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キオクシア株価暴落とアドバンテスト決算好調―揺れる半導体市場と自動車保険料が上がるわけ

間瀬 明子 間瀬 明子 更新日:
「事故は減っているのに、自動車保険料は上がる」──2026年6月、保険料の目安となる参考純率が過去最大の平均14.4%引き上げとなりました。なぜ事故が減って値上げなのか。その答えをたどると、いま株式市場を揺らしている半導体に行き着きます。キオクシアの株価は1カ月で7割近く下落し、逆にアドバンテストは7月29日の決算で最高益の上方修正──。この2つのニュースを入口に、あなたの保険料が上がる仕組みを解説します。

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何が起きたのか|半導体株のこの1カ月

結論を先に|保険料が上がる仕組み
  1. 自動ブレーキなどの普及で事故そのものは減っている(2025年の死者数は過去最少)
  2. しかしカメラ・レーダーを積んだ車は、かすっただけでも部品交換と調整作業で修理費が高くつく
  3. 事故が減っても1件あたりの支払いが増えるため、保険料の目安は過去最大の引き上げになった

この「車に積まれる半導体」の主役が、いま株式市場を揺らしているキオクシアやアドバンテストです。まずは相場で何が起きたのかを押さえます。

*キオクシア株急落とアドバンテスト決算までの流れ

日付 主な出来事
6月22日 キオクシア株が上場来高値11万2,700円をつける
6月25日 日経平均が史上最高値7万2,366円をつける
7月16日
(米国時間)
米国の陪審が、キオクシアに約2億2,900万ドル(約371億円)の特許賠償評決
7月17日 キオクシアがストップ安。前日比1万円(16.1%)安の5万2,110円
7月27日 中国のメモリ大手・長鑫科技(CXMT)が上海の科創板に上場。米サンディスクが一時14%超安
7月28日 日経平均が2,566円安。キオクシアはストップ安(4万4,550円)、アドバンテストも約10%安
7月29日 キオクシアが4万円割れ(終値3万8,380円)。アドバンテストは取引終了後に決算発表、通期を上方修正
7月31日 キオクシアの決算発表(予定)

*出典:日本経済新聞「キオクシア株、1カ月で7割弱下落 半導体スーパーサイクル論が後退」日本経済新聞「日経平均終値2566円安、韓国発AI株安再び キオクシアがストップ安」日本経済新聞「日経平均一時1800円安、SK好決算「力不足」 AI過剰投資の懸念続く」

そもそもこの2社は何をしている会社?

キオクシアは、データを保存する半導体「NAND型フラッシュメモリ」の世界的メーカー(旧・東芝メモリ)。アドバンテストは、半導体が正常に動くかを出荷前に検査する「テスト装置」のメーカーです。前者は製品を売る会社、後者は製造ラインに装置を売る会社という違いがあります。

キオクシアの株価はなぜ暴落したのか

2026年に入って株価が数倍に膨らんだ「AI相場の主役」だった分、反動も大きくなりました。売りが集中した理由は3つです。

① 中国メーカーの台頭

7月27日、中国のメモリ大手長鑫科技(CXMT)が上海の科創板に上場し、初値は公開価格を約470%上回る水準まで急騰しました。DRAMで世界4位とされる企業です。メモリは最終的に価格競争になりやすいため、国の支援を受けた中国勢の本格参入への警戒が一気に強まりました。同日、米国の同業サンディスクも急落し、その流れが翌28日の東京市場に波及しています。

*出典:上海証券報「十年磨芯 长鑫科技今日登陆科创板」(2026年7月27日)日本経済新聞「キオクシア株価一時5万円割れ、18%下落 米同業の急落が波及」

② 米国での特許賠償評決

7月16日(米国時間)、米テキサス州西部地区連邦地裁の陪審が、キオクシアが米ビアサットのフラッシュメモリ特許を侵害したと判断し、賠償額を約2億2,900万ドル(約371億円)とする評決を出しました。翌17日の東京市場でキオクシア株はストップ安(前日比1万円・16.1%安の5万2,110円)となりました。なおキオクシアは「到底容認できるものではない」として、控訴を含むあらゆる法的手段を講じる構えを示しています。

