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何が発表されたのか|トヨタが2028年に「レベル2++」

結論を先に|押さえる3点
  1. レベル2++は法律上はレベル2のままで、運転しているのは引き続きドライバー
  2. そのため対人・対物賠償を含む任意保険の必要性も、責任の主体も変わらない
  3. パートナー先のティアフォー(593A)は翌28日にストップ高。ただし説明会で同社名が挙がったわけではない

トヨタ自動車は2026年8月27日の説明会で、2028年よりレベル2++の自動運転機能を導入することを明らかにしたと報じられています。市街地などで手放し運転ができる水準で、2030年以降に搭載車種を広げることも伝えられています。

*2026年8月27日の説明会で示された内容

項目 内容
導入時期 2028年をめどに市販車へ導入し、2030年以降に搭載車種を拡大
技術の考え方 カメラなどの入力から運転操作までをAIが一気に判断する方式を自社開発。事故の6割を占めるとされるクルマ側の要因に対応する
安全の担保 あらかじめ定めたルールでAIの動きを監視し、想定外の挙動があれば割り込んで止める仕組みを併用。事故時に原因を説明するためにも重要と位置づけ
商用車 商用シャトルは2030年までに完全自律の技術開発を進め、レベル4を目指す
ロボタクシー Waymo(米国の自動運転タクシー会社)との事業参入も検討

この報道を受けて、翌8月28日にはティアフォー(593A)の株価がストップ高となり、前営業日比400円高の1,999円まで買われたと伝えられています。ティアフォーは2015年12月設立の名古屋大学発スタートアップで、オープンソースの自動運転ソフトウェア「Autoware」を開発し、収益の柱である自動車メーカー向けの量産化開発ではトヨタ・いすゞ・スズキをパートナー先としてきました。

上場したのは7月22日です。公募価格1,085円に対して初値はこれを約7%下回る「公募割れ」で、成長テーマへの期待と赤字が続く業績のどちらを取るかで評価が割れていました。そこから1か月あまりで、公募価格の約1.8倍にあたる1,999円まで買われたことになります。

ただし、8月27日の説明会でティアフォーの名前が挙がったわけではありません。説明会を報じたCar WatchにもITmedia/共同通信にも同社への言及はなく、株探は27日の各紙の報道が「株価の刺激材料となっているようだ」と伝えています。トヨタとの直接の協業として公表されているのは、2026年1月に発表されたe-Paletteでのレベル4自動運転で、こちらは商用車の領域です。

自動運転を支えるセンサーと半導体の増加は、保険料も押し上げています。

*出典:Car Watch(2026年8月27日)ITmedia NEWS/共同通信(2026年8月27日)株探(2026年8月28日)

「レベル2++」とは何か|レベル3とは制度上まったく違う

レベル2++(レベル2プラスプラス)とは?

法令や国際規格で定められた区分ではありません。市街地なども走れるほど支援範囲が広いレベル2を各社がそう呼んでいるもので、制度上の位置づけはあくまでレベル2です。

自動運転のレベルは、国土交通省が「自動運転車の安全技術ガイドライン」で次のように定義しています。

国土交通省「自動運転車の安全技術ガイドライン」の自動運転化レベルの定義の概要。安全運転に係る監視、対応主体はレベル0から2が運転者、レベル3がシステム(作動継続が困難な場合は運転者)、レベル4と5がシステム
自動運転化レベルの定義の概要(国土交通省「自動運転車の安全技術ガイドライン」平成30年9月/画像をクリックすると出典のPDFが開きます)

この表に「レベル2++」という行はありません。レベル2++は制度上このレベル2に含まれ、安全運転に係る監視・対応主体は運転者のままです。支援範囲が市街地まで広がっても、この欄は動きません。

道路交通法では、レベル2++の作動中も「運転」にあたる

道路交通法が第2条第1項第17号の「運転」から除いているのは、特定自動運行(レベル4)を行う場合だけです。レベル3の装置を使っている間ですら法律上は「運転」で、レベル2++はその手前にあたります。運転席の人には、次の義務がそのままかかります。

車両等の運転者は、当該車両等のハンドル、ブレーキその他の装置を確実に操作し、かつ、道路、交通及び当該車両等の状況に応じ、他人に危害を及ぼさないような速度と方法で運転しなければならない。

条文の作りから読める差もあります。道路交通法は第71条の4の2で、携帯電話等の使用を禁じる規定を適用しない特例を置いていますが、対象は「自動運行装置を備えている自動車の運転者」に限られます。レベル2++の車はこれに当たらないため特例が及ばず、走行中のスマートフォン操作は今までどおり違反のままです。手放しにできるかどうかと、前を見なくてよいかどうかは、法律上まったく別の話になります。

トヨタ自身も「運転者の責任において使用してください」と書いている

これは法律の側だけの整理ではありません。トヨタが自社の車種ページに載せている、現行の高度運転支援技術の注意書きです。

アドバンスト ドライブ(渋滞時支援)が正常に作動していたとしても、運転者が認識している周囲の状況とシステムが検知している状況が異なる場合があります。従って注意義務・危険性の判断・安全の確保は運転者が行う必要があります。

