よく分かる日本の都市ガス市場 : 製造・ガスの供給・小売り・税金

よく分かる日本の都市ガス市場 : 製造・ガスの供給・小売り・税金

よく分かる日本の都市ガス市場 : 製造・ガスの供給・小売り・税金

炊事、お風呂、床暖房と一年間を通して使用される方も多いガス。私が普段使っているガスはどこからきて、どのように家庭に届けられているのでしょうか?またガスにはどのような税金が関わっているのでしょうか?日本のガス市場について説明します。

ガス供給の仕組み

ガスはどのような過程を経て各需要家の元まで届けられるのでしょうか?

日本で供給されているガスには大きく分けて都市ガスとLPガスがあります。都市ガスとLPガスの違い は原料から流通経路、供給方法、料金体系、統括する法律まで、あらゆる点に及びますが、ここではすでに自由料金・契約制であるLPガスの供給方法ではなく、2017年に小売市場が全面自由化された都市ガスの供給の仕組みを見ていきます。

原料の輸入・貯蔵

LNG(液化天然ガス)の輸入先
2015年度「LNGの輸入先」(資源エネルギー庁「エネルギー白書2018」より転載)

都市ガスの主な原料は天然ガスです。日本は97.6%を輸入に頼っています。天然ガスはメタンを主成分としており、常温・常圧では気体であるため、日本へ輸入するときは-162℃まで冷却して容積を600分の1にまで圧縮した液体にした上で、液化天然ガス(LNG)としてLNGタンカーで輸送されます。

2015年度のLNGの主な輸入国はオーストラリア(27.7%)、マレーシア(18.3%)、ロシア(9.1%)など、アジア大洋州その他の地域が77.2%、カタールやオーマンといった中東諸国への依存度は22.8%にとどまります。国内での消費量増加によって、輸入量はこの20年間で約2倍に倍増しており、2015年度の総輸入量は8,475万トンでした。うち、都市ガス用として使用されたのは31.7%です。残りは発電用(64.1%)、その他(4.1%)などに使用されています。

液化天然ガス(LNG)がLNGタンカーによって港にまで到着すると、ローディングアームがタンクに接続され、タンカー内の液化天然ガス(LNG)は配管を通って受入基地のLNGタンクに移されます。LNGタンク内では-162℃が保たれ、天然ガス(LNG)は液体のまま保存されることになります。

都市ガスの主な原料 都市ガスの主な原料は天然ガスで液化天然ガス(LNG)としてLNGタンカーで輸送される。

ガスの製造

輸入されたLNGは一次受入基地に受け入れられた後、気化器で気化され、都市ガス用として熱量調整・付臭が行われます。熱量調整とは、LNGを他のガス体エネルギーと混合する過程を指します。2017年度の都市ガスの原料構成比は、LNG(88.4%)、国産天然ガス(8.9%)、LPG他(3%)となっています。付臭とは、ガス漏れ時などに分かるよう本来は無臭のガスに匂いを付ける作業です。

なお、LNG基地から遠い需要地には、タンクローリーや内航船、鉄道貨車で輸送し、現地のサテライト基地で気化・供給される場合もあります。

ガスの輸送・供給

ガス製造所にて熱量調整・付臭が施され、高圧で送り出された都市ガスは、変圧器(ガバナ)で中圧に減圧され、大規模工場・施設に届けられます。途中、需要の多い時間帯にガスを送り出す調整機能を担うガスホルダーに貯蔵される場合もあります。一般家庭などへは、さらに減圧された低圧ガスが、低圧導管を通じて輸送されます。

ガスの導管事業は、許可された207社のガス会社が地域独占権をもってガス導管事業を行っています。207社もある都市ガス会社ですが実際にはガス導管の5割が大手都市ガス会社3社:東京ガス大阪ガス東邦ガスによって保有されています。

導管延長 割合 都市ガス会社
13万km 52% 東京ガス大阪ガス東邦ガス(3社)
3万km 12% 北海道ガス、仙台市ガス、静岡ガス、広島ガス、西部ガス、日本ガス(6社)
7万km 28% ガス管で卸受け(117社)
1.6万km 7% タンクローリー(81社)
0.3万km 1% 電力会社など都市ガス以外
25万km 100% 合計

ガス導管事業 5割が大手都市ガス会社3社:東京ガス大阪ガス東邦ガスによって保有

ガスの需給構造

ガス事業者と需要家

日本のガス市場は、液化天然ガス(LNG)を主原料とする都市ガス(一般ガス)事業と、石油系ガスを原料とするLPガス事業が、それぞれ約6.5対3.5の割合で国内の需要家に供給している構造になっています。それぞれのガス事業分類別の事業者数、販売量、需要家数は以下の様なものです。

ガス事業の分類
事業区分 一般ガス事業 簡易ガス事業 LPガス販売事業
事業者数 209事業者
(うち公営29事業者)
1,452事業者
(うち公営8事業者)
21,052事業者
需要家件数 約2,923万件 約140万件 約2400万件
ガス販売量 約363億㎥/年 約1.7億㎥/年 約80億㎥/年

