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太陽光や風力のイメージが強いスペインなら、電気代も日本より安いのでは——そう思っていたのですが、結論から言うとスペインの電気代は、日本よりもかなり高いという意外な結果になりました。これまで本サイトが検証してきたフランスとの比較とは真逆の結果です。フランスの電気代は日本よりも安いということが分かりました。

マドリードの一般家庭が実際に受け取った請求書を使って、日本(東京電力)と同じ使用量で比較してみたので、その内容を紹介します。

日本 vs スペイン:同じ147kWhで比べると?

比較の前提は以下の通りです。マドリード在住の家庭は、ガスと電気を併用する一般世帯です。この家庭が実際に受け取った2026年6月分の電気料金請求書(電力会社:Endesa Energía)をもとに比較しました。検針期間は2026年5月14日〜6月14日、実使用量は147.27kWhです。これを、東京電力の一般的なプランである「従量電灯B」に当てはめました。日本側は、147.27kWhに合わせて147kWhとして計算しています。

ユーロ/円の為替レートは、2026年7月時点の実勢水準である1ユーロ=185円と、仮に円高方向へ振れた場合を想定した1ユーロ=150円の両方で試算しました。

  • 使用量:147kWh(実際の請求書の147.27kWhに合わせた数値)
  • 日本:東京電力 従量電灯B・30A契約(2026年6月分の燃料費調整単価・2026年度の再エネ賦課金を適用)
  • スペイン:Endesa Energía「Tarifa One Luz」・契約容量5.5kW・実際の2026年6月分請求書に基づく

1ユーロ=185円の場合

日本(東京電力 30A) スペイン(Endesa Energía)
月の電気代 約5,035円 約11,405円
日本との差額 約+6,370円(126%高い

1ユーロ=150円の場合

日本(東京電力 30A) スペイン(Endesa Energía)
月の電気代 約5,035円 約9,248円
日本との差額 約+4,213円(84%高い
円高でも円安でも、結論は変わらない

1ユーロ=150円という円高方向のレートで計算しても、スペインは日本より8割以上高い結果に。現在の実勢レートである185円では2倍以上に達します。「円安のせいで高く見えるだけ」ではなく、構造的な価格差があるということです。

料金の内訳を確認

単純に「スペインの方が高い」と言っても、なぜそうなるのか、料金の内訳を見てみるとその理由がより明確になります。

日本(東電 従量電灯B・30A)の内訳(147kWh)

項目 計算式 金額(税込)
基本料金(30A) 935円25銭
従量料金・第1段階(〜120kWh) 120kWh × 29円80銭 3,576円
従量料金・第2段階(121〜147kWh) 27kWh × 36円40銭 982円80銭
燃料費調整額(-7円30銭/kWh) 147kWh × (-7円30銭) ▲1,073円10銭
再エネ賦課金(4円18銭/kWh) 147kWh × 4円18銭 614円46銭
合計 約5,035円

参考:東京電力 燃料費調整単価一覧・2026年度再エネ賦課金単価(経済産業省公表)

スペイン(Endesa Energía、マドリードの実際の請求書)の内訳(147.27kWh)

スペイン・マドリードの家庭が実際に受け取った2026年6月分の電気料金請求書の1枚目(契約者名・住所・口座情報は原本の時点で黒塗りされています)
実際の電気料金請求書(Endesa Energía、2026年6月20日発行)の1枚目。契約者名・住所・口座情報は原本の時点で黒塗りされています。
項目 金額(ユーロ)
基本料金相当(Potencia、契約容量5.5kW×31日) 23.24ユーロ
従量料金相当(Energía、147.27kWh×0.231415ユーロ) 34.08ユーロ
値引き(この契約に適用された割引) ▲10.23ユーロ
その他(ボノ・ソシアル拠出金+メーター使用料) 1.42ユーロ
税金(電気特別税+付加価値税) 13.14ユーロ
合計 61.65ユーロ

※ 上記の請求書画像に含まれる契約者名・住所・口座情報などは、原本の時点で黒塗りされています。

日本の請求書には「燃料費調整額」と「再エネ賦課金」という2つの変動要素が毎月ついてきます。スペインの請求書にこれと全く同じ項目はありませんが、代わりに「税金」と「値引き」の存在感が際立っています。実際、この請求書自体に記載された内訳比率によれば、卸電力相当の「エネルギー」はわずか46.96%にとどまり、残りの53%以上は税金(21.31%)、送配電網の利用料にあたる「託送料金」相当(21.31%)、再エネ支援などの政策コストにあたる「Cargos」(9.07%)、メーター使用料(1.35%)が占めています。