*出典:日本経済新聞「キオクシアHDに米地裁が賠償命令 特許侵害で371億円」日本経済新聞「キオクシアの株価ストップ安 最高値の半値、時価総額30兆円失う」

③ AI相場そのものの調整

個別の悪材料以上に大きいのが、地合いの変化です。7月28日には韓国発のAI株安が波及して日経平均が2,566円安(3.95%安)となり、翌29日もSKハイニックスの好決算が「力不足」と受け止められて続落しました。AIインフラへの過剰投資への懸念が広がり、最も上昇していた銘柄から売られた形です。

*出典:日本経済新聞「日経平均終値2566円安、韓国発AI株安再び キオクシアがストップ安」日本経済新聞「日経平均一時1800円安、SK好決算「力不足」 AI過剰投資の懸念続く」

結果、6月22日に11万2,700円だった株価は7月29日終値で3万8,380円1カ月ほどで7割近く下落しました。

*出典:日本経済新聞「キオクシア株、1カ月で7割弱下落 半導体スーパーサイクル論が後退」

アドバンテストの決算はなぜ「最高益」なのか

一方アドバンテストは7月29日の取引終了後、2027年3月期第1四半期(4〜6月)の決算を発表し、通期見通しを大幅に上方修正しました。AI向け半導体の生産が増え続け、検査装置の需要が旺盛だからです。

*アドバンテスト 2027年3月期 第1四半期の実績

項目 実績 前年同期比
売上収益 3,675億円 +39.3%
営業利益 1,900億円 +53.3%
四半期利益(親会社帰属) 1,748億円 +93.8%
売上営業利益率 51.7% 47.0%から上昇

*2027年3月期 通期連結業績予想の修正

項目 従来予想 新予想 前期比
売上収益 1兆4,200億円 1兆7,140億円 +51.9%
営業利益 6,275億円 8,460億円 +69.5%
当期利益 4,655億円 6,600億円 +75.8%

最終利益は従来予想から約42%の上乗せです。ただし決算前日の7月28日、同社の株価は約10%下落していました。中国勢の装置参入報道で米国の半導体製造装置株が売られた流れです。数字が良くても、株価は「この好況がいつまで続くのか」を見ている——今の相場を象徴する動きでした。

*出典:株式会社アドバンテスト「2027年3月期 第1四半期決算短信〔IFRS〕(連結)」(2026年7月29日)株探「アドバンテスト【6857】、今期最終を42%上方修正・最高益予想を上乗せ」株探「アドテスト、東エレクなど半導体製造装置関連が安い、決算発表を目前に売り止まらず」

なぜ真逆の動きになるのか

今回のポイント
  • キオクシアが売られたのは、メモリという「モノの値段」が中国勢の参入で崩れるかもしれないから
  • アドバンテストが最高益なのは、半導体が「作られる量と複雑さ」そのものが増え続けているから

メモリは価格競争に巻き込まれると利益が一気に減りますが、テスト装置は半導体が複雑になるほど検査工程が増え、「どれだけ作られるか」に業績が連動します。同じ半導体でも、立つ場所によって明暗が真逆になる——今回の相場はその典型でした。

半導体と自動運転の深い関係

ここまでは株式市場の話ですが、キオクシアとアドバンテスト、そして同じ7月29日に決算を発表した韓国のSKハイニックスを加えた3社は、実は自動運転車のなかでも必要とされる企業です。自動運転車はセンサーの映像を大量に処理し記録し続けるため、しばしば「走るデータセンター」と呼ばれます。

*3社が車のなかで担う役割

企業 本業 車のなかでの役割
キオクシア NAND型フラッシュメモリ(保存する半導体) 車載ストレージ。カメラやセンサーの記録、高精細地図、ソフトウェア更新データの保存先
SKハイニックス DRAM・HBM(計算用の高速メモリ) 自動運転の「頭脳」がリアルタイムに判断するための高速メモリ
アドバンテスト 半導体のテスト装置 出荷前の検査。車載品はマイナス40度から105度といった過酷な条件で動くことを確認する必要がある

実際、車載向け半導体の市場は2024年の680億ドルから2030年には1,320億ドルへ、ほぼ倍増すると予測されています。自動車販売そのものの成長より5倍速いペースです。つまり、車は「1台あたりに積む半導体の量と金額」が増え続けていくということです。