一般消費者はガス導管が整備されている地区に住んでいる場合は都市ガス事業者から、そうでない場合はLPガス販売事業者から、ガス供給を受けることになります。都市ガスとLPガスとではあてがわれる法律から、主原料と、流通・供給方法、料金体系まで、あらゆる点で異なります。なお、簡易ガス事業者が供給するガスは都市ガスではなくLPガスですが、70戸以上の世帯などに導管を通して供給されるため、LPガス事業のように液石法ではなく、ガス事業法によって管理されています。

需要家の割合的には都市ガスの利用者の方がLPガス利用者よりも若干多く、なかでも都市ガス大手とされる東京ガス大阪ガス東邦ガス西部ガスは、4社のみで都市ガス需要の73.2%(2014年度)をカバーしています。

ガス消費量と用途

エネルギー需要全体において天然ガス・都市ガスが占める割合は10%、LPガスは4%程度です。どちらのガスの用途も工業用が4割強、業務用が2割弱で、残りが家庭用ですが、LPガスの方が若干家庭用需要が高いのが特徴です。

天然ガスは優れた環境性などにより工業用を中心に使用量が増加しています。2004年から2014年の10年間で販売量は30,138百万㎥から37,099百万㎥と1.2倍に増えています。増加分のほとんどは工業用目的のもので、2004年の13,285百万㎥から2014年には20,254㎥と、1.5倍強の伸びを見せています。

反対に、需要家数は家庭用需要が牽引しています。2004年には27,444千件であった需要家は2014年には29,731千件に増えましたが、その増加分(3,930千件)の大半(2,288千件)は家庭用の増加によるものです。

料金体系

都市ガス料金は基本料金と従量料金から構成されています。基本料金は契約プランごとに異なり、月々のガス使用量によって変動しますが、従量料金はガス使用量にガス1㎥あたりの単位料金を掛けて計算されるので、ガス使用量によって変動します。

都市ガス料金の計算方法 ガス料金=基本料金+従量料金(ガス1㎥あたりの単位料金 × ガス使用量)

自由化前のガス料金は、当局の認可を受ける必要がありました。また、原価主義の原則、公平の原則、公正報酬の原則の3原則に基づき、供給原価に基づいて料金が決められる総括原価方式がとられており、原料費調整制度によって単位料金が決定されておりました。

ガスの自由化後は小売事業者によって異なる料金プランが出せるようになり、利用スタイルに合わせた料金プランや電気とのセット割などサービスのバリエーションが飛躍的に拡大しました。

ガス自由化プロセス

電力の小売全面自由化に遅れること1年、2017年4月から都市ガスの小売も全面自由化され、施行から1年で切り替え数は100万件を突破しましたガスの自由化自体は電力に先駆けて段階的に導入されており、自由化になったことで今後も電力と合わせて切り替えが進んでいくことが予想されます。

小売自由化

ガスの小売自由化は電力に先んじること5年、1995年からすでに始まっています。電力と同じように大口需要家から段階的に自由化枠を拡大してきました。2018年9月末時点でガスの切り替え申し込み(スイッチング)が全国で約141万件になりました。スイッチング率は全国で7.2%となり今後も増加が予想されます。

都市ガス自由化の段階表
2017年4月より一般家庭や商店にまで自由化枠が広がり自由化率は100%になった。

託送供給制度

託送供給とは、ガスを供給する事業者(託送供給依頼者)のガスを、一般ガス事業者あるいはガス導管事業者の導管で受け入れて、同時に受け入れた場所以外の地点で受け入れた量と同量のガスを、同じく一般ガス事業者あるいは導管事業者の導管から供給するサービスで、電力の供給サイクルで言えば送配電部分にあたるものです。

電力市場における発送電分離と同じように、ガス自由化を進めるには、新規事業者が参入しやすくなるよう、託送供給制度を独立させ、適切な託送料金を設定する必要があります。このため、ガス制度改革では、以下のような託送供給制度を自由化に適合させるための措置を段階的に講じてきました

第2次制度改革(1999年) 託送供給制度の法定化
→ 導管の大半を保持する大手都市ガス4社に対して、託送供給約款の作成を義務付け。
第3次制度改革(2003年) ガス導管事業の創設
→ ガス導管事業に公益特権を付与して、幹線的なガス導管事業に対する投資を促進。
第3次制度改革(2003年) 託送供給制度の充実・強化
→ 託送義務をすべての一般ガス事業者およびガス導管事業者に拡大して、託送供給部門の公平性・透明性を確保。
第4次制度改革(2006年) 一般ガス事業供給約款料金算定規則の改正
→ 託送供給部門の原価に「低圧導管原価」を追加。
第4次制度改革(2006年) 託送供給約款料金算定規則の改正
→ 低圧導管と中圧導管を区分した料金設定するとともに、減価償却費計算における使用実績に応じた償却費を算出。