【注意点①】契約容量の違い

今回参考にしたスペインの請求書では、契約容量が5.5kW(punta-llano)となっています。日本の一般的な家庭(30A〜40A程度)と比べるとやや大きめの契約です。

仮に、スペインでよく使われる標準的な小容量(3.45kW)まで下げて再計算すると、合計は約50.63ユーロまで下がります。それでも185円換算で約9,367円となり、日本の約5,035円よりなお高いという結果は変わりません。

【注意点②】この契約には複数の値引きが適用されている

今回の請求書には、「Descuento Indefinido(無期限値引き)」と「Descuento temporal(期間限定値引き)」を合わせて、従量料金に対し実質30%相当の値引きが適用されていました。新規契約者が同じ料金プランに申し込んでも、必ずしも同じ値引きを受けられるとは限りません。

参考として、この値引きを一切適用しない「素の料金」で計算し直すと、合計は74.66ユーロに上がります。185円換算では約13,812円となり、日本との差はさらに開きます。

再エネ比率55%超のスペインで、なぜ電気代は高くなるのか?

2025年のスペインの発電量のうち、再生可能エネルギーの比率は55.5%に達しています。内訳は風力21.6%、太陽光18.4%、水力12.4%などです。原子力の19%、火力(うちガス火力16.8%)よりも高い水準です。再エネ比率だけを見れば高い水準ですが、それが電気代の安さに直結するとは限りません。家庭の電気代が高くなる背景には、いくつかの理由があります。

「エネルギー・アイランド」問題

スペインを含むイベリア半島は、フランスなど欧州本土との電力の相互融通(インターコネクション)が極めて弱いという課題を抱えています。欧州委員会が目標とする10%に対し、実際のスペイン・フランス間の連系容量は発電設備容量の3%程度にとどまっており、スペインは事実上の「エネルギーの孤島」と呼ばれています。安い電力を域外から柔軟に融通できないため、国内の需給事情がそのまま価格に反映されやすくなります。

卸電力市場のメリットオーダー方式とガス火力の影響

スペインの卸電力市場では、需要を満たすために必要な発電所のうち、最も高コストな電源(多くの場合ガス火力)の価格が市場全体の価格を決める「メリットオーダー」という仕組みが採用されています。再エネの比率が高い日でも、ガス火力が稼働する時間帯には、卸価格がガス価格の影響を強く受けることになります。

税金の重さ:IVA(付加価値税)とIEE(電気特別税)

スペインの電気料金には、日本の消費税にあたるIVA(付加価値税)と、電力に固有のIEE(電気特別税)という2つの税金が課されています。標準税率はIVAが21%、IEEが約5.11%です。IEEは電気料金本体にかかり、さらにIVAはそのIEEを含めた金額全体に課税される、いわば「税金への課税」という構造です。

スペイン政府は、エネルギー価格高騰への対策として、IVAを21%から10%へ、IEEを5.11%から0.5%へ引き下げる時限的な減税措置を、2026年5月末まで延長を重ねながら実施していました。しかし2026年6月1日、この減税は打ち切られ、両税とも本来の税率に復帰しました。今回参照した請求書は、まさにこの直後に発行されたものです。検針期間の終了日は6月14日、発行日は6月20日でした。税金だけで13.14ユーロ、請求額全体の21%超を占めています。

再エネ賦課金に相当する「ボノ・ソシアル拠出金」との違い

日本では、再生可能エネルギーの普及を支えるため再エネ賦課金が電気料金に上乗せされています。2026年度の単価は4.18円/kWhで、147kWh使用する家庭なら毎月約614円を負担する計算です。

スペインの請求書にも、「Financiación Bono Social(ボノ・ソシアル拠出金)」という小さな負担項目(今回は0.59ユーロ)がありますが、これは再エネ普及のためではなく、低所得世帯向けの割引料金制度(ボノ・ソシアル)を支えるための拠出金です。再エネ支援のコストは、日本のように単価が明示された賦課金としてではなく、送配電網の利用料に相当する「Cargos」という項目の中に、他の政策コストと合算される形で組み込まれています。

スペインの電力システムにも課題

再エネ比率が高いからといって、電力システムが安定していて理想的というわけではありません。スペインの電力システムにも独自の課題があります。

系統の安定性への不安

2025年4月には、スペインとポルトガルにまたがる大規模停電が発生し、社会に大きな影響を与えました。原因については複数の技術的要因が指摘されていますが、再エネ比率が急速に高まる中で、系統を安定させる同期発電機による慣性力の不足や、電圧制御の難しさが課題として浮かび上がった出来事でした。前述の「エネルギー・アイランド」問題により、他国からの電力融通で不足分を補いにくいことも、リスクをより大きくしています。