*出典:Yole Group「Semiconductors at the heart of automotive's next chapter」キオクシア「High-speed UFS 4.0 automotive storage」SK hynix Newsroom「SK hynix LPDDR5X Earns ASIL-D, Top Automotive Safety Rating」

ここが本題|半導体が増えると「修理費」が上がり、保険料も上がる

「AI相場」や「決算」は遠い話に見えるかもしれません。しかし、車に積まれる半導体が増えるという流れは、私たちの自動車保険料に直接はね返ってきます。しかもそれは、すでに数字として表れています。

過去最大の値上げ|参考純率が平均14.4%引き上げ

2026年6月23日、損害保険料率算出機構は自動車保険の参考純率を平均14.4%引き上げる変更を金融庁に届け出ました。参考純率とは、各保険会社が保険料を決めるときの「目安」となる数値です。前回2024年6月の引き上げ幅(+5.7%)を大きく上回り、過去最大の引き上げとなります。

注目すべきは、その理由です。事故が増えたからではありません。実際、警察庁の統計では交通事故は減り続けています。

*2025年(令和7年)の交通事故統計

項目 2025年 前年比
交通事故発生件数 287,236件 減少(1960年以降で最少)
死者数 2,547人 −116人(−4.4%)/1948年以降で最少
負傷者数 338,294人 減少
重傷者数 27,563人 +278人(+1.0%)

死者数は1948年以降で最少、発生件数も過去最少の水準です(重傷者数だけは前年比1.0%の微増)。それでも保険料の目安が過去最大で引き上げられたのは、自動車の高性能化によって部品が高額化し、1件あたりの支払保険金が増えているからです。とくに対物賠償保険と車両保険での1件あたりの支払いが上昇しており、物価や工賃単価の上昇も重なっています。

*出典:警察庁「令和7年における交通事故の発生状況等について」(死者数・重傷者数)警察庁「令和7年中の交通事故死者数について」(2026年1月6日)nippon.com「2025年中の交通事故死者数は過去最少の2547人、前年比116人減―警察庁」(発生件数・負傷者数)

*出典:損害保険料率算出機構「2026年6月23日 金融庁長官への届出 自動車保険参考純率届出のご案内」日本自動車会議所「損保料率機構、自動車保険の参考純率14%引き上げ」

センサーだらけの車は「かすった」だけで高額修理になる

ここが半導体の話とつながります。自動ブレーキや車線維持支援を実現するために、いまの車はバンパーやフロントガラス周辺にカメラ・ミリ波レーダー・ソナーを埋め込んでいます。その結果、修理現場ではこんなことが起きています。

  • バンパーを軽くこすっただけでも、内側のセンサーやレーダーごと交換が必要になることがある
  • 部品を交換したあとにエーミング(センサーの照準調整)という専用作業が必要で、その分の工賃が上乗せされる
  • 複数の機能が一体になった部品が増え、「壊れた部分だけ直す」ができないケースが増えている
  • 作業が高度化するほど作業時間と人件費が増える

つまり、半導体とセンサーが増えた車は「事故を起こしにくいが、ぶつけると高い」という性質を持ちます。事故件数が減っても、1件あたりの修理費が上がれば、保険会社の支払総額は減りません。これが参考純率の引き上げに直結しています。

そして「型式別料率クラス」にはね返る

修理費の実績は、あなたの保険料にも個別にはね返ります。その仕組みが「型式別料率クラス」です。損害保険料率算出機構が車の型式ごとに事故や保険金支払いのデータからリスクを分類し、「対人賠償」「対物賠償」「人身傷害」「車両」の4補償ごとにクラスを設定します。普通・小型自動車は1〜17クラス(軽自動車は1〜7クラス)で、クラス1とクラス17では最大約4.3倍の保険料差が生じるとされています。

先進安全装備が載った新しい型式は、発売から3年間はASV割引(自動ブレーキ割引)で参考純率が一律約9%割引されます。しかし4年目以降は割引が終わり、その型式の実際の事故・修理費の実績が料率クラスに反映される仕組みに移行します。修理費が高い型式は、そこでクラスが上がる可能性があるということです。