2015年に成立した第5次制度改革では、託送供給制度のさらなる独立・中立性を確立するべく、ガス導管網の整備(導管事業への地域独占と料金規制の措置、事業者間の導管接続の協議に関する命令・裁定制度)や、法的分離による導管事業の中立性確保(兼業規制による法的分離の実施、適正な競争関係を確保するための行為規制の措置)を行っていく予定です。

保安および需要家の保護策

ガス制度改革ではこのほか、自由化によって保安が脅かされたり、料金が急激に上がったり、需要家へのサービスが劣化したりすることのないよう、幾つかの策を講じています。

料金については1995年の第1次制度改革時から原料費調整制度を導入。また、1999年の第2次制度改革では、料金規制の見直しを行い、規制部門の料金引下げを認可制から届出制に変更しました。2015年に成立した第5次制度改革では、小売全面自由化から一定期間を経過措置として競争の進展状況を確認するなどして小売料金をコントロールするとともに、一般ガス導管事業者による最終保障サービスの提供や、ガス小売事業者に対する供給力確保、契約条件の説明を義務づけたりする項目も盛り込んでいます。

ガスにかかわる税金の種類

ガスにかかわる税金
どんな税金がガスに関わっているのでしょうか?

わたしたちがガスを購入しているガス事業者は、すべての事業者に課されている一般税(事業税や固定資産税、法人税など)に加え、ガスの輸入から流通までに課せられているガス特有の税金を納めています。

石油石炭税

石油石炭税は、安定的なエネルギー供給や省エネ推進を目的として1978年に導入された税制度です。

導入当初は石油税法と呼ばれ、課税対象は原油および輸入石油製品、LPガス液化天然ガス(LNG)といったガス状炭化水素でした。

その後、2003年の税制改正によって石油石炭税へ名称を変更し、課税対象に石炭が加わるとともに、LPガスLNGに対する税率が引き上げられました。

石油石炭税の税率
原油・輸入石油製品 1klにつき 2003年10月1日~
2012年10月1日~
2014年4月1日~
2016年4月1日~
2,040円
2,290円(本則+250円)
2,540円(本則+500円)
2,800円(本則+760円)
天然ガス 1トンにつき 2003年10月1日~
2005年4月1日~
2007年4月1日~
2012年10月1日~
2014年4月1日~
2016年4月1日~
840円
960円
1,080円
1,340円(本則+260円)
1,600円(本則+520円)
1,860円(本則+780円)
天然ガス以外 1トンにつき 2003年10月1日~
2005年4月1日~
2007年4月1日~
2012年10月1日~
2014年4月1日~
2016年4月1日~
800円
940円
1,080円
1,340円(本則+260円)
1,600円(本則+520円)
1,860円(本則+780円)
石炭 1トンにつき 2003年10月1日~
2005年4月1日~
2007年4月1日~
2012年10月1日~
2014年4月1日~
2016年4月1日~
230円
460円
700円
920円(本則+220円)
1,140円(本則+440円)
1,370円(本則+670円)

地球温暖化対策のための税

地球温暖化対策のための税は、地球温暖化対策(CO2排出抑制対策)を強化するために、石油・天然ガス・石炭といったすべての化石燃料の利用に対して、環境負荷(CO2排出量)に応じて広く公平に負担を求める制度です。

消費者の負担が急激に増加するのを避けるために、地球温暖化対策のための税は3段階で税率を引き上げていく計画で、2012年10月開始、2014年4月に引き上げが行われ、2016年4月に最終引き上げが完了しました。

地球温暖化対策のための税は、全化石燃料を課税ベースとする現行の石油石炭税の徴税スキームを活用して、租税特別措置法に設けられた「地球温暖化対策のための課税の特例」として、石油石炭税に税率を上乗せする形で課税されており、その税収は2012年度に391億円、税率引き上げが完了する2016年度以降には2,623億円まで上ります。

環境省では、この税収を活用して、省エネルギー対策、再生可能エネルギー普及、化石燃料のクリーン化・効率化などのCO2排出抑制の諸施策を実施していくとしており、具体例として下記のような取り組みを挙げています。

  • 地球温暖化対策のための税、その使い道
  • リチウムイオン電池などの革新的な低炭素技術集約産業の国内立地の推進
  • 中小企業等による省エネ設備導入の推進
  • 地方の特性に合わせた再生可能エネルギー導入の推進 など

ガス料金の消費税と計算方法

わたしたちがガス事業者へ支払っているガス料金は、

  1. 基本料金(契約プランごとに異なり、月々のガス使用量によって変動)
  2. 従量料金(ガス1m3あたりの単位料金 × ガス使用量)

を合算したものです。 このガス料金の内、基本料金と単位料金に消費税等相当額が含まれており、下記のように算定されています。

ガス料金に含まれる消費税等相当額の計算方法 ガス料金に含まれる消費税等相当額 = 料金 × 消費税率 ÷(1 + 消費税率)
(※1円未満端数切り捨て)

更新日