同じページには「自動で運転するシステムではありません」とも書かれています。システムが正常でも、安全の確保は運転者が行う——これがメーカー自身の説明です。レベル2++についても、Car Watchは「最終的な運転責任はドライバーにある」と説明しています。

*出典:e-Gov法令検索「道路交通法」第2条・第70条・第71条の4の2国土交通省「自動運転車の安全技術ガイドライン」(平成30年9月)トヨタ自動車 MIRAI 安全性能

ここまでの流れ

*トヨタの自動運転をめぐる主な動き

時期 出来事
2021年4月 「Advanced Drive」搭載のLS・MIRAIを発売。高速道路の本線上で手放し運転を実現
2025年4月 Waymoと戦略的パートナーシップの枠組みに基本合意。市販車両向けの技術の一部を導入していく予定と発表
2025年9月 「e-Palette」を発売。2027年度にレベル4準拠のシステム搭載車の市場導入を目指すと明記
2026年1月 e-Paletteの事業説明会で、ティアフォーとレベル4自動運転に取り組むことを発表
2026年7月 NVIDIAが提携拡大を発表し、レベル2++機能に同社の車載半導体とOSが採用されると判明。同月22日にティアフォーが上場
2026年8月 説明会で2028年からのレベル2++導入を説明

*出典:トヨタ自動車(2021年4月8日)同(2025年4月30日)同(2025年9月15日)Car Watch(2026年7月16日)

自動車保険と自動運転の論点

論点1|責任の主体は変わらない

自動運転になっても、事故の賠償責任がすぐにメーカーへ移るわけではありません。

自賠法第3条では、車を「運行の用に供する者」が損害賠償責任を負うと定めています。国土交通省の研究会報告書(平成30年3月)も、これを「事実上の無過失責任」と整理しています。

自動運転への移行期も、基本的には運行供用者の責任を維持し、保険会社などがメーカー等に求償することで負担を配分する考え方です。

つまり、事故の原因が自動運転システムにあっても、まずは運行供用者と保険が賠償を担います。「自動運転ならメーカーが払うから、自分の保険は不要」ということにはなりません。

また、自動運転中の自損事故は自賠責保険の対象外で、任意保険の人身傷害保険などで対応することが適当とされています。

論点2|保険料は下がる方向とは限らない

自動運転が普及すれば事故が減り、保険料も下がるとは限りません。

損害保険料率算出機構は2026年6月23日、参考純率を平均14.4%引き上げる届出を行いました。AEBなどの普及で事故率は緩やかに低下する一方、対物賠償や車両保険では1件あたりの支払保険金が上昇しているためです。

むしろ、自動運転に必要なカメラ、LiDAR、レーダーなどの高額なセンサー類は、事故時の修理費を押し上げる要因になります。

自動運転で事故件数が減っても、1件あたりの修理・賠償コストが上がれば、保険料が下がるとは限りません

*出典:e-Gov法令検索「自動車損害賠償保障法」第3条国土交通省 研究会報告書(概要)損害保険料率算出機構(2026年6月23日)

まとめ|2028年を待たずに確認しておきたいこと

  • 車両保険の保険金額と免責金額を見直す。センサー搭載車は修理費が上がっているため、免責金額の設定が実際の負担額を左右する
  • 人身傷害保険の設定を見ておく。運転支援を使っていて単独事故を起こした場合、自分と同乗者のけがを補償するのはここ

2028年に来るのは「もう運転しなくてよくなる」段階の手前です。運転しているのは引き続き自分であり、備えるべきものも変わりません。参考純率の上げ幅は会社ごとに違います。

よくある質問(FAQ)

いいえ。道路交通法第71条の4の2が置く携帯電話等の使用の特例は、対象が「自動運行装置を備えている自動車の運転者」に限られます。自動運行装置はレベル3以上を指すため、レベル2++には特例が及ばず、走行中のスマートフォン操作は違反のままです。

運転していたドライバーと、その車の運行供用者(多くは所有者)です。道路交通法が「運転」から除くのは特定自動運行(レベル4)だけなので、レベル2++の作動中も法律上は運転で、第70条の安全運転の義務がかかります。賠償は自賠法第3条の運行供用者責任が入口で、システム側に原因があっても、まず運行供用者と保険会社が引き受けます。

現時点でレベル2++を対象にした割引は各社とも公表していません。近いものはASV割引(自動ブレーキ割引)で、おとなの自動車保険では型式の発売年月から3年間、参考純率部分から9%という設計です。3年を過ぎると効果は型式別料率クラスに反映され、装備そのものへの割引は続きません。

出典

本記事の情報は2026年8月28日時点のものです。2026年8月27日のトヨタ自動車の説明会の内容は、同社が公表したニュースリリースではなく報道機関の記事にもとづいて記載しています。導入時期・機能・対象車種は今後変更される可能性があるため、最新情報は各社の公式サイトでご確認ください。補償内容・特約の適用条件は保険会社・始期日・契約条件によって異なるため、実際の取り扱いは必ず約款および重要事項説明書をご確認ください。参考純率の引き上げは各保険会社の保険料に自動的に反映されるものではなく、金融庁の審査を経て各社が判断します。本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の有価証券の取得や投資を勧誘するものではありません。