減税があっという間に終わる、負担の不安定さ

今回の請求書が示す通り、スペインの電気代は政治判断による時限減税と、その終了によって大きく変動します。恒久的な制度ではなく期限付きの措置に頼っているため、家庭にとっては「いつまた税負担が増えるか分からない」という不安定さがつきまといます。

原発は動いているが、重い税負担と段階的廃止計画がある

「電気代が高いのは原発が止まっているからでは」と思う人もいるかもしれませんが、日本のように震災後ほぼすべての原発が長期停止した状況とは異なります。スペインでは現在も7基の原子炉が通常運転を続けており、2025年の発電量の約19%を原子力が占めています。これは前述の再エネ55.5%に次ぐ規模です。

ただし、スペインの原子力を取り巻く状況は安泰ではありません。2019年に政府と電力会社の間で合意された計画では、2027年から2035年にかけて7基すべてを段階的に閉鎖することになっています。加えて、原子力発電には他国と比べて重い税負担が課されています。使用済み核燃料や放射性廃棄物の管理費用にあてる特別税は2012年に制定されたもので、これに地域税なども加わります。電力会社は「採算が合わない」として、最初に閉鎖予定だったアルマラス原発の稼働延長を政府に求めています。同原発は本来2027〜2028年に閉鎖予定でしたが、2030年までの延長を要請しているものです。2026年7月時点でもこの延長を巡る攻防が続いており、環境団体は延長に反対しています。

つまり、今のところ原発が「止まっているから高い」わけではありませんが、比較的安価な原子力の比率が計画通り段階的に縮小していけば、ガス火力や再エネへの依存度がさらに高まり、将来的に電気代を押し上げる方向に働く可能性はあります。

よくある質問

今回、マドリードの一般家庭の実際の請求書と、東京電力の同使用量を比較しました。使用量は147.27kWh、スペイン側の金額は61.65ユーロです。日本側は147kWhで約5,035円でした。為替レートを1ユーロ=185円で換算するとスペインの方が約126%、1ユーロ=150円換算でも約84%高いという結果になりました。契約容量や適用されている値引きを調整して試算し直しても、スペインの方が高いという結論は変わりません。

2025年のスペインの再エネ比率は55.5%と高い水準です。それでも電気代が高いのは、電力の相互融通が弱い「エネルギー・アイランド」問題、ガス火力が価格を決めやすい卸電力市場の仕組み(メリットオーダー)、そして重い税負担が要因です。税率はIVA(付加価値税)が21%、IEE(電気特別税)が約5.11%です。

日本の電気代には消費税10%のみが課税されます。スペインの電気代には、これに加えてIVA(付加価値税)とIEE(電気特別税)という2つの税金が課されています。標準税率はIVAが21%、IEEが約5.11%です。IEEは電気料金本体にかかり、IVAはそのIEEを含めた金額全体に課税される仕組みです。スペイン政府は2026年6月1日まで両税の時限減税(IVA10%・IEE0.5%)を実施していましたが、現在は本来の税率に復帰しています。

まとめ

ワールドカップ優勝の熱狂に沸くスペインですが、家庭の電気料金という現実的な指標で見ると、必ずしも「日本より恵まれている」とは言えないことが今回の比較で見えてきました。しかも、税金を除いた電気料金そのものだけで比べても、スペインは日本より6〜10割ほど高いという結果に。つまりスペインは、電気代そのものも高いうえに、税金も高いのです。日本より電気代の負担が重い国があったとは、正直意外でした。

興味深いのは、同じヨーロッパでもフランスとスペインでこれほど事情が違う点です。フランスは日本より安く、スペインは日本よりずっと高い。「ヨーロッパは再エネが進んでいて電気代が安い」という一括りのイメージだけでは、実態を捉えきれないことがよく分かります。

再エネの導入率が高くても、それだけでは電気代の安さに直結するとは限らず、税制度や電力系統のあり方といった構造的な要因が大きく影響しています。裏を返せば、日本の電気代が高い理由も、再エネ賦課金燃料費調整額といった単一の要因だけで語れるものではなく、発電構成や税制、系統の仕組み全体を含めて考える必要があるということです。他国と比べることで、「何が高い理由なのか」をより立体的に理解できるのではないでしょうか。

とはいえ、国全体の制度が変わるのを待っていては、家計は待ってくれません。使用量を見直す、電力会社やプランを乗り換えるといった個人レベルの工夫は、今すぐにでもできる現実的な対策です。

💡 新電力に切り替えることで、年間で数千円〜1万円以上節約できるケースもあります。

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