が実質再生可能エネルギー100%になりました。CO2の排出量は年間で約3,000トン削減。これは一般家庭およそ2,000世帯分の年間排出量にあたります。
エネルギーを大量に使う夏の大型スポーツイベントが、そのまま脱炭素のモデルケースになっているわけです。家庭向けでも再生可能エネルギー由来の電気を選べるプランは増えており、再生可能エネルギーの電力会社のページで比較できます。甲子園球場がある兵庫県エリアの電気料金は、兵庫県の電気料金と電力会社比較にまとめています。
選手と観客を守る「クーリング」と、それを支える電気
猛暑下の高校野球では、5回終了時に10分間の「クーリングタイム」が設けられています。短時間でしっかり体を冷やすためには、それだけの冷房パワーが必要になります。
クーリングルームを支える大容量の空調
ベンチ裏には強力なスポットクーラーや氷風呂、冷風機が完備されています。バックネット裏などに新設されたクーリングルームには、大容量の空調設備が稼働しています。
こうした冷房インフラを止めずに動かし続けるためにも、安定した大電力の供給と省エネ技術の融合が欠かせません。
甲子園名物「壁面のツタ」も暑さ対策の一員
意外に思われるかもしれませんが、甲子園名物の「壁面のツタ」も暑さ対策の一員です。建物の表面温度を下げてヒートアイランド現象をやわらげることで、球場の遮熱や空調効率の向上にひと役買っています。
球場の暑さ対策とエネルギー設備は、次のように段階的に進化してきました。
猛暑対策における甲子園のエネルギー・設備進化の歴史
| 時期 | 取り組みの内容 |
|---|---|
| 2010年ごろ | 銀傘に太陽光パネル約1,600枚を設置。ナイター照明に相当する電力の自家発電を開始 |
| 2020年〜 | 球場照明を全面LED化。カクテル光線を高効率LEDへ刷新し、照明電力を約60%カット |
| 2023年 | 5回終了時のクーリングタイムを導入。バックネット裏などにエアコン完備のクーリングルームを新設 |
| 2024年〜2025年 | 朝夕2部制の試験導入と、PPA方式による球場電力の実質再エネ100%化を同時に実現 |
わが家でもできる「猛暑の電気代」対策
甲子園ほどの設備は無理でも、考え方は同じです。「使う量を減らす」か「電気の買い方を変える」か、この2つしかありません。
まずは「使う量を減らす」
甲子園がやったLED化は、実は家庭でいちばん再現しやすい対策です。白熱電球をLED電球に替えるだけで、その照明の消費電力は8割以上下がります。
エアコンについては、環境省の目安で、冷房の設定温度を1℃上げると消費電力は約13%(約70W)減るとされています。今日からできることをまとめました。
- 冷房の設定温度を1℃上げる:消費電力を約13%抑えられます
- フィルターを2週間に1回そうじする:目詰まりは余分な電力消費につながります
- 室外機の前と側面を空ける:排熱が滞ると冷却効率が落ちます
- サーキュレーターを併用する:温度ムラが消え、設定温度を緩めやすくなります
- 白熱電球をLEDに替える:その照明の消費電力が8割以上下がります
エアコンの電気代そのものの目安は、エアコンの電気代はいくらで機種別に試算しています。家電別の節電方法は節電方法まとめにまとめました。
見落とされがちな「電気の買い方」
甲子園球場は、電気をどこから買うかを見直すことで、使う量を減らさずにCO2をゼロにしました。
ご家庭でも同じことができます。電力会社やプランを見直すという方法です。電力自由化以降、各社がさまざまな料金プランを出していますが、一度契約したまま何年も見直していないという方は少なくありません。
エアコンをがまんして設定温度を1℃上げるより、契約を見直したほうが年間の削減額が大きくなるケースも珍しくありません。しかも一度切り替えれば、その効果は毎月自動的に続きます。
使う量を減らしても、契約している電気料金の単価が高ければ請求額はなかなか下がりません。使用量を減らす工夫と、単価を下げる電力会社の見直しは、両方あわせて効果が出ます。
