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電気代の負担が気になるなか、ふと気になるのが「お隣の韓国では、電気代はいくらなの?」ということ。

実は韓国の家庭用電気料金は、日本と比べるとかなり安い水準です。

しかも韓国は、日本のように家庭が自由に電力会社を選ぶ「電力小売全面自由化」の仕組みになっていません。

では、韓国の電気料金はどのくらい安いのでしょうか。そして、なぜ日本との間にこれほど差があるのでしょうか。

韓国の電気代は日本より安い?

結論からいうと、韓国の家庭用電気料金は日本より安い水準です。

2026年7月、韓国電力公社(KEPCO)が公表した比較では、韓国の4人世帯が夏に平均的に使用する419 kWhの電気を使った場合、韓国の月額電気料金は77,760 ウォンでした。

同じ419 kWhを使った場合の料金を、日本の東京電力の料金体系で計算すると165,983 ウォン。韓国の約2.1倍となります。

419kWh使用時の月額電気料金(韓国電力公社の比較)

国・地域 419 kWh使用時の月額料金
韓国 77,760 ウォン
日本・東京電力 165,983 ウォン

※韓国電力公社が韓国の4人世帯の平均的な夏季使用量419 kWhに各国の料金体系を当てはめた比較。

ちなみに、この比較にはほかの国も並んでいます。フランスは163,609 ウォンで日本とほぼ同じ水準、米国は193,848 ウォン、ドイツは230,149 ウォン。韓国の安さは、日本と比べたときだけの話ではありません。

つまり、同じ量の電気を使った場合、韓国の家庭の電気料金は日本の半分以下になる計算です。

日本では9月使用分を最後に政府の電気料金支援が終了し、10月から実質的な値上がりとなります。半額と聞くと「韓国の電気代がうらやましい」と感じる人がいても不思議ではありません。

韓国はエアコンをあまり使わないから電気代が安い?

「韓国は日本より電気をあまり使わないから、電気代も安いのでは?」と思うかもしれません。

ところが、必ずしもそうではありません。

韓国は夏の冷房需要が比較的大きく、韓国電力公社が2026年7月に公表した資料によると、2022年の1人あたり冷房用電力消費量は191.5 kWh。夏の気候が似ている日本は2024年で160.2 kWhだったため、韓国のほうが約1.2倍多くなっています。

つまり、エアコンをあまり使わないから電気代が安い、というわけではありません。

それでも韓国の電気料金が日本より低い背景には、料金制度や電力市場の仕組みがあります。

韓国も従量料金は3段階制 - 量が増えると単価もあがる

韓国の電気料金について詳しくみていきましょう。

韓国の家庭用電気料金にも、使用量が増えるほど単価が高くなる段階制(累進料金)があります。

2026年の夏季は、以下の3段階となっています。

韓国の家庭用電気料金(2026年夏季の電力量料金)

使用量 電力量料金
300 kWhまで 120 ウォン/kWh
301〜450 kWh 214.6 ウォン/kWh
450 kWh超 307.3 ウォン/kWh

さらに基本料金も、300 kWhまでなら910 ウォンですが、300 kWhを超えると1,600 ウォン、450 kWhを超えると7,300 ウォンになります。

そのため、夏にエアコンを長時間使って450 kWhを超えると、電気料金の負担が一気に大きくなる可能性があります。

韓国電力公社によると、450 kWhを超えると電気料金が10万ウォン近くになるケースもあります。

この3段階が使えるのは7〜8月だけ

ただし、いま見た3段階には期間の条件があります。

300 kWh・450 kWhという区切りは、7月1日から8月31日までの「夏季」にだけ適用される拡大枠です。

それ以外の期間、つまり1月1日〜6月30日と9月1日〜12月31日は「その他季節」と呼ばれ、区切りが次のように狭くなります。

韓国の累進区間は季節で変わる(家庭用・低圧)

段階 夏季
(7/1〜8/31)
その他季節
(9/1〜6/30)
電力量料金
1段階 300 kWhまで 200 kWhまで 120 ウォン/kWh
2段階 301〜450 kWh 201〜400 kWh 214.6 ウォン/kWh
3段階 450 kWh超 400 kWh超 307.3 ウォン/kWh

単価そのものは変わりません。120 ウォン・214.6 ウォン・307.3 ウォンのままで、基本料金も910 ウォン・1,600 ウォン・7,300 ウォンのままです。

動くのは区切りの位置だけ。

ところが、これが請求額にはしっかり効きます。

韓国電力公社の料金表をもとに、基本料金と電力量料金を足して計算すると、次のようになります。

同じ使用量でも8月と9月で変わる電気料金(基本料金+電力量料金)

月の使用量 8月(夏季) 9月(その他季節) 差
350 kWh 48,330 ウォン 57,790 ウォン +9,460 ウォン
450 kWh 69,790 ウォン 89,585 ウォン +19,795 ウォン