値上げはこれから本格化します

損保各社は2026年1月にすでに6〜7.5%程度の値上げを実施していますが(東京海上日動は2025年10月に8.5%)、これは前回2024年の参考純率改定を反映したものです。今回の平均14.4%は、金融庁の審査を経て各社が判断するため、実際の保険料に反映されるのはこれからになります。さらに強制保険である自賠責保険も、2026年11月1日以降に始まる契約から全車種平均6.2%引き上げられ、自家用乗用車の24ヶ月契約は17,650円から18,560円(910円増)となります。

*出典:損害保険料率算出機構「自動車保険 型式別料率クラス」JAF交通安全トレーニング「自動車保険が2026年に大幅値上げ!保険料上昇の背景と今後の対策」インズウェブ「2026年11月より自賠責保険料が値上げへ」

自動運転が普及したら保険はどうなるのか

もう一段先の話をすると、自動運転が本格的に普及すれば、修理費だけでなく「誰が責任を負うのか」という保険の土台そのものが変わります。運転者の過失を前提にしてきた任意保険の設計が、システムや製造物の責任へと重心を移していくためです。この論点は、7月に東証グロースへ上場した自動運転企業ティアフォーの記事で詳しく整理しています。

いま乗っている車には、まだ直接関係しません

現在販売されている車のほとんどは運転席が無人になる自動運転レベル4に対応しておらず、通常の任意保険で備えるべきポイントは変わっていません。いま優先すべきは「責任の所在」ではなく、次に説明する修理費の上昇にどう備えるかです。

値上げ局面で保険料を抑えるためにできること

修理費の上昇は一時的な要因ではなく、構造的なものです。つまり、放っておくと保険料はじりじり上がり続けます。契約者側でできる現実的な対策は次の3つです。

  • 車名ではなく「型式」で保険料を確認する。同じ車種でも世代やグレードで型式が違えば料率クラスも変わるため、車検証に記載された型式で見積もりを取る
  • 車両保険の条件を見直す。修理費が上がっている今、車両保険はむしろ重要度が増しています。免責金額(自己負担額)や「車対車+限定A」などの範囲を調整すれば、補償を残しつつ保険料を抑えられる場合がある
  • 更新のタイミングで複数社を比較する。参考純率は共通の目安ですが、そこから先の料率や割引は各社の判断です。同じ条件でも保険料は会社によって差が出ます

とくに車両保険は「いらないのでは」と迷いやすい補償ですが、センサーだらけの車ほど修理費が高くなる時代には判断が変わります。考え方は以下の記事で整理しています。

まとめ

  • キオクシア株は6月22日の11万2,700円から7月29日の3万8,380円へ約7割下落。中国CXMTの上場、米国での特許賠償評決、AI相場全体の調整が重なった
  • アドバンテストは通期を上方修正し営業利益8,460億円の最高益見通し。メモリは「価格」、テスト装置は「量」で稼ぐ構造の違いが明暗を分けた
  • 半導体とセンサーが増えた車は事故を起こしにくい反面、ぶつけると修理費が高い。エーミングなどの作業も加わり工賃が増える
  • その結果、参考純率は2026年6月に平均14.4%と過去最大の引き上げ。事故は減っているのに保険料は上がる構造になっている

半導体株の暴落や決算は、一見すると投資家だけの話に見えます。しかし「車に積まれる半導体が増える」という同じ流れが、修理費を押し上げ、自動車保険料の値上げにつながっているのです。値上げが本格化するこれからの局面では、契約内容を一度見直しておく価値があります。

出典

本記事の株価・決算に関する数値は2026年7月29日時点で各報道・開示資料をもとに整理したものです。市場環境や事実関係は今後変更される可能性があるため、最新情報は各社の公式サイトでご確認ください。本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の有価証券の取得や投資を勧誘するものではありません。保険料や型式別料率クラスは型式・補償内容・保険会社によって異なるため、実際の保険料は必ず各社の見積もりでご確認ください。参考純率の引き上げが実際の保険料に反映される時期・幅は各保険会社の判断によります。

目次
間瀬 明子

間瀬 明子 金融・保険ライター

日本保険仲立人協会の登録を受けた元保険ブローカーで、日商簿記2級保持者。総合商社の保険代理店営業として3年勤務。大型プロジェクトのリスクコンサルティングを請け負い、年間120契約以上の金融・保険商品を提案・仲介してきました。比較が難しい保険商品を様々な角度から分析してわかりやすく解説していきます。株式会社イードが運営するお金の専門メディア『マネー達人』に寄稿もしています。

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