お住まいの地域・世帯人数・電気の使い方から、どのプランが安くなるかを確認できます。切り替えの手順そのものは、電力会社の切り替え方法で解説しています。
よくある質問(FAQ)
1日でもっとも気温が高くなる12時〜16時ごろの試合を避け、試合を「午前の部」と「夕方の部」に分けて開催する暑さ対策です。午前の部は8時と10時30分の2試合、その後もっとも暑い時間帯は試合を中断して観客も入れ替え、夕方の部は17時開始となります。2024年の大会から一部日程で試験導入されています。
球場が公表している屋根の太陽光の年間発電量(約19万3,000 kWh)は、1年間のナイター照明で使う電力量とほぼ同じ規模とされています。ここから年間のナイター約50試合で割り戻すと1試合あたり約3,900 kWh、電気料金の目安単価31 円/kWhで計算すると約12万円という試算になります。一般的なご家庭が1年間に使う電気の量に近い水準です。
照明の稼働時間そのものは延びますが、甲子園球場は事前に照明器具の全LED化を終えています。従来の放電灯に比べて消費電力は約60%削減されており、点灯までの待ち時間もほとんどありません。器具そのものを省エネにしておいたことで、ナイター枠の拡大による電力需要の急増を抑えています。
2025年春から、球場全体で消費する電力を「実質再生可能エネルギー100%」に切り替えています。内野席の大屋根「銀傘」に設置した約1,600枚の太陽光パネルによる自家発電と、球場の外に専用の太陽光発電所を設けるオフサイトPPAを組み合わせた形です。CO2排出量は年間で約3,000トン削減されています。
自分の建物の屋根には置ききれない分の太陽光発電設備を離れた場所につくり、そこで発電した電気を長期契約で購入する仕組みです。甲子園球場の場合は、関西電力および大和ハウス工業との連携により、兵庫県相生市などに球場専用の太陽光発電所が設置されています。屋根が狭くても再生可能エネルギーを増やせるため、企業や自治体で導入が広がっています。
やることは「使う量を減らす」か「電気の買い方を変える」かの2つです。使う量を減らす方ではエアコンの設定温度とフィルター清掃、室外機まわりの片付けが効果的です。買い方を変える方は、契約中の電力会社やプランの見直しになります。一度切り替えれば効果が毎月自動的に続くため、我慢を伴わない対策として先に検討する価値があります。
まとめ:熱中症対策と脱炭素は両立できる
球児たちの安全を守る朝夕2部制やクーリングタイムの拡充は、スポーツ界における気候変動対策の最前線です。そしてその裏側では、LED化・太陽光発電・再エネPPA契約といった電気とエネルギーの技術が、静かに、しかし確実に貢献しています。
- 朝夕2部制はもっとも暑い12時〜16時ごろを避ける熱中症対策
- ナイター1試合の照明代は約12万円、一般家庭のほぼ1年分の電気に相当
- 夜の試合が増えても電気代が跳ね上がらないのは全LED化を先に終えていたから
- 銀傘の太陽光とオフサイトPPAで、2025年春から実質再エネ100%を達成
猛暑のなかで白球を追う球児たちを応援しながら、それを支える球場の「エネルギーの熱い取り組み」にも、ぜひ注目してみてください。そしてもし「うちの電気代も見直してみようかな」と思われたら、それがいちばん身近な一歩になるはずです。
夏の電気代を下げたい方はこちら :
参考サイト一覧
- 阪神甲子園球場|球場設備・環境への取り組み
- 日本高等学校野球連盟|全国高校野球選手権大会の運営・暑さ対策
- 環境省 COOL CHOICE|家庭でできる節電・冷房の設定温度
- 全国家庭電気製品公正取引協議会|電力料金の目安単価
※本記事の球場設備に関するデータは、阪神甲子園球場および関係各社の公表情報に基づく2026年8月5日時点の内容です。ナイター1試合あたりの電気代はセレクトラ編集部の試算による参考値であり、実際の契約単価・試合数によって変動します。大会日程および朝夕2部制の適用日は主催者の発表をご確認ください。