つまり韓国では、9月に入った瞬間、同じ使い方でも電気料金が上がります。

この記事で紹介した419 kWhも、夏季なら2段階目に収まりますが、9月以降は3段階目に入る使用量です。

日本の補助が9月使用分で終わるのと同じように、韓国にも9月という節目があるわけです。

日本も同じく段階制

「韓国は累進制だから電気代が高くなる」という説明だけでは、日本との違いを説明できません。

日本も、規制料金の代表例である東京電力の「従量電灯B」などでは、使用量に応じて電力量料金の単価が変わる3段階料金が採用されています。

韓国と東京電力「従量電灯B」の段階制を並べると

段階 韓国
(その他季節)
東京電力
従量電灯B
1段階 200 kWhまで
120 ウォン/kWh
120 kWhまで
29.80 円/kWh
2段階 201〜400 kWh
214.6 ウォン/kWh
120〜300 kWh
36.40 円/kWh
3段階 400 kWh超
307.3 ウォン/kWh
300 kWh超
40.49 円/kWh
1段階と3段階の
単価の開き
約2.6倍 約1.4倍

※東京電力の単価は2026年9月時点。韓国は7〜8月以外の「その他季節」の区間。

目を引くのは累進のきつさです。韓国は1段階目と3段階目で単価が約2.6倍も開きますが、東京電力は約1.4倍。使いすぎたときの単価の上がり方は、韓国のほうがずっと急です。

つまり、

韓国も段階制、日本も段階制。

それでも同じ419 kWhで比較すると、韓国のほうが大幅に安いというのがポイントです。

韓国は電力自由化していない

そして、日本と韓国の大きな違いの一つが電力小売市場の仕組みです。

日本では2016年4月から電力小売全面自由化がスタートし、家庭や商店を含む消費者が、電力会社や料金メニューを選べるようになりました。

一方、韓国では電力市場は韓国電力公社(KEPCO)が大きく支配する構造になっています。

IEA(国際エネルギー機関)も、韓国の電力市場について、国有企業であるKEPCOが支配的な構造にあると指摘しています。また、現在の料金制度から、より透明で市場ベースの料金制度への移行や、KEPCOの機能分離などが今後の課題として挙げられています。

つまり、日本のように、

「電気料金を比較して、A社からB社へ乗り換える」

という家庭向けの電力小売市場とは大きく異なります。

韓国では、家庭が日本の新電力のような複数の小売電気会社から自由に選ぶ市場にはなっていません。

この違いは、韓国の電気料金を考えるうえで重要です。

韓国の電気料金は政府・KEPCOの影響を強く受ける

韓国の電気料金は、燃料価格などの変化がそのまま家庭の電気料金に反映されるわけでもありません。

韓国では電気料金の改定に政府が関与する仕組みがあり、KEPCOの料金改定も政府の承認プロセスを経て決まります。

例えば2026年7〜9月の燃料費調整単価は、算定上の必要調整額がマイナス3.4 ウォン/kWhとなったにもかかわらず、最終的には+5 ウォン/kWhに据え置かれました。

つまり、燃料価格が変動したからといって、それが機械的にそのまま家庭の電気料金に反映されるわけではありません。

「韓国の電気代が安い=韓国の電力会社が効率的」とは限らない

では、韓国の電気料金が安いのは、韓国の電力会社が日本より効率的だからなのでしょうか。

これも単純には言えません。

IEAは、韓国ではKEPCOの財務状況や電力市場の構造などを踏まえ、現在の市場制度を改革する必要性を指摘しています。

また、韓国政府は2026年後半について、電気・ガスなど主要な公共料金を凍結する方針を示しています。

消費者から見ると「電気代が安い」というメリットがありますが、その料金がどのように決められているのかを見ると、市場競争だけで決まる料金ではないことが分かります。

日本の電気代補助は9月で終了、10月からどうなる?

そして、2026年9月は日本の家庭にとって一つの節目です。

政府による「電気・ガス料金負担軽減支援事業」は、2026年7〜9月使用分を対象として実施されています。

家庭などの低圧契約では、

2026年夏の電気料金の値引き単価(低圧契約)

対象 値引き単価
7月使用分 3.5 円/kWh
8月使用分 4.5 円/kWh
9月使用分 3.5 円/kWh

が値引きされます。

例えば月400 kWhを使用する家庭なら、9月使用分は、

400 kWh × 3.5 円 = 1,400 円

が電気料金から値引きされる計算です。

しかし、10月使用分からはこの支援がなくなります。

電気を多く使う家庭ほど、補助終了による影響も大きくなります。

韓国の電気代が「うらやましい」理由は料金だけではない

今回の韓国との比較で分かるのは、単純に「韓国は電気代が安い」ということだけではありません。

韓国は、

電力小売市場を日本のように全面自由化していない

一方で、

家庭用電気料金は日本より低い水準に抑えられている

という特徴があります。

一方、日本では、

電力会社を自由に選べる

代わりに、燃料価格や電源構成、再エネ賦課金、各種料金制度などが電気料金に影響します。

2026年9月で電気料金支援が終了する今、「隣の韓国では電気代はいくらなの?」と比較してみると、両国の電力制度の違いが見えてきます。

韓国の電気代が安いのは確かにうらやましく感じるところですが、「安いかどうか」だけではなく、誰が電気料金を決め、消費者がどの程度自由に電力会社を選べるのかまで見ることが重要です。

参考資料(一次情報)